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2019/09/21

ニューポートのマイルズ 1967

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https://open.spotify.com/playlist/6LLl0Tg2bir2hGZYeLDRAp?si=QbpqKidJS1K1IgKyDuChZg

 

昨日1966年ニューポート・ジャズ・フェスでのマイルズ・デイヴィス・クインテットのことを書きました。CD だとレガシーの四枚組ボックス『マイルズ・デイヴィス・アット・ニューポート 1955-1975』の二枚目前半ですが、後半が同じクインテットによる67年7月2日出演分なんですね。だから続けて聴いたんです。そうしたら、そっちもなかなかすごいじゃないですか。やはりちょっとメモしておきましょう。

 

1967年の7月というと、前年の10月に録音したスタジオ作『マイルズ・スマイルズ』が2月に発売済み。さらに次作『ソーサラー』も5月にぜんぶ収録しておりまして、それは暮れ12月に発売されることになりました。7月のニューポートというと、ちょうどその中間的な時期ですね。7月2日のニューポートで演奏されたなかに、しかし『ソーサラー』のレパートリーはありません。

 

イントロダクションとクロージング・テーマをふくめても計32分間と短いですが、フェスティヴァルの一幕なので、こんなものだったんでしょうね。演奏は実質四曲。「ジンジャーブレッド・ボーイ」「フットプリンツ」「ラウンド・ミッドナイト」「ソー・ワット」。なかでもやはり最初の二曲が変形ラテン8ビートをともなっていて、耳を惹きますね。

 

特に「ジンジャーブレッド・ボーイ」。このトニーのドラミングがこりゃまた鬼すごいじゃないですか。バンドのリズムは基本4/4拍子で、ベースのロン・カーターが4ビートのラニング・ベースを弾いていますが、トニーはおかまいまくガチャガチャと複雑な8ビート系のポリリズムを入れ込んでいますよねえ。やっぱりすごいドラマーだったなあ、60年代のトニーは。

 

だいたいテーマ演奏がはじまる前からトニーによるイントロはブチ切れていますもんねえ。スネアのリム・ショットも入れながらかなり手数の多い細かい変形ラテン・ビートを生み出しているんですね。テーマ吹奏、マイルズのソロ、ウェイン・ショーターのソロとメーターは振り切ったまま。特にウェインのソロ部でのトニーが鬼の形相で激しく派手に叩きまくっているでしょう。三番手ハービー・ハンコックのソロになるといったんおとなしくなりますが、ハービーがハードに弾きはじめたらそれにあわせてやはりトニーもふたたび表情が変化します。

 

こんな「ジンジャーブレッド・ボーイ」が1曲目なので、もうこれだけで勘弁してくれ〜っていう気分なんですけど、2曲目のウェイン・ナンバー「フットプリンツ」も、バラードなのに3曲目の「ラウンド・ミッドナイト」も、4曲目の「ソー・ワット」も、相当ハードにスウィングしていますよねえ。「ジンジャーブレッド・ボーイ」がこんなにカッ飛んでいなかったら、それらだって相当すごいと聴こえたに違いありません。特に「フットプリンツ」最終テーマあたりでのハービーには要注目ですよ。

 

この1967年には、書きましたようにアルバム『ソーサラー』を完成させているマイルズですが、そのなかには「プリンス・オヴ・ダークネス」「マスクァレロ」といった、リズム表現に重きを置いた二曲があるんですね。それらでは特に、変形ラテン8ビートを表現するトニーのドラミングが聴きものです。アルバム最大の聴きどころにして白眉でもあるし、つまりこのころマイルズはリズム表現の多彩さに踏み込んでいたなと思うんです。

 

そんな音楽的変化が、7月のニューポートでも出ているよねえとぼくは思うんですよね。「ジンジャーブレッド・ボーイ」にしろ「フットプリンツ」にしろ『マイルズ・スマイルズ』からのレパートリーですが、67年7月のニューポート・ヴァージョンでは演奏内容が刷新されていて、『ソーサラー』の内容にあわせた新しいものになっているなと、特にトニーのドラミングにそれが最も顕著に表れているなと、そう感じます。

 

また、この1967年7月のニューポートのステージでは、一曲演奏して次の曲に入る際、間をおかず、音が完全に消えないうちにボスがトランペットでキューを吹きはじめているのがおわかりでしょう。だからワン・ステージがまるで<一曲>みたいにつながっていますよね。これはこの後ずっとマイルズ・ライヴの特徴となった手法で、本格的には同67年冬の欧州ツアーからそうなったんですが、夏のニューポートですでにこのスタイルが完成しつつあったんですね。ジェイムズ・ブラウンらのソウル・レヴューにならったものでしょう。

 

(written 2019.8.25)

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