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2019/06/06

ドナルド・バードの「その」一歩手前 〜『ザ・クリーパー』

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電化ファンク路線のドナルド・バードのことを書こうと思っているが、その前にちょうどその直前にあたる1967年録音作『ザ・クリーパー』をとりあげておきたい。これ、ブルー・ノートから発売されたのは1981年だったため、リアルタイムではいきなり『ファンシー・フリー』(69)がやってきたように見えていたはずだよねえ。当時の話を読んだことはないのだが。

 

『ザ・クリーパー』での目玉は、なんたって断然1曲目の「サンバ・ヤントラ」だ。も〜う、これ一曲だけでじゅうぶんと言ってもいいくらいなもの。曲題に反しブラジルのほうはまったく向いておらず、完全なるアフロ・キューバン、それもモダン・ジャズにおける典型的なそれだけど、しかしここまで激しく徹底してやりまくっているのはなかなかないよ。

 

「サンバ・ヤントラ」を書いたのは、ピアノで参加のチック・コリア。1967年録音だからキャリアの初期だよね。以前も触れたがチックのばあいは独立前にモンゴ・サンタマリアのバンドで活動していたことからラテン傾向があるんじゃないかとぼくは考えている。現在までずっとそう。三つ子の魂百まで。

 

さらにベースでミロスラフ・ヴィトウスが参加しているけれど、残念ながらアルバム『ザ・クリーパー』では活躍していると言いがたい。それにだいたい弾いてんのか?という程度しか聴こえないよねえ。たぶんミキシングのせいだろう。チックとヴィトウスという新世代、それも1970年代以後のジャズ界の最重要人物になっていく存在がいるわけだけど、『ザ・クリーパー』ではチックのほうに目を向ければそれで OK。

 

1曲目「サンバ・ヤントラ」のこの激しすぎるアフロ・キューバン・ビートですべてを持っていかれる思いだけど、ドラムスのミッキー・ローカーも大活躍だよね。ホーンは三管で、ドナルド・バードのほかにサックスがソニー・レッドのアルトとペッパー・アダムズのバリトン。全員がソロをとるが、やっぱりチックのソロがいちばんいいなと思うのはぼくの欲目か。

 

ラテン・ビートがファンクの基礎にあるんだという話は、このブログでもいままで再三再四くりかえしている。ラテン・ミュージックにあるリズムの跳ねかた、すなわちシンコペイションが北米合衆国のジャズやリズム&ブルーズやロックに流入して、というかそもそもそれらの存立の根本要因としてあって、ファンクネスを獲得するにいたる大きな源流だった。

 

だから、モダン・ジャズ、というかハード・バップがあんななめらかでスムースに進むフラットなビート感を持っていたところにラテン・シンコペイションがくわわって、それで1960年代末ごろからのジャズ・ファンクへ流れていくことになったんだと見て間違いないように思うんだ。だからドナルド・バードの『ザ・クリーパー』1曲目の「サンバ・ヤントラ」みたいなのはいくら重視しても重視しすぎることはないはず。ドナルド自身、数年後にファンク路線に転ずることとなったけれど、ちゃんとこうやって伏線というか準備段階があったんだ。

 

アルバム『ザ・クリーパー』では、それ以外は、6曲目の「アーリー・サンデイ・モーニング」がほんのり軽いラテン・ビートが香り、これはいわゆるブーガルー・ジャズ、すなわちリー・モーガンの「ザ・サイドワインダー」の路線だなと思う。だからこれも #BlueNoteBoogaloo だ。

 

これら二曲以外はふつうのモダン・ジャズ演奏が並んでいるという印象で、どうってことないかな。でも2曲目のバラード「アイ・ウィル・ウェイト・フォー・ユー」はかなりいい出来だ。邦題が「シェルブールの雨傘」で、ミシェル・ルグランの書いた名曲。ドナルド・バードはこういったきれいなバラードをきれいに吹くのがとてもうまいよね。

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