アゼルバイジャン人歌手のものすごさ
頼んでエル・スールさんに入荷してもらったアゼルバイジャン古典ムガーム二枚組のコレ→ http://elsurrecords.com/2015/04/21/v-a-great-singers-of-the-republic-of-azerbaijan-1915-1960/ 今見たら「再入荷」とあるから、初回入荷分は完売したんだ。よかった。売れずにエル・スールさんが在庫抱えることになったら、少し責任を感じてしまうところだった。
なかでも、シェイド・シュシンスキー→ http://www.youtube.com/watch?v=_vry9UfFYi8 やや長めの音源だけど、音楽そのものは最高だから、ちょっと聴いてみてほしい。他にも数曲入っているシェイド・シュシンスキーが、この二枚組の中では一番いいように感じている。
また、このハーン・シュシンスキーもなかなか凄いね→ http://www.youtube.com/watch?v=0JF0AMpdXGY こういうとんでもない歌手ばっかり、この二枚組CDには並んでいるんだよね。
このアゼルバイジャン古典ムガーム二枚組、日本でCD買えるのは多分エル・スールだけ。MP3ダウンロードでもよければiTunes Storeでも売っていて、簡単にしかも安く買える。僕の今年のリイシュー部門第一位は、これで決りだなあ。
荻原さんも「文化の交差点を聴くという実感」と仰っていたけど(http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-01-16)、こういうのを聴くと、まさにイラン〜トルコ〜アゼルバイジャン辺りの音楽が、一繋がりなのがよく分る。おそらくはイラン(ペルシア)の古典声楽が一帯に影響を及したんだろうけど。
イラン古典声楽に特徴的な、喉を震わせるようなタハリール唱法の影響を、アゼルバイジャンの古典ムガームも受けていることが、この二枚組を聴くと大変よく分る。かつては、西アジア一帯はペルシア帝国の支配下にあったから、アゼルバイジャンもトルコも、その文化的な影響を強く受けているのだろう。
もちろん歌唱法だけでなく、そもそも音楽の作り方が西洋音楽系とは全く異なる旋法体系に基づくもので、それをアラブ世界やトルコではマカーム、イランではラディーフ、アゼルバイジャンではムガームと呼ぶ。また使われる楽器も共通していたり、大変似通っていたりする。僕もまだまだ入口にいるだけ。
このアゼルバイジャン古典ムガーム二枚組は、元々2005年にアゼルバイジャンで非営利目的でリリースされた16枚組CDブックが原型らしく、それをイランのマーフール文化芸術協会が二枚組にまとめてリリースしたもののよう。こうなると、その元の16枚組も聴いたみたい気がするなあ。
アリム・ガスモフも、今年になって知ったゴチャグ・アスカロフも最高だけど→ http://www.youtube.com/watch?v=JiS5wmLvVPQ 、このアゼルバイジャン古典ムガーム二枚組を聴くと、やはり彼らを産み出すだけの素地はしっかりあったってことだ。当り前みたいなことを言っているけど、それを強く実感する。音楽の伝統とはそういうものだ。
もちろん、単に現在の素晴しい音楽家達に繋がる過去の伝統を学んで、認識を深めるという意味合いだけではなく、その古い音源自体が聴いていて大変素晴しく、もうそれを聴いているだけで気持良くなってしまうわけだけどね。まあ、この二枚組は、主に古いSP音源なので、ちょっと録音はアレだけど。
こういうとんでもないのを聴いてしまうと、ポリフォニーではない単独歌手のヴォーカル・ミュージックでは、アゼルバイジャンが一番凄いんじゃないかとすら思えてくる。男性の単独歌手では、パキスタンのヌスラット・ファテ・アリ・ハーンが、ポピュラー音楽史上最高峰の存在だと思っているけど、存命歌手では、さっき音源を貼ったアゼルバイジャンのゴチャグ・アスカロフが一番凄いだろう。
やっぱりこういう物凄いものに時々出逢えるから、ワールドミュージックや、古い音源の探索・冒険はやめられない。こういうものを聴いていると、最近のロックやジャズやクラシックや、そういうもの「だけ」を聴いて満足している人達にも、ちょっとこういうのを聴いてみてほしいと思ってしまうなあ。
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