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2019/01/06

心地よい『ジャズ来たるべきもの』〜 オーネットはイージーだ

あのさ、コードとかモードとかの和声のことや楽理体系全般、突き詰めたら結局シロウトにはわからないわけよ。ってかぼくはそうなんだけど。すくなくとも聴いただけじゃあ、よっぽど特別なことになっていないかぎり、そんな大差ないと感じるけどさぁ、みんなどうなの?演奏家、理論家じゃないそこのみんな?小節数とかも、ふだん数えながら聴いたりします?

オーネット・コールマン1959年の『ザ・シェイプ・オヴ・ジャズ・トゥ・カム』だって、これが問題作だとか衝撃作だってとらえたのは、要は(当時の)演奏できるジャズ・ミュージシャンたち、専門家たちなんでしょ?さらに、もうずいぶん時間が経過した。いま、ぼくらシロウトが、聴いて、これのどこがそんなにとんがっていると感じることがあるのかなあ?むしろかなりおだやかな音楽じゃないかと聴こえるけどね。

しかも全曲なめらかな定常ビートがあるでしょ。聴きやすい。ぼくのばあい、ここが聴く際にイージーに感じるかどうかの最大の分かれ目で、ビートが定常的(であればポリリズムでもミックスでも変幻でも、また和声もアトーナルでもなんでも、かまわない)でなかったりするとむずかしいと感じることがある。テンポ・ルパートというのとはちょっと違うことなんだけど。

そんなことでオーネットの『ザ・シェイプ・オヴ・ジャズ・トゥ・カム』も、1959年当時の受け止められかたがどうだったかは文献資料などで読むしかないが、ぼくがジャズ・ファンになった1970年代末でも似たような衝撃問題作視する言説がちょっぴり残っていたように憶えている。それが現在ではほぼ消えてなくなっているように見えるのは喜ばしい。個人的実感とも一致する。

そう、オーネットの『ザ・シェイプ・オヴ・ジャズ・トゥ・カム』は聴きやすく心地いい。リラックスできる音楽で、だから日常の部屋のなかで BGM として流れてきてもぜんぜん違和感がない。っていうかね、ここで正直に告白するけれど、こんな気持ちを抱くようになった卑近なきっかけは、21世紀に入ってすこし経ったころかな、よくネット・ラジオの音楽チャンネルをかけっぱなしにしていることが多かったんだけど、その際のことだ。

昼間でも夜でも深夜でも、部屋でなにかをしているときにネット・ラジオで BGM として不意にふと流れくるオーネットの「ピース」や「コンジーニアリティ」。「ロンリー・ウーマン」が来ることもあったっけ。それで耳に入り、あっ、いい雰囲気だね、心地いいって、そう感じたんだよね。前後はジャズじゃないもののことが多かったはず。しゃべりはいっさいなしで音楽だけがどんどん来るチャンネルがいくつもあるよね。

ああいったネット・ラジオでの BGM 体験がなかったら、オーネットの『ザ・シェイプ・オヴ・ジャズ・トゥ・カム』に対し、いまだにやや身構えるような部分が残っていたかもしれないところ。つまり、要はあまりちゃんと聴いていなかったかも。中身の音楽がどんだけ心地いいか知らなかったわけだから、読む知識だけあって音をしっかり耳に入れていなかったんだなと指摘されても、おっしゃるとおりですと言うしかない。

ホント、でも「ピース」ヤ「コンジーニアリティ」は耳あたりがよく快感で心地よくスムースでなめらかな音楽だよね。っていうかアルバム全体がそうだ。それで、このことは長年抱き続けているオーネット像なんだけど世論と乖離が大きいので遠慮して言ってこなかったことをここで告白するが、オーネットの音楽はだいたいいつの時代のどんな作品も、やわらかくて違和感がなく、聴きやすくとっつきやすく、なめらかだ。フリー・ジャズだとの紋切り型セリフにつきまといがちな印象がない。

「ロンリー・ウーマン」のばあいは、中近東ふうなところがあるのも、いまのぼくにとってはポイント高し。まずチャーリー・ヘイデンの弾くベースのラインがアラブ音階を使っているかのようじゃないか。オーネットとドン・チェリーが(ズレた)ユニゾンで吹く二管テーマにもアラブ音楽っぽいなニュアンスがある。

さらにおもしろいのは、これ、ドラマーがビリー・ヒギンズでしょ。かのラテン・ジャズ、ボサ・ノーヴァ・ジャズ、ブーガルー・ジャズのビートを叩かせたら随一という人物だ。「ロンリー・ウーマン」でも、音階はアラブのそれを想起させるニュアンスを香らせながら、ヒギンズのビートには、特にスネアの使いかたに、やはりラテン(ブーガルー)要素があると聴こえるんだ。アラブ音楽とラテン・リズムの相性の良さは証明されているじゃない。ねっ、「ロンリー・ウーマン」、相当おもしろいよね。BGM 的に聴きやすいしさ。

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