とうようさんのオーディブック・シリーズ
数ヶ月前に、中村とうようさん編纂のオーディブック・シリーズが、三つだけライスから復刻された。僕みたいにかなり遅れてとうようさんを追いかけ始めたファンには、ありがたい限り。僕がとうようさんを信頼し始めフォローするようになったのは、例の『ブラック・ミュージックの伝統』LP上下巻からだった。
あの『ブラック・ミュージックの伝統』LP上下巻は、1975年のリリースだったらしいけど、その頃はまだ音楽を熱心に聴始めていない。あれを僕が買ったのは確か大学四年の時(1983年)。『ミュージック・マガジン』を買って読始めたのもだいたいその頃で、『レコード・コレクターズ』の方はもうちょっと後。
実は『ミュージック・マガジン』の方は、その少し前から本屋でパラパラめくったりはしていたものの、出た当時は大好きだった(今聴くと、なんでもない凡作だけど)『ウェザー・リポート(1982)』がボロカスに言われていたりして、そのレヴュワーが他ならぬとうようさんだったりして、ちょっと趣味の合わない雑誌だなあと思っていたのだった。
1982年創刊の『レコード・コレクターズ』の方は、最初の頃は(昨晩書いた)ジャイヴやジャンプ関係の記事がたくさん載っていたらしいから、もしその頃知っていたら、完全に趣味の合致する愛読誌になっていたはずだけど、どういうわけか、松山の普通の本屋では見掛けなかったんだよなあ。僕の探し方が悪かっただけだろう。凄く口惜しい。
だから、まあだいぶ遅かったよなあ。それでもオーディブック・シリーズがリリースされたのは、その後のことだったようけど、ワールドミュージック関連のものはほぼ全部買い逃している。僕がワールドミュージックを聴始めたのは、1986年にキング・サニー・アデの『シンクロ・システム』をラジオで聴いてから。
しかも、それからしばらくはアフロ・ポップ中心に聴いていたから、クロンチョンとかを聴始めたのはもっともっとずっと後のこと。それもこれも、全てとうようさんの『大衆音楽の真実』で知ったくらいだった。僕が世界中の音楽を本格的に聴こうと思い始めたのも、あの本を読んでからのこと。
『大衆音楽の真実』は1986年に初版が出ている本で、僕はその翌年か翌々年くらいに買って読んだ。だから、僕のワールドミュージック探求は、80年代末にようやく始った程度だった。この本にもオーディオセットが付いていたみたいだけど、それは僕は買っていない。本屋で買ったから、CDが付いていことすら知らなかった。
その頃から、主にワールドミュージック関連で、熱烈な中村とうよう信者になってしまい、随分たくさん勉強させてもらった。その後英米日のポピュラー・ミュージック関連についての文章も、大変面白く読めるようになった。『ブラック・ミュージックの伝統』LPを買った1983年頃は、まださほどでもなかったんだなあ。
僕がリアルタイムで買って聴いたとうようさん編纂のオーディブックは、唯一、2005年に出た『アメリカン・ミュージックの原点』二枚組だけだ。有名な「ラ・パローマ」は、あれで初めて聴いたのでは?それ以外は、CDショップ店頭に在庫が残っていたものを少し買っただけ。今でも二・三個しか持っていない。
もっとも、その『アメリカン・ミュージックの原点』だって、オーディブックは元々は1994年に出たものらしいけど、当時はそれを知らなかったんだよなあ。2005年にライス盤でリリースされたので初めて知って買った。だから「リアルタイムで買ったオーディブック」とは、ちょっと言えないなあ。
その2005年盤『アメリカン・ミュージックの原点』も、すぐに廃盤になったらしいけど、今アマゾンで見たら2012年にリイシューされたのが生きている(http://www.amazon.co.jp/dp/B0089RVK0K/)。このセットは『アメリカン・ミュージック再発見』のオーディオ版みたいなイメージかも?
だけど、今見てみたら、とうようさんの『アメリカン・ミュージック再発見』が出たのは1996年になっているから、ちょっとその僕の認識は違うなあ。むしろ、MCAジェムズ・シリーズの一つとして出たCD『ロックへの道』などと連動していたのかな?このCDは1996年リリースだし。
脱線するけど、とうようさん編纂のMCAジェムズ・シリーズは、1990年代後半(だったかな?)にどんどんリリースされたもので、これは大変有難かった。あんなに勉強になって、しかも最高に楽しいCDシリーズはなかった。あの『ブラック・ミュージックの伝統』も、それで改訂復刻された。
MCAジェムズ・シリーズ、特に『ロックへの道』は、従来の黒人音楽中心のロック起源観をガラリと変えてしまう目から鱗の一枚だったし、他にも『ハーフ・パイント・ジャクスン』とか、40年代のジャンプ・バンドばかり集めた『ブラック・ビートの火薬庫』とか、それまでになかったし、最高に楽しかった。
MCAジェムズ・シリーズは全部買ったけど、あれが出てた90年代後半は、ちょうどパソコン通信をやっていた頃で、僕が棲息していた音楽系フォーラムにもとうようさんのファンが多かったから、買いながら大いに話が盛上がった記憶がある。あれほど一枚一枚出るのを待遠しく思ったCDリイシュー・シリーズはない。
そのMCAジェムズ・シリーズも、今ではほぼ全部廃盤みたいで、僕がオーディブック・シリーズに遅れてしまって買い逃して悔しい思いを今でもしているのと同じような思いをしている若いリスナーが、現在結構いるんじゃないだろうか?まあそれが世の常であるとはいえ。
数ヶ月前にライス(オフィス・サンビーニャ)からリイシューされたオーディブック・シリーズは、『プエルト・リコ音楽入門』『ハイチ音楽入門』『南アフリカ音楽入門』の三つだけ。三つとも持っていなかったから有難い。でもオーディブック・シリーズは全部で50作くらいあったらしい。僕は殆ど持ってないんだよなあ。
できれば、その50個のオーディブック・シリーズを全部復刻してほしいんだけど、それを実現するには、まあいろいろと難しい問題もあって不可能だということは、今では少しだけ理解できる。今回リイシューされた三つも、再プレスというわけではなく、残っていた在庫を出しただけみたいだし。全部持っている人が羨ましい。
ところで、どうでもいいことかもしれないけど、とうようさん編纂のオーディブック、ネットで検索すると「オーディオブック」となっているものが殆どだなあ。そもそも「オーディブック 中村とうよう」でググっても「Did you mean: オーディオブック 中村とうよう」と聞かれてしまうなあ。
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