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2015/09/16

マイルス ー 『ライヴ・イーヴル』のライヴ・サイドとスタジオ・サイド

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いいという人も多いけど、マイルス・デイヴィス『ライヴ・イーヴル』での、エルメート・パスコアール等が参加したスタジオ小品は、僕は昔からどうも良さが分らない。唯一、ジョン・マクラフリンがファズを目一杯かけたギターを弾きまくる「ジェミニ/ダブル・イメージ」だけが、まあまあいいと思う程度。

 

 

『ライヴ・イーヴル』のライヴ音源じゃないスタジオ小品(「ジェミニ/ダブル・イメージ」以外)が、心から素晴しいと思う人は、ちょっと手を挙げてみてください。そして、それらのよさが分らない僕に、どの辺がいいのか教えて下さい。特にプログレ系リスナーの方々!(笑)

 

 

1990年代後半にパソコン通信をやっていた頃、音楽フォーラムで同様の発言をしたところ、瞬時にプログレ系リスナーの方々から一斉に激しくツッコミが入り、ああいうのがいいんだぞちゃんと聴けと説教されたことがある。最近はネット上でそういうことが少なくなってきて、ちょっと寂しい。

 

 

LP時代は飛ばすのが面倒くさいから、仕方なく全部聴いていたけど、CDになってからは、『ライヴ・イーヴル』は、スタジオ作品は飛ばしてライヴ音源ばかり聴くようになった。最近は、また再び全部通して聴くようになってはいる。

 

 

テオ・マセロの編集意図としては、ライヴ音源とスタジオ音源をサンドイッチ状に挟み込んで並べて、一種のトータル・アルバム的な仕上りにしたかったということなんだろうけど、僕の聴く限りでは、その目論見は成功しているとは言い難いなあ。

 

 

『ライヴ・イーヴル』のライヴ音源のソースになった、1970年12月ワシントンDCでのセラー・ドア録音『セラー・ドア・セッションズ 1970』六枚組が2005年に出たけど、それで『ライヴ・イーヴル』二枚組は用無しかというと、そんなことはない。

 

 

『セラー・ドア』の生素材な感じに比べると、同一音源でも『ライヴ・イーヴル』の方は、よく計算・編集されて「作品」化されていて、ミックスも違うから印象が全く違う。一曲目の「シヴァッド」など元の形がほぼ分らなくなっているものもあるけど、それでも編集された方が良く聞えるから不思議。

 

 

『ライヴ・イーヴル』の一曲目「シヴァッド」の出だし約三分間は、現場のライヴでも一曲目だった「ディレクションズ」であることが今では分っているけど、編集されまくってあまりに違うため、最初ブートでこの元音源6CDが出た際に、ブート紹介本でこれについて書いた原田和典さんが、(「シヴァッド」になった部分を)「見つけられなかった」と書いたほど。

 

 

簡単に見つけてしまった僕などからしたら、プロなのに「見つけられなかった」というのはちょっとどうかと、そのマイルス・ブート紹介本(なにかの雑誌ムックだったはず)を読んで思っちゃったけど、それも仕方ないかと思うほど違っているのは確かだ。

 

 

 

 

 

今でこそ『セラー・ドア・セッションズ 1970』ボックスのブックレットに、『ライヴ・イーヴル』ではどこをどう編集したか、詳細に明記されているので、それを見れば誰でも分るけど、ブート盤しかなかった頃に、特にマイルス愛好家というわけでもなかったらしいのに、記事のために比較・分析しなくちゃいけなかったご苦労だけは、素直に同情する。

 

 

それにしても『ライヴ・イーヴル』のライヴ音源は、本当に凄い。前から電化マイルスでは一番凄いかもという人もいるくらいで、一枚目一曲目の「シヴァッド」出だしの三分間とか、キース・ジャレットがゴスペル風でアーシーなエレピを弾きまくる、一枚目B面トップの「ホワット・アイ・セイ」とか、何回聴いても興奮する。なお、「ホワット・アイ・セイ」だけは、一曲丸ごと完全に無編集。

 

 

「ホワット・アイ・セイ」でのキース・ジャレットのエレピは、ソロもいいけど、なんといってもイントロが凄い。感極まった観客の叫び声も聞えるほどだ。こんなにファンキーに弾くまくるキース・ジャレットは、彼自身の作品はもちろん、マイルスの他の作品でも聴けないね→ https://www.youtube.com/watch?v=Lb-jR8OSXaY

 

 

そして、『ライヴ・イーヴル』二枚目のライヴ音源でのバンドの演奏はもっと凄い。特にキースの無伴奏エレピ・ソロ後半から徐々に盛上がってきて、最後一気にベースとドラムスが入ってド〜ン!と来て、いきなりバンド全体が激しくグルーヴし始めるあたりは、もう筆舌に尽しがたい物凄さ。

 

 

「ホワット・アイ・セイ」始め、『ライヴ・イーヴル』でのエレピ・プレイが、キース・ジャレットの生涯最高の演奏だと、僕は確信している。70年6月の『フィルモア』完全盤四枚での、チックとのフリーでアヴァンギャルドな掛合いも凄いけど、個人的には70年12月のこっちの方が好きだ。

 

 

『セラー・ドア・セッションズ 1970』のブックレットに寄せた文章の中で、キースはフェンダー・ローズを"toy instrument"と呼んでいるけど、マイルス・バンド以外ではほぼアクースティック・ピアノしか弾かない彼は、一体どこがいいのか?74年の『生と死の幻想』と76年の『残氓』以外に、いいものあるのかなあ?

 

 

まあキース・ジャレットだけでなく、チック・コリアも、マイルス・バンドでフェンダー・ローズを弾いていた頃、特に1969年ロスト・クインテットでのライヴ音源が、生涯で一番物凄いと思うけどね。ハービー・ハンコックだけは、独立後のファンク・ミュージックの方が面白いと思うけど。

 

 

ちなみに、どうでもいいことかもしれないけど、マイルスの『Live-Evil』。CBSソニーから出ていた昔の日本盤LPのタイトルは『ライブ・エビル』だった(笑)。これはあまりに酷すぎるので、現在の日本盤CDは『ライヴ・イヴル』に訂正されている。これでもまだちょっとどうかと思うけど。

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