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2019/07/10

マイク・スターンの「スター・ピープル」妙技

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https://www.youtube.com/watch?v=PsXqBdkaZbU&lc=z23zwr0wuruicdp34acdp434o4uhy2qud5a3yqjzz3dw03c010c

 

マイルズ・デイヴィスの曲「スター・ピープル」(1982年録音83年発売)について書くのは何回目になるでしょうか。ぼくとしてはさほど重視していなかったんですけど、とにかく YouTube に上げたのにみんなが賞賛のコメントをどんどん寄せてくれるんです。こんなにすごい音楽はないと。今日も一個ついて、いま2019年5月9日時点でもう39個のコメント。これはぼくが YouTube に上げた音楽ファイルのうち最大のコメント数なんですね。その大多数がこの音楽を賞賛しています。

 

しかし、どこがそんなにいいんだろう?というのがぼくの偽らざる気持ちでした。前にも言いましたが、この YouTube ファイルは、ブログでの論考の際この音源を例証として使いたいと思いましたがその時点でネットにありませんでしたので自分で作成してアップしただけですから、この音楽がいいぞ、みんな聴いて!ということじゃなかったのです。なのに、これだけ熱烈な賞賛のコメントがつくとなると、こりゃきっとこの音楽にはなにかがあるんだと、考えてみないといけないなと、そう思うようになりました。

 

曲「スター・ピープル」はもちろん定型12小節のブルーズですけど、完成品となったものには前奏と間奏でまったく無関係のシンセサイザー・サウンドが挿入されています。弾いているのはもちろんマイルズ。それにギターのマイク・スターンがからんでいますよね。その挿入パートはブルーズ本編とは別個に録音されていたものなんですね。発売に際してのテオ・マセロの編集ということです。

 

しかしそのシンセ挿入パートはなかなかいいですよね。これに限らずこの曲「スター・ピープル」の編集結果をマイルズ本人は気に入らなかったんですけど、だけどいま聴きかえすとなかなか効果的じゃないですか。スター・ピープルという(だれがつけたのかわからない)曲題にも似合った夜のムードをよく演出できていますし、ブルーズ演奏本編とのコントラストも効いています。

 

そう、夜のムード、星のひとたちっていうこの曲はそんなムードこそが最重要です。そしてブルーズ演奏パートでそれを最もよく表現できているのが、マイク・スターンのギター・ソロじゃないかと思うんですね。というか、この約18分間でいちばん際立った聴きものがマイクのソロじゃないでしょうか。実に見事のひとこと。そこにこそ、曲「スター・ピープル」の真価があると言いたいです。

 

マイクのギター・ソロは二回出ます。一回目はインタールード前の前半部で、マイルズのソロに続く二番手。自分のソロに続けて(サックスではなく)ギターリストをもってくるというあたりにも、マイルズのマイク重用が見て取れますよね。しかもそのギター・ソロの内容だって、とてもいい。はっきり言ってボスのトランペット・ソロよりもずっといいぞと思うくらいです。

 

実際問題、この「スター・ピープル」では、ボスのソロはまだまだ不安定で頼りないかもしれません。音色だってか弱いですしね。ビル・エヴァンズのテナー・サックス・ソロは大幅にカットされて、たったの1コーラスだけですからどうにも言いようがないといった程度。つまり、曲「スター・ピープル」はマイクをフィーチャーしたギター・ショウケースなんだと言えますね。いい内容で弾きまくっていますしね。

 

そんな側面をもっと拡大したのがシンセ・インタールード後の後半部。その後半部では、おしまいにボスが出てきてトランペットで演奏を幕締めにするものの、それまでずっとマイクひとりだけをフィーチャーしていて、ほかにだれも、ボスをふくめだれも、ソロをとらないんですもんねえ。マイクの独壇場になっているんです。しかも内容がかなりいいです。

 

まず、シンセ・インタールードがやんでも、その雰囲気をそのまま受け継いだような星屑ギターみたいに弾きはじめるマイク。最初はバックのドラムスとパーカッションも止まっていて、ベース伴奏だけです。そのマーカス・ミラーの弾くやわらかいエレベ・サウンドに乗って、デュオで、マイクはこれ以上ない、こたえられない深夜のブルーズ・ムードを弾きます。アル・フォスターのドラムスが入ってくるまでのあいだ数分間は至福ですね。

 

その後も、ヴァイオリン奏法などさまざまなテクニックを駆使してブルージーかつムード満点に弾きこなすマイク・スターン。マイルズが最後の約二分間だけ出ますけど、それまでずっとマイクがステージ最前方にいてフィーチャーされていますよね。ここまでマイク・スターンをフィーチャーしたのはボスなのか、あるいはテオの編集作業なのか(ビルのサックス・ソロを大幅に縮小したのはテオです)わからないですけど、この星のブルーズを見事に雰囲気満点に弾きこなすマイクに降参するしかないんですよね。

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コメント

高校生時代にはじめて買ったマイルスのレコードがこのアルバムでしたが、その後大学時代に入ったジャズ系のサークルでは「ダメな時期のマイルス」などと言われながらも、ひそかに「やっぱりいいアルバムなんじゃないか」と思い続けていました。

ぼくも実は好きですね。それにギター・アルバムみたいな側面がありますから、エレキ・ギター・キッズのぼくにはその点でもうれしい内容です。

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