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2019/06/22

ルーカス・ネルスンの新作が心地いい

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https://open.spotify.com/album/4pq1gNWh38JQfazZqxjH5m?si=UWXQNhTRQMGfVj_4gRyTlg

 

このアルバムが出たのは萩原健太さんに教えていただきました。
https://kenta45rpm.com/2019/06/19/turn-off-the-news-lukas-nelson/

 

大御所ウィリー・ネルスンの息子ルーカスは、現在ちょうど30歳。バンド、プロミス・オヴ・ザ・リアルを率いていますが、もう知名度があるんじゃないでしょうか。最近ならなんといってもあの大ヒット映画『アリー/スター誕生』の音楽にかかわっただけでなく、画面にも登場しました。2015年来ニール・ヤングのサポート・バンドを続けていますし、そのアルバムだって数枚あります。

 

父ウィリーがカントリー・ミュージック界の存在なのに対し、屈折していない奔放な二世ルーカスの音楽性はもっと幅広く、カントリー・ベースのルーツ・ロッカーというべきでしょうね。プロミス・オヴ・ザ・リアルはインディ・レーベルでいくつもアルバムをリリースしていましたが、メイジャーのコンコードに移籍してからは、今2019年の『ターン・オフ・ザ・ニューズ(ビルド・ア・ガーデン)』が二作目になります。

 

その最新作『ターン・オフ・ザ・ニューズ』がとってもいいんですよ。大収穫じゃないでしょうか。まず出だし1曲目「バッド・ケース」でトラヴェリング・ウィルベリーズ風味全開なんだから、もうそれでぼくなんかは心奪われてしまいます。いやあ、見事というしかない。なんなんですかこれは。ルーカス・ネルスンってこんなにも気持ちのいいロッカーなんでしたっけ。すばらしいのひとこと。この一曲を、しかも冒頭部を、聴いただけで、アルバムが良品とわかるツカミですね。

 

ジェフ・リン、ボブ・ディラン、ジョージ・ハリスンらのトラヴェリング・ウィルベリーズが、そもそも1980年代末にあってのロックンロール・ルーツ復興だったわけですけど、ルーカス・ネルスンは2019年になってそこにベースを置くことで、それをジャンプの土台にして、いわばダブル・プロセスを経てのルーツ・ロック視線を獲得しているのだと言えます。こういうと込み入ってそうですが、できあがりの音は素直でストレートですね。

 

アルバム『ターン・オフ・ザ・ニューズ』2曲目のタイトル曲もトラヴェリング・ウィルベリーズ路線ですが、3曲目はロイ・オービスンへのストレート・オマージュみたいなメロディ・ラインを持っていて、それもトラヴェリング・ウィルベリーズの一作目にありましたから、ここまでが明確なルーツ・ロック志向、先輩への敬意表明と言えます。あ、そういえば父ウィリーはそんな世代ですよねえ。じゃあルーカスのこんな音楽は父親礼賛でもあるんでしょうか。

 

端的に言って、こういうのをアメリカン・ロックの王道まっしぐらな良心的作品、若き教科書と呼びたいルーカス・ネルスンの『ターン・オフ・ザ・ニューズ』は、ライヴ一発録り感も強いんです。実際、聴いた感じ、オーヴァー・ダビングは極力おさえられているに違いありません。五人編成のバンド・レギュラーと若干名のゲスト参加ミュージシャンによるスタジオでの同時演奏を生収録し、あまり加工せず、そのままパッケージングしただろうと推察できる音響ですよね。ルーツ・ロック志向とあいまっての同一基軸上にある録音技法で、好感が持てます。

 

アルバム4曲目以後は、これもロックの根底にあるラテン・テイスト、すなわちリズム・シンコペイションを活用した曲も増えています。それを、往時のイーグルズ的なカントリー・ロック・サウンドのなかにうまく溶け込ませているといった印象なんですね。西海岸的ルーツ・ロックのなかにラテン要素が不可分のものとして一体化しているのは、土地柄を考えたら納得ですよね。

 

それでも父ウィリーが参加している7曲目「ミステリー」はストレートなカントリー・ナンバーかなと思うんですけど、4「セイヴ・ア・リトル・ハートエイク」はソウルフル、8「シンプル・ライフ」はラテンでファンキーですし、またその「シンプル・ライフ」後半のギター・ソロ・インスト部はややジャム・バンドっぽくもあります。9曲目「アウト・イン・LA」の冒頭はチープなビート・ボックスのサウンドではじまったりして、歌が出たらやっぱりラテンなリズム・フックが効いているし、ギター・ソロも光っていて、かなりおもしろいですねえ。

 

その後、(ブルーズ・ベースの)ハード・ロックでちょっぴりサイケデリック風味もある(つまりはあのころのあれ)10曲目「サムシング・リアル」を経て、アルバム一枚目ラストの11「スターズ・メイド・オヴ・ユー」は明快な1960年代ふうポップ・チューン。ギター・ソロはドリーミーです。カントリーでもロックでもなさそうなこれで(実質的に)アルバムは幕締めとなるんですね。

 

ルーカス・ネルスンの新作『ターン・オフ・ザ・ニューズ』、多くの曲でリズムに跳ねるひねりが効いていて、それがラテン・シンコペイションに聴こえるというのはぼくの嗜好ゆえかもしれません。でも王道アメリカン・カントリー・ロックのなかにも、それが<アメリカ>音楽である以上はラテン・テイストから逃れることなどできない、むしろ効果的な有機体として活用しているなあと、このアルバムを聴いても思うんですね。

 

この快作、アマゾンで見てみますと、どうやら日本盤もリリースされるみたいです。現在予約受付中となっていますから。いつごろのリリースになるんでしょう。これで、日本の音楽好きのみなさんのあいだでも、このアメリカン・ロックの良心のかたまりみたいな若者の気持ちいい音楽が人気になるといいなあと思います。

 

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