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2019/03/19

トランプ時代のアメリカ音楽 〜 メイヴィスの『ライヴ・イン・ロンドン』

ロンドンのユニオン・チャペルで2018年7月に録音されたメイヴィス・ステイプルズの『ライヴ・イン・ロンドン』(2019)は、完璧にオールド・ファッションドな音楽だ。1曲目「ラヴ・アンド・トラスト」出だしのブルージーなエレキ・ギターを聴いただけで、まるで50年くらい時代をさかのぼったような気分になる。メイヴィスは80歳ほどなわけだし、ちょうどいちばん元気があったころのそんな音楽をいまに再現していると言えるかも。

元気があったころと書いたけれど、でも『ライヴ・イン・ロンドン』でのメイヴィスも相当元気だよ。そして、実際、いま2018〜19年も、ちょうど50年前くらいと似たような時代状況になってきているのじゃないだろうか。メイヴィスの音楽が、変わっていないのに老いず衰えず(と聴こえる)訴求力を放っているようなのは、きっとそのせいに違いないと思える。おそらくこの歌手はこのことに自覚的だ。だからこんなライヴ・アルバムをリリースしたのだろう。

とりあげているレパートリーも、トラックリストで曲名をざっと一瞥しただけで想像できそうな、まったくそのとおりの内容の歌が続いている。いま、2018/19年ごろに、アメリカ(だけでなく世界)で失われようとしているかのように見えるものを取り戻さんとでもいうべきメッセージというかアピールだよね。しかも、社会的、政治的であると同時にきわめてパーソナルな日常の現実にも密着している。

そんな内容を綴るメイヴィスの歌声に変わらぬ力強さがあって、失礼ながらとうていこの年齢の歌手とは思えぬ張りと艶を感じる。いま2019年にこの年齢の歌手のなかでは、世界で最もしっかり歌える存在じゃないだろうか。まぁあれだ、愛と信頼とか、あなたは決してひとりじゃないのよとか、そんな内容はちょっといまのぼくは信じられない気分もあるんだけど、メイヴィスにこうやって歌われると違ったフィーリングにもなってこようというもの。

しかも『ライヴ・イン・ロンドン』は伴奏がシンプルだ。ギター&ベース&ドラムスの三人だけでオーヴァー・ダブもなし。あと、バック・コーラスが二名いて、本当にたったこれだけ。この、いわばスカスカに空間のあいたサウンドが、かえって主役歌手のヴォーカルの存在感、ナマナマしさをきわだたせる結果となっているから大成功だ。飾り付けない音楽で、メイヴィスが歌い伝えたい内容がダイレクトに響いてくる。そんな気がする。

昨2018年にはライ・クーダーの『ザ・プローディガル・サン』があったけれど、メイヴィスの『ライヴ・イン・ロンドン』といい、いまのこの時代の、しかもアメリカ合衆国人じゃないと産み出しえない音楽作品じゃないかと思うんだよね。

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