« マイルス ー 『ライヴ・イーヴル』のライヴ・サイドとスタジオ・サイド | トップページ | ジャイヴもジャンプもジャズなのだ »

2015/09/17

Assaf - Bright Star from Palestine !

Assaf_makes_new_gaza_vid_2

 

Assaf_new_album_twitter_2_2

 

 







パレスティナ人歌手、アッサーフ(ムハンマド・アッサーフ)を知ったのは、今年春頃、エル・スールのサイトを彷徨いている時に(まあ毎晩彷徨いているわけだけど)、たまたま彼のデビュー・アルバムからのサンプル動画を視聴して、それが凄く良かったからだった。偶然の出会い。全くの新人らしく、それまで一度も聞いたことのない名前だった。

 

 

エル・スールのサイトで試聴して一番いいと思ったのはコレ→ https://www.youtube.com/watch?t=14&v=jCOfMdXNSzs とても24歳の新人とは思えない素晴しい歌声だよねえ。一番驚いたのは、今時の若手アラブ・ポップ歌手にしては珍しく、アラブ古典歌謡風の濃厚なコブシ廻しを身につけていることだった。24歳の新人歌手が、アラブ歌謡のディープな伝統をしっかり継承しているのが、嬉しくなった。

 

 

いろいろとYouTubeにあがっているアッサーフの音源を聴くと、伴奏は今時の現代風アラブ・ポップスなのに、アッサーフ自身の歌い方は、どれも正調アラブ古典歌謡風なのだった。今、こういうのはなかなか聴けないので、僕はすぐに彼に惚れてしまった。なんといってもこういうコブシ廻しに弱い。

 

 

嬉しくなってTwitterでアッサーフのことをほんの少しツイートしたら、これまた驚いたことに、おそらく(世界各地の)パレスティナ人の方々と思われるアラビア語アカウントから、たくさんふぁぼられたりリツイートされたり、アラビア語や英語でのリプライが飛んできたり、かなりの反応があった。

 

 

そういう数多くの反応で分ったことなのだが、アッサーフにはTwitter公式アカウントがあって、さらにファンクラブのようなTwitter集団が世界各地(のおそらくパレスティナ人社会)に存在していて、彼らの間でアッサーフは大人気らしかった。その頃は、かなりそういう方々とやり取りした。

 

 

すぐにアッサーフのデビュー・アルバムをエル・スールで買った→ http://elsurrecords.com/2015/03/05/mohammed-assaf-assaf/  いざ聴いてみたら、最初はこんなもんかと思った程度で、さっき貼った音源の曲はアルバム・ラストに収録されているので、そこまでなかなか辿り着かないので、もどかしい感じすらした。

 

 

このデビュー・アルバムを何度か聴いて、そのまましばらく放置していたのだが、最近思い直してまた聴いてみたら、これがなかなかいいんだなあ。今年のベストテンに入るような傑作ではないように思うけれど、これはなかなかの快作だ。ジャケット・デザインはイマイチ気に入らないけれども、中身はいい。

 

 

もっとミドル〜アップ・テンポの曲を増やした方がよかったように、最初の頃は感じていたけど、最近久しぶりに聴直したら、結構入っているじゃないか。最初の頃は単に僕の聴き方が足りなかっただけだった。ドラムスは打込みだし、それ以外にも電気・電子楽器をたくさん使っているけど、それはまあいいんじゃないかな。

 

 

最初は、一番先に動画を試聴していた、アルバム・ラストの「ヤ・ハラリ・ヤ・マリ」が一番いいように感じていて、どうしてこれをアルバム・トップに持ってこないのかと思っていたんだけど、今聴くと五曲目の「アイワ・ハガーニ」や六曲目の「ワード・アル・アサイェル」も、快活でなかなかいいね。

 

 

(まだ一枚だけの)アルバムをじっくり聴直したり、それ以外にもたくさんYouTubeに上がっているアッサーフの歌う動画を試聴すると、どうも彼はスローなバラードよりも、やっぱりそういうアップ・テンポの快活なナンバーで、今のところは真価を発揮するタイプの歌手であるように、僕は感じる。

 

 

いろいろYouTubeに上がっているアッサーフの歌う動画で、僕が一番気に入っているのがコレ→ https://www.youtube.com/watch?v=O-a3zagLXIY 実はこれ、まだデビュー前の素人時代、『アラブ・アイドル』というオーディション番組決勝での模様なのだ。既に歌は完全に完成されているよねえ。

 

 

アメリカに『アメリカン・アイドル』という新人歌手発掘のオーディション番組があって、『アラブ・アイドル』は、そのアラブ版。アラブ地域一帯で大人気の番組らしく、アッサーフは『アラブ・アイドル』第二シーズンの優勝者。「アラブ・アイドル」でググるとたくさん出てくるので、すぐに分る。

 

 

もっとも『アメリカン・アイドル』も、イギリスの同趣旨の番組『ポップ・アイドル』を下敷にしていて、『アラブ・アイドル』も、直接的には『ポップ・アイドル』をベースにしているそう。放映しているのはサウジ系のテレビ局。先ほど貼った動画を見ると、審査員席にレバノンの人気歌手、ナンシー・アジュラムがいるね。

 

 

パスレティナ自治区ガザ地区出身のアッサーフが『アラブ・アイドル』で勝上がるたびにどんどんパレスティナ自治区や世界中のパレスティナ人社会で大きな話題になって、ベイルートのパレスティナ人難民キャンプでは、金曜夜の同番組が始ると、全住民がテレビの前に貼付いて、彼の歌に聴入ったらしい。

 

 

これは別にベイルートの難民キャンプだけの話じゃないはずだ。パレスティナ自治区内はもちろん、おそらく世界中のパレスティナ人ディアスポラの間で同様の現象が発生していたはずだ。僕が少しツイートしただけで、しかもほぼ日本語でしかツイートしていないのに、世界中から反応があったのだから。

 

 

言ってみれば、アッサーフは世界中のパレスティナ人達の希望の星、パレスティナ・ドリームの体現者なのだ。僕が中東地域で、パレスティナに強いシンパシーを覚えるのは、パレスティナ他のアラブ世界に一方的な迫害を加え続けるイスラエルが大嫌いだからそうなったというのが最大の理由ではあるけど。

 

 

だいたい、イスラエルは、何千年も前の聖書の記述だけを根拠に、それまで長年に亘って定住していたパレスティナ人を追出して、無理矢理そこに新国家を建設するなんて、理不尽そのものだとしか僕には思えない。もちろんそこには英国を初めとする欧米国家の思惑もあったわけだが。

 

 

音楽とはほぼ関係のない話だが、僕の大好きな文芸・文化批評家エドワード・サイード(故人)も、米コロンビア大学で教鞭を執ったパレスティナ人だった。パレスティナ生れで、エジプトのカイロで高等教育を受けた人で、いわゆる一般の貧しいパレスティナ人民とは、生まれも育ちも違う人ではあったけど。

 

 

サイードの『オリエンタリズム』や『カヴァーリング・イスラム』(『イスラム報道』という邦訳題は、このタイトルの一面しか表していない)などは、西洋人が中東世界をどう見てきて、それを中東側からしたらどう感じるかということが、非常に良く分る名著だ。どちらも邦訳があるから、是非ご一読を。西洋のイスラム報道(cover)が、同時にいかにイスラムの真実を隠して(cover)いるかという。

 

 

先に書いた『アラブ・アイドル』第二シーズン決勝の最後にアッサーフが歌ったのは、「ケフィエを掲げよう」という曲だった→ https://www.youtube.com/watch?v=Aj-pyJF6ckU  ケフィエとは、PLO(パレスティナ解放機構)の故ヤセル・アラファト元議長がかぶっていたことで知られるチェック柄のヘッドスカーフのことだ。

 

 

つまりアッサーフは、ガザ地区のパレスティナ人居住区出身という出自と、その抜群の歌唱力で、政治的・地理的に分断されたパレスティナ人社会を、再び一つにしようと訴えかけるように歌ったわけだ。そしてそれに呼応するように、ガザ地区と西岸地区だけでなく、世界中のパレスティナ人が熱狂した。

 

 

アッサーフはパレスティナ人再結束のシンボル的存在。歌も凄く上手くて魅力的だし、ご覧になれば分るように、ルックスもなかなかのイケメンで、まだ24歳だし、これからパレスティナ人だけでなく、アラブ世界を中心に、世界中にどんどんファンを増やし活躍し続けていくはずだ。

« マイルス ー 『ライヴ・イーヴル』のライヴ・サイドとスタジオ・サイド | トップページ | ジャイヴもジャンプもジャズなのだ »

中東、マグレブ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Assaf - Bright Star from Palestine !:

« マイルス ー 『ライヴ・イーヴル』のライヴ・サイドとスタジオ・サイド | トップページ | ジャイヴもジャンプもジャズなのだ »

フォト
2023年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ