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2015/09/30

最近のブラジル音楽でもオールド・スタイルが好き

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今夜、アントニオ・ロウレイロのコンサートが渋谷であるようですが・・・。

 


ジャズのレコードばかり買っていた時代に、僕も多くのジャズ・ファン同様、ボサ・ノーヴァ(風のもの)からブラジル音楽に入り、それ以外のブラジル音楽も少しは買っていた。ウェイン・ショーターの『ネイティヴ・ダンサー』が大好きで、おかげでミルトン・ナシメントの他のLPなども買った。

 

 

ショーターとブラジル音楽というと、その1974年の『ネイティヴ・ダンサー』ばかりに言及されるけど、そもそもショーターは、マイルス・デイヴィスのバンドを辞める直前の、1969年録音の『スーパー・ノヴァ』で、アイアート・モレイラとマリア・ブッカーを迎えて、ジョビンの「ジンジ」をやっている。

 

 

その翌年の70年録音の『オデッセイ・オヴ・イスカ』でも、「デ・ポワ・ド・アモール・オ・ヴァッジオ」というボサ・ノーヴァ・マナーに則った曲を、ソプラノ・サックスで吹いていたりするし、同じ70年録音の次作『モト・グロッソ・フェイオ』では、既にミルトン・ナシメントの曲をやっている。74年のミルトンとの共演『ネイティヴ・ダンサー』に至るには、そういう布石があった。

 

 

もっとも、ジャズマンと関わりのあるブラジル人音楽家でも、マイルスとの共演もあるエルメート・パスコアールに関しては、マイルスの『ライヴ・イーヴル』での三曲は、昔も今も、良さがよく分らない。彼自身のアルバムは、『スレイヴス・マス』等、かなり好きなものがあるけど。

 

 

ミナス系ブラジル音楽も、1970年代のものはいいと思って聴いていたものの、それも今では全く聴かなくなってしまい、ましてや現在の、いわゆる「ミナス新世代」の音楽家達にいたっては、聴いてもどこがいいのかサッパリ分らなかったりする。誉めるリスナーも多いから、悪くないんだろうけど。

 

 

なので、各種メディアで、いろんな方々が展開している記事やオススメ盤には、僕は殆ど興味がなく、たまに買って聴いてみても、どれもいいとは思えない。みなさん絶賛のアントニオ・ロウレイロにしても、何枚か聴いたけど、良さが分らない。東京でのライヴ盤は、ドラムスの芳垣安洋だけはいいと思ったけど。渋さ知らズで聴いて好きなドラマーだし。

 

 

まあ僕みたいなリスナーにとっては、なんか環境音楽とかとあまり違いがよく分らないような、今のブラジル音楽の大半は、BGMとして流すのにはいいとは思うものの、じっくり聴き込むにはちょっとなにかが足りないように感じてしまう。

 

 

カエターノ・ヴェローゾも、かつては熱心なファンだった(特に『粋な男ライヴ』の頃)んだけど、一時期からのアルバムは、買って聴きはするものの、そんなにいいとも思わなくなった。ブラジル音楽の中で、今でも好きでよく聴くのは、ショーロとサンバと、ショーロ風の伴奏が付いたものばかり。

 

 

僕はやっぱりオールド・スクールな耳の持主なんだろう。というわけで、今年聴いた新作でも、ショーロな伴奏の付いたニーナ・ベケールのドローレス・ドゥラーン集とか、新人サンビスタながら老舗の貫禄を感じるCesinha Pivetta 『NOSSA BANDEIRA』とがが大好き。

 

 

考えてみれば、大学生の時、ジャズのLPばかり買ってた頃も、モダン・ジャズよりニューオーリンズやディキシーやスウィング等の古いものが好きだったし、ブルーズでも戦前のカントリー・ブルーズや古いシティ・ブルーズ(含むいわゆるクラシック・ブルーズ)の方が好物になってしまったし。

 

 

ロックやソウルは1950年代以前の録音がないわけだけど、ワールド・ミュージックを中心に聴くようになってからも、最近はどっちかというと、戦前の古いSP音源や、新作でも、古い曲や古典スタイルを現代に蘇らせたものとかの方が好きになってしまって、僕はやっぱりそんな嗜好の持主なんだろう。

 

 

それに20世紀後半に出現したものを除けば、殆どのポピュラー音楽が、録音音楽としては、20世紀前半に成熟して頂点に達してしまい、その後様々に変化して続いてきたものの、その変化は「進化」でなく、それまでの遺産をいろんな形で食い潰して生きてきたのだという考え方もできる。

 

 

ブラジル音楽に戻ると、名曲の多いショーロ・ナンバーの中で僕が一番好きなのは、ピシンギーニャの「1×0」とジャコー・ド・バンドリンの「リオの夜」で、どっちかが僕の中でNo.1。サッカー・ファンだから、「1×0」の方かも。

 

 

 

 

 

ジャズの名曲などと同じく、こういったショーロの名曲も、その後現在に至るまで数多くのショーロ演奏家やブラジルのジャズマン等にカヴァーされている。少し前に荻原さんのブログで、グルーポ・シンカードというブラジルの現代ジャズ・グループが、ピシンギーニャの「ラメント」をやっているのを知った。

 

 

そのグルーポ・シンカードによる「ラメント」がコレ→ https://www.youtube.com/watch?v=QYnI68croF4 この1928年の古いショーロ・ナンバーが、完全に現代ジャズに生れ変わっている。今の音楽家が2014年作でこういう古い曲を新感覚でやるあたりが、ブラジル音楽の懐の深さだろう。

 

 

グルーポ・シンカードの「ラメント」は、実を言うとあまり感心しなかったんだけど(そもそも一部で盛上がりを見せている現代ジャズは、僕にはいいものが少ないように思える)、現代のショーロ・カリオカ、ルイス・バルセロスの2014年作『Depois Das Cinzas』は、今年ようやく買えるようになって、これがかなり良かった。これもCDを買って愛聴盤になっている→ https://www.youtube.com/watch?v=-o-yKMxVmRw

 

 

こういうルイス・バルセロスの新作みたいな王道のショーロ・カリオカ(ショーロ・パウリスタもそうだけど)や、ニーナ・ベケールの『ミーニャ・ドローレス』とかの方が、現代ブラジル音楽としては、多くの方々が持上げるいわゆるミナス新世代とかよりも、はるかにいいんじゃないかと、僕の耳にはそう響くんだなあ。

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