マイルス ー 不完全なオフィシャル盤と完璧なブート盤
マイルス・デイヴィスの未発表ライヴ四枚組も、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの未発表ライヴ四枚組も、どっちも発売が7/17で、値段もちょっと高かった。同時に二つも四枚組が出ると、お財布事情がなかなか厳しい。
そういうわけで、迷わずスライの方だけ先に買って、マニアなのに、マイルスの方はまだ買っていない。だってレガシーから出ているマイルスのブートレグ・シリーズは、今まで出たものが殆どダメなもので、はっきり言って今回だって、約三分の一が公式でも既出だし、未発表音源分にしてもヘンな並び方だしなあ。
2013年に出た『Miles Davis Quintet: Live in Europe 1969』だって、せっかくあの有名な69/11/5のライヴを公式化したのに、収録したのはチックがアコピを弾いた第一部だけ。どうして凄い第二部も含めなかったのか、さっぱり理解できない。
その69/11/5のストックホルム公演は、長らくブートの『スウェディッシュ・デヴィル』二枚組で有名だった音源で、せっかくそれを公式化する機会だったのに、一枚分だけしか公式化しないとか、どう考えても理解できない。これでブートも用無しかと思ったけど、やっぱりブートを手放せない。
その『スウェディッシュ・デヴィル』二枚組は、マイルスの1969年ロスト・クインテットの最高傑作として、ファンの間では長らく愛聴されてきたもの。ブートは高いし、購入先が限定されているし、それがそのまま公式化するなら、なかなかブートなど買えない多くのファンにとっても朗報と思ったのに。
また2014年に出た『Miles at the Fillmore: Miles Davis 1970』にしても、あの名盤二枚組『マイルス・アット・フィルモア』四日間の完全化を謳っているけど、四日ともブートには入っている演奏前の音出しが入っていなくて、大変残念な出来。
演奏前の音出しなんかと言われるかもしれないけど、公式盤『マイルス・アット・フィルモア』の「フライデイ・マイルス」の冒頭は、その金曜日公演の演奏前の音出しから一部採用されて編集されているので、「完全盤」四枚組にそれが入ってないのは致命的欠陥。それが完璧に入っているブートがやっぱり必要。
しかもですね、そのフィルモア公演では、ステージ写真を見ると、エレピのチックが右、オルガンのキースが左なのに、公式盤四枚組では、そのチックとキースの左右のミックスが逆になってしまっている。どうしても演奏風景を頭に思い浮べながら聴いてしまう僕なんか、公式盤はかなりの違和感がある。
その点、ブートのフィルモア完全盤四枚(バラ売り)では、そのチックとキースの左右のミックスも、ちゃんとステージでの光景通りになっているし、先も書いたように演奏前の音出し〜アナウンス〜本演奏〜演奏終了後のSEまで丸ごとバッチリ全部収録されていて、音質も公式と完全に同じだから、そっちを聴いちゃう。
そんな具合だから、レガシーからリリースされるマイルスのブートレグ・シリーズにはあまり期待できない。どの音源もブートで聴けるものばかりで、音質的にも同じで、しかもその上書いたようにブートの方がいろいろ「正常・完璧」だから、ブートの方をオススメする次第。七月に出た今回のもどうかなあ?
どうもレガシーは、スタジオ録音にしろライヴ録音にしろ、マイルスの未発表音源の発掘・編集・発売に関して、マイルス・ファンを舐めているんじゃないかとしか思えない。あまり事情をよく知らない人向けには、いいのかもしれないけど、ちょっと深く聴いているファンには、ダメなものが多いよなあ。
レガシーがマイルスの死後にたくさん出した未発表音源集で、良かったものって、2005年に出た六枚組の『セラー・ドア・セッションズ 1970』だけじゃないかなあ?あれだって、1970年12月のこのライヴを完全収録したものではないのに、「コンプリート」を冠しようとしてたらしいけど。
それでどうも発売直前に、レガシー側とマイルスの遺族側との間で一悶着あったらしく、発売が予定よりかなり遅れて、出たものを見てみたら、プロデュース関係のクレジットの肝心のところに、一部シールが貼られていたもんね。これ、全世界に流通したもの全てに、同様のシールを貼ったのかと思うとねえ。
そのセラー・ドア音源にしても、公式発売の一年くらい前に、全てが二枚組×3でブートで出てたけどね。それを全部買っていた僕にしても、それらが丸ごと公式音源化したのが嬉しくて、ついまた買ってしまったけど。発売当時盛んにやっていたmixiのマイルス・コミュでも大きく盛上がっていたなあ。
とかいろいろ文句を言いながら、今までの公式のブートレグ・シリーズも全部買ってしまっているし、七月に出た新しい奴も、いずれ近日中に買ってしまうんだろうけど。その辺がマニア道にどっぷり浸かりこんでしまった人間の哀れなところ。ここのところ毎年出ていて、どうせ一回しか聴かないとは思うけどね。
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