« アルバム・ジャケットで買ったもの/買わなかったもの | トップページ | マイルス ー 「ディレクションズ」 の変遷 1968〜71, Part 2 »

2015/09/11

マイルス ー 「ディレクションズ」 の変遷 1968〜71, Part 1

Directionscbs1_7

 

Fleet1_5

 

 










一部では昔から評判の悪いジョー・ザヴィヌル。彼がマイルス・デイヴィスのアルバムに参加しているものでは、『イン・ア・サイレント・ウェイ』や『ビッチズ・ブルー』では、いい曲を提供しているし、演奏もファンキーでいいんだけど、僕が一番好きなのは、曲単位では「ディレクションズ」だったりする。

 

 

「ディレクションズ」は、ザヴィヌルがマイルスとの録音のために書いたオリジナル曲で、一緒に1968年に録音したものの、1981年のマイルス復帰直前に出た未発表曲集二枚組『ディレクションズ』に収録・発表されるまで、長年お蔵入りしたままだった。
https://www.youtube.com/watch?v=GOGX6XF6bpg

 

 

スタジオ録音のオリジナルは81年までリリースされなかったとはいえ、マイルスはレギュラー・バンドで69〜71年の三年間、ライヴのオープニングに必ずこの「ディレクションズ」を使っていたので、公式ライヴ盤もブートも含め、様々な形で録音が残されてはいる。

 

 

例えば、1970年6月録音の『マイルス・アット・フィルモア』でも、同年12月録音の『ライヴ・イーヴル』でも、現場でのオープニングは「ディレクションズ」で、そこから収録されてはいるものの、テーマはバッサリカット、跡形もなく編集されているため、「ディレクションズ」だとは分らない。

 

 

マイルスのアルバムで、この曲が初めて完全な形で姿を現したのは、1970年4月録音のライヴ盤『ブラック・ビューティー』(このブログのタイトルは、ここから取ったのではない)。しかも、これは1973年になって発売されたもの。73年にはもうこの曲はやっていないから、リアルタイムでは69〜71年のライヴを聴けたファンしか知らなかったことになる。

 

 

今では公式盤でも『1969マイルス』やフィルモア四日間完全盤や『セラー・ドア・セッションズ 1970』などがリリースされているため、当時のライヴの冒頭を飾った「ディレクションズ」の様子を丸ごと楽しむことができるけど、長年マイルス・ファンは、ほぼブートでしか聴いていなかったのだ。

 

 

もっとも、このザヴィヌルの曲、ウェザー・リポートでも結成当時から随分長い間ライヴでの定番曲だったし、1972年録音の『ライヴ・イン・トーキョー』(当初日本でのみ発売)にフル・ヴァージョンが収録されていたので、日本のファンはウェザー・リポートの方でこの曲を知っていたという人が多いはず。

 

 

マイルス・バンドのライヴでの「ディレクションズ」は、69年、70年、71年と、様相が全く異なっていて、別の曲のように聞える。70年でも鍵盤がチック一人だった4月の『ブラック・ビューティー』、チック&キースの6月『フィルモア』、キース一人の12月『セラー・ドア』では、かなり違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

聴き慣れない方には、そんなに違わないかもしれないけど、僕の耳には、かなり変化していると聞える。なお、マイルスがライヴのオープニング・ナンバーに三年間も同じ曲を使い続けていたのは、このザヴィヌルの「ディレクションズ」だけ。よっぽど気に入っていたのだろう。サイドメンもいろいろ変っているけど、ドラムスのジャック・ディジョネットだけはずっと同じ。

 

 

当時の「ディレクションズ」の変化を聴くだけで、その頃のマイルス・ミュージックの変化が分る。69年のライヴでは、まだフリー・ジャズ風な雰囲気がかなり残っていて、70年6月のフィルモアでもまだベースがデイヴ・ホランドだけど、12月にはベースがR&B〜ソウル畑のマイケル・ヘンダースンになって、完全にファンク調になっている。僕は、このセラー・ドア・ヴァージョンの「ディレクションズ」が一番好き。

 

 

こうした69〜71年の、ジャズからファンクへという音楽的変化は、マイルスの全音楽キャリアでも最も重要な変化だった。それは、当時のスタジオ録音アルバムだけでは突然に見えるし、ライヴ盤でも長年公式盤だけでは分りにくかった。ようやく近年になって公式盤でも音源が揃ってきたというわけ。

 

 

この「ディレクションズ」、69年、70年各種と今では公式盤でもいろいろと聴けるようになっているけど、長年なかった71年のヴァージョンも、七月にリリースされた未発表ライヴ集四枚組に収録されているはずだ(まだ買っていないから、確認できていない)。

 

 

ついでにウェザー・リポートのも貼っておこう。解散後の2006年になって、ベスト盤ボックスに収録されて初めてリリースされた、71年録音のスタジオ版→ https://www.youtube.com/watch?v=yTaGdRuMsAE そして72年東京でのライヴ録音→ https://www.youtube.com/watch?v=tMt2zY_aE18 ほぼ同じだなあ(笑)。

« アルバム・ジャケットで買ったもの/買わなかったもの | トップページ | マイルス ー 「ディレクションズ」 の変遷 1968〜71, Part 2 »

マイルズ・デイヴィス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: マイルス ー 「ディレクションズ」 の変遷 1968〜71, Part 1:

« アルバム・ジャケットで買ったもの/買わなかったもの | トップページ | マイルス ー 「ディレクションズ」 の変遷 1968〜71, Part 2 »

フォト
2023年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ