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2019/02/02

ブルーズ・ロックなセロニアス・モンクもいいよ

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ハル・ウィルナー・プロデュースの1984年盤(あれっ?その数年前のような気がしていた)『ザッツ・ザ・ウェイ・アイ・フィール・ナウ 〜 ア・トリビュート・トゥ・セロニアス・モンク』。モンクの死後二年が経過していた。現在 CD リイシューされているものをぼくも持っているんだけど、オリジナルの二枚組アナログ・レコードと比較して、大きく曲目が削られているし、曲順もかなり変更なのが残念だ。だがまあしかしレコードで聴くんじゃないかぎりこれしかないわけだから、ど〜こ〜言ってもしょ〜がないと、あきらめのため息。

そんなわけで全16曲の現行 CD に沿って話を進める。このうち、ジャズ・オーケストラ(を模した大編成バンド)・ピースがおもしろくないのはやや意外だけど、1984年当時からぼくのなかで変わらない印象。すなわち、7曲目「モンクス・ムード」(シャロン・フリーマン)、11曲目「’ラウンド・ミッドナイト」(ジョー・ジャクスン)、15「ミステリオーソ」(カーラ・ブレイ&ジョニー・グリフィン)。9曲目のワズ(ナット・ワズ)だけはいい。

ジャズ・マンがやったストレートなジャズ・カヴァーでも、8曲目バリー・ハリスの「パノニカ」はかなりいいと思う。この好印象は、たぶんタック・ピアノを弾いているおかげだろう。かすかにチェンバロっぽいサウンドが香ったりもして、そんなバロックふうな典雅なムードが、かえってモンクの曲のユニークさをきわだたせる結果となっているように感じる。

またアルバムで演奏しているジャズ・メンといわず演奏家のうち最多参加のスティーヴ・レイシーはかなりいいよね。三曲あるのはどれも上出来だけど、ぼく的にはとくにチャーリー・ラウズとのサックス二重奏でやった「アスク・ミー・ナウ」と、ギル・エヴァンズの異様なフェンダー・ローズとのデュオ「ベムシャ・スウィング」が印象に残るところ。

がしかしそれでも、このセロニアス・モンク追悼アルバム『ザッツ・ザ・ウェイ・アイ・フィール・ナウ』でぼくの耳をことさら惹くのは、ロック・ミュージックやその周辺にいるとされている音楽家たちの解釈だ。このアルバムでは、曲のチョイスもたぶんそうかなと思うんだけど、アレンジは演奏した本人みずからがやっているとクレジットされている。それが、本当におもしろい。

たとえば、以前からこれはすごくいいぞと繰り返している3曲目「リフレクションズ」。スティーヴ・カーン(g)と ドナルド・フェイゲン(key) とのデュオ演奏で、主導権はたぶんフェイゲンが握っていたんじゃないかな。曲題どおり、内省的で、むかしを懐かしむ郷愁、ノスタルジーをふたりがこれ以上ないほど実にうまく表現している。それは、失われた青春時代の回顧なのかもしれない。
これに続く4曲目がドクター・ジョンのソロ・ピアノ演奏「ブルー・モンク」だというのもいい。この演奏はわりとストレート・ジャズに近い解釈だけど、それでも随所にニュー・オーリンズ・ピアノのあの独特のころがりかたが聴けて、笑みがこぼれてしまう。ユーモア感覚もあるし、それはもともとモンクが持ち合わせていたものだった。ドクター・ジョンもそれをディグしてくれたんだね。
6曲目、マーク・ビンガムの「ブリリアント・コーナーズ」も好きだけど話を戻し、アルバム・オープナーの「セロニアス」。ブルース・ファウラーらによるホーン・アンサンブルではじまり、途中からリズムも入る。ソロはいっさいなしで、たったの一分もない短尺だけど、なかなかおもしろい。続く2曲目「リトル・ルーティ・トーティ」をやる NRBQ アンド・ザ・ホール・ウィート・ホーンズは逆にソロまわしで聴かせる。ピアニストがモンクのスタイルで弾いているね。テーマ・アンサンブル部はエレキ・ギター中心。

10曲目「フォー・イン・ワン」は、さすがほぼすべてトッド・ラングレンひとりの密室スタジオ作業というだけある出来で楽しい。そして〜!なんたってこれだよ、これ!大学生のころ一回目に聴いてこれがいちばん好き!と快哉を叫び、いまだに聴くたびに気持ちいいっ!ってなるのが、13曲目「ワーク」。クリス・スペディングとピーター・フランプトンのエレキ・ギター二重奏。たまらない快感だ。たったいま気がついたけど、これ、エレベがマーカス・ミラーなんだね。
そ〜りゃもうこういったブルーズ・ベースのハード・ロック・ギターが好物中の大好物なぼくなんだから当然だよなあ。テーマ演奏部もソロ部も、エレキ・ギターの音色選択、フレジング、ピッキング・ニュアンスの微細な隅々のひとつひとつまで、たまらなく好きだ。なにもかもが、だ〜いすき。もっと長く、せめて五分は演奏してほしかった。このハード・ロックなセロニアス・モンクこそ、このアルバムでの個人的白眉。

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