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2015/09/23

マイルスのブルーズ〜エレクトリック篇

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昨晩、自作のマイルス・デイヴィス演奏のブルーズ・コンピの話をしたけど、それに入っているのは、全部アクースティック・ジャズ時代のもの。その頃はブルーズをたくさんやっていたマイルスも、68年以後の電化時代になると、12小節のいわゆるブルーズ進行のストレート・ブルーズは、殆どなくなっている。

 

 

アクースティック・ジャズ時代は、ほぼどのアルバムにも最低一曲はブルーズ・ナンバーがあるんじゃないかと思うほどブルーズ好きだったはずのマイルスだけど、68年電化後、75年の一時隠遁までの間のスタジオ録音でやったストレート・ブルーズは、『ゲット・アップ・ウィズ・イット』収録の「レッド・チャイナ・ブルーズ」一曲だけ。

 

 

「レッド・チャイナ・ブルーズ」→ https://www.youtube.com/watch?v=EuKhccJi_GI ハーモニカが入っているせいか、ジェイムズ・コットンのファンク・ブルーズの雰囲気がちょっとあるようなないような。72年録音のこれには、ギターのコーネル・デュプリーとドラムスのバーナード・パーディが参加している。左チャンネルで(僕の持っているCDでは右なんだけど)刻んでいるのがデュプリーだろう。

 

 

そういうR&B〜ソウル人脈のセッション・ミュージシャンをマイルスが起用したのは、そっち系の人だったマイケル・ヘンダースン(元はモータウン人脈で、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、アリサ・フランクリンなどとの録音歴あり)をレギュラー・メンバーにしていた以外では、この曲だけだ。

 

 

68〜75年の間のスタジオ録音では、その「レッド・チャイナ・ブルーズ」だけのマイルスのストレート・ブルーズだけど、81年復帰後は、再びまあまあ演奏するようになっていた。スタジオ録音されているのは、83年の「スター・ピープル」(同名アルバム)と、84年の「ザッツ・ライト」(『デコイ』)だけだけど。

 

 

「スター・ピープル」→ https://www.youtube.com/watch?v=PsXqBdkaZbU

 

「ザッツ・ライト」→ https://www.youtube.com/watch?v=-btSYGX73uo

 

 

スタジオ録音はそれだけでも、ライヴ・ステージでは82/83年から91年に死ぬまで、ほぼ全てのステージで、序盤にストレート・ブルーズをやっていた。来日公演でも必ずやっていたので、僕も何度も聴いたのをよく憶えている。今ではそれらは全て「スター・ピープル」か「ニュー・ブルーズ」というタイトルになっている。

 

 

つまり、ブートレグも全部含めたら、かなりたくさんの「スター・ピープル」や「ニュー・ブルーズ」の録音が存在するわけだけど、現在、公式盤でそれを聴けるのは、88〜91年のライヴ音源からセレクトした『ライヴ・アラウンド・ザ・ワールド』と、73〜91年の全てのモントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのステージを収録したモントルー箱20枚組の二つだけだ。

 

 

モントルー箱の方は、最初の73年の録音以外は、全部84年から91年までのものなので、「スター・ピープル」か「ニュー・ブルーズ」が毎年全部入っている(計七種類)。その中で、僕の聴く限り一番いいのは、86年のヴァージョンだ。当時のレギュラー・メンバーだったロベン・フォードが入っているから。

 

 

マイルスが81年の復帰後に雇ったレギュラー・メンバーのギタリストでは、おそらくロベン・フォードが一番ブルーズは上手いように思う。そのロベン・フォード入り「ニュー・ブルーズ」→ https://www.youtube.com/watch?v=JRnafQOkZTo やっぱりロベンのソロがいいよね。モントルー箱はDVDでも発売されているので、そこから取ったんだろう。

 

 

モントルー箱にある「ニュー・ブルーズ」では、91年ヴァージョンも面白い(もっとも、それはニースでのライヴ)。91年のバンドにはキーボードのデロン・ジョンスンが入っていて、88年に在籍していたジョーイ・デフランシスコ同様元々オルガニストのデロンが、ハモンドB-3(の本体は持込みにくいから、その音を出すシンセサイザーだろう)でソロを取っているのが、なかなかいい雰囲気なのだ。

 

 

ところで68年の電化後は、69年のロスト・クインテットのライヴで「ノー・ブルーズ」をやっていたのと、前述の72年スタジオ録音の「レッド・チャイナ・ブルーズ」以外は、完全にストレート・ブルーズをやらなくなっていたマイルスだけに、83年の『スター・ピープル』で18分にも及ぶ長いタイトル・ナンバーのブルーズをやった時は、当時『スイングジャーナル』編集長だった児山紀芳さんも、マイルスへのインタヴューで真意を聞いていたほど。

 

 

そりゃまあ72年の「レッド・チャイナ・ブルーズ」がありはするものの(当時はまだ69年のライヴ録音は出ていない)、あんな真っ黒けなドブルーズは例外中の例外で(マイルスの音楽性は案外白い)、スタジオでもライヴでも、68年から83年まで、ストレートなブルーズはやらなかったのに、それが突然83年にあんなストレート・ブルーズをやったんだからなあ。

 

 

だから大勢の日本人ファンを代表して、直接マイルスに聞きたいという児山さんの気持は伝わってくるインタヴューだったけど、当のマイルスは、なんでブルーズ?などというアホみたいな質問に今更真面目に答える気にもならないといった感じで、全く取合っていなかった。お付きの黒人に答えさせてたくらいだった。

 

 

復帰後のマイルスは、50年代のポップ・ナンバーをたくさん取りあげていた頃の姿勢に少し戻っていたんじゃないかと僕は思っているんだけど、ブルーズ・ナンバーに関しても、まあそんな感じだったんだろうと、今では思う。50年代にはたくさんブルーズをやっていた、別にどうってことはないと。

 

 

また、イアン・カーはマイルス分析本の中で、電化後はストレートなブルーズはやらなくても、多くの曲がデフォルメされたブルーズなのだと書いている。その一例として『ビッチズ・ブルー』のタイトル・ナンバーを挙げていた。マイルスはそういう意味でも、児山さんの質問をアホらしいと思ったんだろう。

 

 

僕も、例えばローリング・ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』を、ブルーズ・アルバム(ブルーズ・ロックではなく)だと発言したことがあって、それは「ストップ・ブレイキング・ダウン」みたいな曲のことを指してのことではなく、アルバム全体のフィーリングがブルーズそのものじゃないかと思っているわけだ。

 

 

そういう意味では、『イン・ア・サイレント・ウェイ』の「イッツ・アバウト・ザット・タイム」や『ビッチズ・ブルー』の「マイルス・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン」や『ゲット・アップ・ウィズ・イット』の「ヒー・ラヴド・ヒム・マッドリー」や、そういうのは僕にとってはブルーズのフィーリングに聞えるのは確かだなあ。

 

 

まあしかし50年代に比べると、録音されたストレート・ブルーズが68年電化後は、種類が少ないというのは事実なので、いざエレクトリック・マイルスのブルーズ・コンピを作ろうとすると、困ってしまった。それでもなんとか55分程度のをでっちあげたけど、アクースティック篇に比べたら緩急がなくて、あんまり聴かないんだなあ(苦笑)。

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