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2019/08/23

古いソウル・レコードのように 〜 フォイ・ヴァンス

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https://open.spotify.com/album/7Llh51MCW3JF6e7A56E5qq?si=3djDn8xkTkmoPl2a4uyvCw

 

萩原健太さんの紹介で知りました。
https://kenta45rpm.com/2019/07/31/from-muscle-shoals-foy-vance/

 

北アイルランド出身の歌手フォイ・ヴァンス(1974年生まれ)。ぼくは今回はじめて知ったひとなんですけど、これはいったいどうしたことでしょう、アルバム『フロム・マスル・ショールズ』(2019.6.28)は、このアルバム題が気恥ずかしくすらなるほど、全編が一直線の60sサザン・ソウルですよ。まるで年配音楽ファンが古いレコード棚からホコリにまみれた一枚のソウル・レコードを取り出してそのままかけたような、そんなサウンドが響きわたっています。モロそのまんますぎて、笑いそうになるほど。

 

しかし、ぼくがこの、アラバマはマスル・ショールズのフェイム・スタジオで録音されたアルバムを聴いて感じる最大の印象は、なんだかつらい苦しみと哀しみに満たされているなということです。収録の10曲はぜんぶフォイの自作なんですけど(シンガー・ソングライターらしい)、こんな作風だっていかにもなサザン・ソウル・スタイル。アレンジやバック・バンドは現地のフェイムのひとたちを本格起用しているようです。

 

あ、いや、しっかり聴くと楽しそうなものも混じってはいますね。アルバム中、たとえば6曲目「ビー・ウィズ・ミー」、7「グッド・タイム・サザン・ソウル」などは愉快なソウル・ジャンパーです。そのほかにもちょっとはあって、そういった軽快な曲のつくりも完璧な1960年代後半サザン・ソウルの趣。どこからどう聴いてもタイム・スリップしたとしか思えません。

 

書いた「つらい苦しみと哀しみに満たされているな」というのがやっぱり大きな印象なんですけど、たとえば1曲目「ユー・ゲット・トゥ・ミー」、3「ムーヴィング・オン」、5「ペイン・ネヴァー・ハート・ミー・ライク・ラヴ」、10「メイク・イット・レイン」などは、本当に心に沁みるペインフルなバラードですよねえ。いやあ、いいなあ、こういう歌を聴きたかった…、って時代をさかのぼればたくさんありますけれども、2019年に北アイルランド人が聴かせてくれるとは思いませんでした。

 

これらのつらく苦く哀しそうな曲では、フォイのソングライティングもいいし、それにこの声質とか歌いかたがよく似合っているなと思うんです。こういったオールド・ソウル・ナンバーを歌うために生まれてきたひとなんじゃないかとすら思いますが、どうやらそれは違うみたい。でもこのアルバム『フロム・マスル・ショールズ』ではあたかもそう信じ込ませてしまうほどの説得力に満ちた声の響きをしているのが、成功作である証です。

 

アレンジやサウンド・メイクはアラバマはマスル・ショールズのフェイム・スタジオでかなりやったみたいですけど、この曲づくり、そしてなによりもごまかしようのない自身のこの声が、フォイ・ヴァンスという音楽家を第一級の白人ソウル・シンガー・ソングライターに仕立て上げていますね。鈍く光る、かなりの聴きものです。

 

(written 2019.8.4)

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