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2019/08/02

ブルーズ新作二題(2)〜 涼感メロウなザック・ハーモン

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https://open.spotify.com/album/5Ne209gx3KXmu99F2CylQ7?si=5h9pKbf_SrChP_gdizUayw

 

萩原健太さんに教わりました。
https://kenta45rpm.com/2019/07/25/mississippi-barbq-zac-harmon/

 

スティーヴィ・レイ・ヴォーンに似ているなと思うミシシッピ出身の黒人ブルーズ・マン、ザック・ハーモン。今年の新作『ミシシッピ・バーベキュー』(2019.7.19)も快作ですね。ひとことにしてファンキー&メロウ。メロウなのは4曲目のタイトル・ナンバーだけかと思いきや、そんな味付けが随所に施されておりまして、メロウさってわりと涼感があると思いますから、いまのこの真夏にもってこいですね。

 

じゃあその4曲目「ミシシッピ・バーベキュー」ですけど、いきなりやわらか爽やかなエレクトリック・ピアノがぽろ〜んと入ってきた瞬間に、う〜んメロウ、でもって実に西海岸的な、つまりちょっとフュージョン・ミュージックっぽいなと感じますよね。コテコテの濃ゆいブルーズ好きからは敬遠されそうなこんな味付けも、ときにはいいんじゃないでしょうか。ザックのギター・ソロも軽妙で聴きやすいですし、ヴォーカルもつとめてソフトにしあげようとしているのがわかります。

 

このエレピ&オルガン&女声コーラスがブルーズの伴奏だなんてねえと思う4「ミシシッピ・バーベキュー」ですけど、ジャケット写真で実際にバーベキューのお肉を持っているザックのその雰囲気とはまるで真逆ですよねえ。音楽的にはコッテリさから遠ざかっているソフト&メロウ路線で攻めているザックの「ミシシッピ・バーケベキュー」で、コーラス終わりでのストップ・タイムも効いているし、ブルーズではなかなか得がたい味ですから(フュージョンなんかにはいっぱいあるけど)新鮮で、イケルなと思うんですよ。

 

でも全体的にはファンキー・テイストのほうが目立っているだろうと思うこのアルバム。なかでも特に気に入っているのが7曲目の「メイキング・ア・ダラー・アウト・オヴ・フィフティーン・センツ」です。クラヴィットが粘りついてファンキーで、いいサウンドです。自身のハミングとギターのユニゾンで出るザックも練れていて、バンドのサウンドやリズムもタイト。オルガンも効いています。この曲では、なんたってパターン反復ですね。それがファンクネスを獲得し、聴いていて快感です。

 

9曲目「ロード・セイヴ・ミー・フロム LA」は、ほんのりラテン風香のある、これもファンク・ブルーズ。リズムがふつうのブルーズのそれではなく、しかもいわゆるラテン・ブルーズ(「オール・ユア・ラヴ」とか「ブラック・マジック・ウーマン」みたいな)のそれでもなく、微妙にシンコペイトして跳ねていますよね。あ、コンガも効果的な隠し味になっていますね。ヴォーカルのあいまあいまを縫って出るギター・オブリガートの組み合わせもいい感じです。この曲も大のお気に入り。

 

そのほか、ほとんどがモダン・シカゴ・ブルーズというか1970年代以後のシカゴ・ファンキー・ブルーズの流儀にならっているなと思うアルバム『ミシシッピ・バーベキュー』ですけど、キーもメイジャーだったりマイナーだったりして、特に後者でモダン・シカゴっぽい感じがします。ザックのヴォーカルはもとからそんなに濃ゆい持ち味ではない現代風のひとで、最初ギターリストとして使われるようになった経歴の持ち主だけある楽器のほうは相変わらず鋭い斬れ味のプレイを聴かせます。音色もシャープですよね。

 

いっぽう、6曲目「ベイビー・プリーズ」はむかしながらのおなじみブギ・ウギで完璧なオールド・ファッションド・ブルーズ。ブルーズ・ハーモニカまで入っているという、全方位的なシカゴ・ブルーズぶりです。これはこれで決して過去にしばられているわけではない王道路線でいいんですよね。8曲目「サンデイ・モーニング・アフター・サタデイ・ナイト」も同傾向のブギ・ウギ・シャッフルなジャンプ系ブルーズ。しかしこのふたつ以外の収録曲は、もっとぐっとモダンに、ファンキー&メロウに寄せてきています。

 

おもしろいのはアルバム・ラストのボブ・ディラン・カヴァー「ナキング・オン・ヘヴンズ・ドア」。幽玄な雰囲気すらただよっていたこの曲を、ザックはやはりファンキーにしあげているんですね。ファンキーといってもコッテリさはなくサッパリしていて涼感があり、オルガンの入りかたなんかにもやっぱりメロウネスがありますし、このアルバム『ミシシッピ・バーベキュー』の締めくくりにふさわしいブルーズ・ナンバーへと変貌させているんですね。ギター・ソロ部でストップ・タイムが折り重なって盛り上がるあたりはグッと来る聴かせどころですし、かなりおもしろい「天国への扉」になりました。

 

(written 2019.7.31)

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