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2019/02/24

けっこう多彩なスペンサー・ウィギンズの世界

スペンサー・ウィギンズの『フィード・ザ・フレイム:ザ・フェイム・アンド XL レコーディングズ』は、2010年の Kent / Ace 盤 CD アルバム。このサザン・ソウル歌手のポスト・ゴールドワックス・イヤーズ(1969年10月〜73年)集ともいうべき企画で誕生したものだ。これで、この歌手のシングル盤を蒐集しなくていいんだなとなって(ハナからやる気がないのだが)ありがたかったことこの上ない一枚。神様仏様ケント様だ。母国のアメリカ人はなにをやっている?

『フィード・ザ・フレイム』は、2010年のこの CD リリースまで未発表のままだった音源を多数含んでいるが、ゴールドワックスは自前のレコーディング・スタジオを持たなかったため、ゴールドワックス時代のスペンサーも、ときにはリック・ホールのフェイム・スタジオで録音することがあったそうだ。たぶんそんな縁で、ゴールドワックスがダメになったあとはフェイムでレコーディングしてシングル盤を出したりすることになったのだろう。

スペンサーのフェイムへの録音は1969年10月にはじまって1971年初頭まで。三回のセッションで計10曲を録音した。また XL レーベルはサウンズ・オヴ・メンフィスと同じ会社だ。このケント盤『フィード・ザ・フレイム』の全22曲で、フェイム・レーベルの録音が、未発表ものも含め、1、3、4、7、10、11、15、16、18、21曲目。ほかは、前述のとおり(スタジオはフェイムだが)ゴールドワックスの手になる音源が2、8、13、17、20、22曲目。残りが XL とサウンズ・オヴ・メンフィス録音。

個人的にフェイム時代のスペンサー・ウィギンズというと「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」に決まってしまうというなんとも抜きがたい刷り込み体験があるのだが、『フィード・ザ・フレイム』で聴いても、 一般的にスペンサー・ウィギンズはビートの効いたテンポのいいダンス用のジャンプ・ナンバーか、バラードっぽいミドル・テンポの三連ソウルが多いよね。数の問題だけでなく、実際、得意だったんだろうと思う。

たとえば幕開けの1「アイム・アット・ザ・ブレイキング・ポイント」、2「ウィ・ガッタ・メイク・アップ、ベイビー」、11「ウー・ビ、ウー・ビ・ドゥー」、13「レッツ・トーク・イット・オーヴァー」、14「アイ・キャント・ゲット・イナフ・オヴ・ユー、ベイビー」(ジャクスン5みたい)、17「ラヴ・アタック」(ジェイムズ・カー)なんかはアップ・ビートのダンサーだし、楽しくていいね。聴いてからだを動かせば気分ウキウキ。

三連の、いかにもなサザン・ソウル・ナンバーが5「ユア・マイ・カインド・オヴ・ウーマン」 、8「ラヴ・ワークス・ザット・ウェイ」、9「フィード・ザ・フレイム」(やはり傑作)、20「ウォーター」、22「クライ・トゥ・ミー」あたりかな。7「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」をここに入れていいかも。こういったものでスペンサー・ウィギンズが聴かせるディープな味わいも極上だ。さすがのゴスペルで鍛えた喉だとうならされる。

『フィード・ザ・フレイム』を通して聴いているとオッ!と思うのが、あんがいポップだったりするケースもわりとあるということだ。カントリー・ソングがあるのはサザン・ソウルの世界ではあたりまえだから言わなくていいけれど、ちょっとした軽妙な聴きやすさをまとっているばあいがある。フォーク・ロックっぽさすら感じる。

たとえば、4「ホールディング・オン・トゥ・ア・ダイイング・ラヴ」の出だしのアクースティック・ギターとフルートのからみもいいし、また、6「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」は『カフーツ』のころのザ・バンドみたい。 8「ラヴ・ワークス・ザット・ウェイ」もイントロがポップ(だけどすぐディープ・ソウルになる)、10「メイク・ミー・ユアーズ」なんかバート・バカラックがアレンジしたみたいなサウンドだ。

こうして見てみると、典型的な男性サザン・ソウル・シンガーみたいなスペンサー・ウィギンズでも、いや、そうだからこそと言うべきか、多彩な世界を展開していて、濃厚に煮詰めてディープに迫りまくるソウル・ナンバーばかりでもなかったんだなあとわかる。

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