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2019/03/09

フォーキーなチャブーカ版ボサ・ノーヴァ or フィーリンの誕生?

ペルーのチャブーカ・グランダ。ムシカ・クリオージャの音楽家として知名度があるので、無知なぼくでも知っている。彼女が書いて歌ったものはだいたいぜんぶバルス・ペルアーノだ。昨2018年にエル・スールで買った『未発表音源集』(Lo Nuevo de Chabuca Granda)は、お蔵入りしたままだった1968年の録音集とのことで、いままで聴いていたチャブーカの歌とは若干趣きが異なっているかも。

シンプルなギターとカホンだけの伴奏によるトリオ編成で、チャブーカはきわめてプライヴェイトな装いを見せ、ナチュラルにすーっと歌っている。なめらかっていうか、スムースで、それはあたかもキューバのフィーリンやブラジルのボサ・ノーヴァにも通じるような自然体。それが心地いいんだよね。創り込まれていないラフさっていうか、日常の歌って感じ。実にいい。

実際、『未発表録音集』で聴けるチャブーカの歌は、かなりラフな状況で演唱され録音されていたものなんだろうと想像できる。音響の空気感からも、スタジオかどこかでのライヴ一発録りに違いないと思え、そんな親近感や卑近性が、チャブーカの音楽の持つ優雅さと複雑さ(後者はアフロ系の微妙さか)の絡みをきわだたせることになっている。むきだしのチャブーカっていうか、生のソフトな肉体を感じられるところがいいんだよね。

だれが弾いているのか(クレジットもないから)わからないナイロン弦ギターのフレーズにはジャジーで洒落たタッチも聴きとれて、チャブーカのヴォーカルもリキみがなく、この時期のラテン歌手にしてはありえないほどフリーで自然体で、しかもフォーキー。それらすべての要素があいまって、この音楽をチャブーカ版のフィーリンとかボサ・ノーヴァみたいなものに響かせているよ。なかなかこんなムシカ・クリオージャ、聴いたことないよ。

チャブーカの『未発表録音集』、たしかに作品としての緻密な完成度という観点からは相当もの足りないんだけど、このちょっとしたアマチュア性というか、ラフな日常性(はラテンな音楽性からはやや遠いかもしれないし)が、簡単には生まれえない独特のおしゃれな陰影を歌にもたらして、得がたいライト・タッチなフィーリングを生んでいる。かなりいいと思うなあ。

仲間内だけの親密な集まりで、小さな狭い部屋のなかで、日常的なリラックスした楽しみのためにだけちょちょっと弾き歌う、そんなこじんまりしたパーティのための音楽としてバルス・ペルアーノを再構築したいとう実験的録音だったのかもしれないね。バルス・ペルアーノもまた、かしこまって聴くための音楽と日常的なダンス・ミュージック、この両面を、やはりポピュラー・ミュージックらしくあわせもっていたんだろうと、チャブーカのこの録音集を聴くと実感する。

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