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2019/07/01

ヴァカンス・ミュージックとしての「ワッツ・ゴーイング・オン」by ウェザー・リポート

R8581951166286673jpeg https://open.spotify.com/user/21qp3vk3o45zy3ulmo4rgpd3a/playlist/0FFpfn6j3VCKYAFiCXXG97?si=UoI5NZIMQPWu_sbIiZ_MMA

 

ジョー・ザヴィヌルやウェイン・ショーターほかメンバーの自作曲しかやらなかったウェザー・リポートですけど、例外が二曲だけありますよね。『ナイト・パッセージ』(1980)にある「ロッキン・イン・リズム」(デューク・エリントン作)と『スポーティン・ライフ』(85)にある「ワッツ・ゴーイング・オン」(マーヴィン・ゲイ作)。

 

ところでウェザー・リポートがマーヴィンの「ワッツ・ゴーング・オン」をカヴァーしているという事実は、いったいどれほど認知されているのでしょう?ひょっとして、マーヴィン、ウェザー双方のファンからも無視されてきているんじゃないかという気がするんですけどね。有名曲でカヴァーも数多く、そのなかにはたとえばダニー・ハサウェイのみたいに人気ヴァージョンになったものがありますけれど、ウェザーがインストルメンタルでやっていることは、あまり知られていないのでは。

 

ウェザーの「ワッツ・ゴーイング・オン」は、マーヴィンのオリジナルとはずいぶん違います。もちろんマーヴィンのだって歌詞で訴えはするものの曲調はそんなにシリアスではありません。どっちかというと楽しそうな感じに仕上がっていますよね。それをインストルメンタルでカヴァーするもんだからウェザーのヴァージョンにはどこにも深刻さがないような、言ってみればノーテンキな「ワッツ・ゴーイング・オン」になっています。

 

マーヴィンのオリジナル同様に、ウェザーも曲導入部でみんなのしゃべり声をはさみこんでいるところからはじまります。日本語だって聞こえます。そのムードは、いわば南フランスのヴァカンス・ホテルかどこか、そんな場所での娯楽を享受するかのような、そんな感じだと思うんですよ。演奏がはじまったらこのヴァカンス・ムードは拡大します。

 

マーヴィンが歌うパートをウェザーはジョーのシンセサイザーで表現。それにウェインのテナー・サックスが小さくからみます。特筆すべきは背後のオマー・ハキム(ドラムス)とヴィクター・ベイリー(ベース)の二名のリズム演奏。それらがなかったらまあまあ聴けるという出来にはならなかったかもしれません。

 

サビに入るとシンセが引っ込んでテナー・サックス中心になりますが、マーヴィンの原曲にあった不安感は、その部分でそこそこ表現されているように思います。ただし、戦争や差別といった人類の危機を歌い込んだマーヴィンの不安感、深刻さとは違います。ヴァカンスのカジノでお金が足りなくなってどうしよう〜?とでもいった感じののんびりしたものじゃないでしょうか。

 

おもしろいなと前々から感じているのは、中間部でテンポが消えてウェインのフリー・ブロウイングになって、それが終わった次の瞬間に出るオマーのブラシ・プレイです。そのやわらかさは格別の心地よさじゃないかと思うんですね。そのブラシによる演奏に連なるヴィクターのベースもいいですよね。結局、そのまま演奏終了までオマーはブラシでプレイ。おだやかであったかいムードで、ぼくはちょっと好きなんです。

 

おだやかとかやわらかいとか(シリアスさのかけらもない)ノーテンキさとか、およそこの「ワッツ・ゴーイング・オン」という曲の解釈してはそぐわないおかしなものかもしれません。しかしどういうふうにとりあげてどういうふうに演奏するかはそれこそ音楽家の自由ですから。できあがりがおもしろかったらそれですべてオーケーじゃないかと思います。

 

ま、それでもこのウェザーの「ワッツ・ゴーイング・オン」はやっぱりイマイチかもしれないです。これを収録したアルバム『スポーティン・ライフ』はなかなかの充実作、傑作だと思っていますので、そのあたりは以前もくわしく書いたんですけど、またもう一回あらためて強調したいと思ってはいます。だって、『スポーティン・ライフ』って、ずっと無視されつづけているアルバムなんですもん。

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