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2015/09/13

マグレブ系伝統音楽とマグレブ系ミクスチャー音楽

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HK&レ・サルタンバンクの2015年の新作『Rallumeurs d'Étoiles』、数ヶ月前に初めて聴いた時はピンと来なかったけど、しばらく聴いたらかなりいいと感じるようになってきた。伝統的なマグレブ・サウンドには敏感なくせに、こういうミクスチャー系サウンドには鈍感な僕。

 

 

 

このアルバムの中では、この曲が一番いいと思う→ https://www.youtube.com/watch?v=f3SDCmyhFrc この動画、HKがフランス語で歌っている歌詞の意味が分らなくても、映像を見ているだけでこの曲とアルバムのテーマが伝わってくるね。リズムはレゲエっぽい。

 

 

ミクスチャー系バンドに鈍感というより苦手だから、HKのサルタンバンクも今まであまりいいと思ったことがなかった。HKに対する僕のそういう苦手意識を根底から覆したのが、2014年の別ユニットによる『HK Présente Les Déserteurs』だったのだ。取りあげている曲が全てシャンソン(誰でも知っている有名曲も数曲ある)で、しかもそれをアルジェリア系らしく完全にシャアビ流に料理していて、これがもうとんでもない大傑作。僕は2014年ベストテン新作篇の第一位に選んだくらいだった。

 

 

 

それでHK(カドゥール・アダディ)のことをかなり考え直して、それまでのいくつかのHK&レ・サルタンバンクの過去作もじっくり聴直してみたんだけど、それでもやっぱりどうもそういうものは、僕にはイマイチなのだった。

 

 

でもHKと同じく在仏アルジェリア系のアマジーグ率いるグナワ・ディフュジオンなんかは、最初の頃から大好きで、新作が出るたびに買って愛聴してきたんだから、HK&レ・サルタンバンクも好きになってもよさそうなものではあったけど、なぜだったんだろうなあ?自分でもよく分らない。

 

 

まあでもグナワ・ディフュジオンの場合は、僕が最初に聴いた99年の『バブ・エル・ウェド・キングストン』では、ミクスチャー系が多かったものの、個人的にはグナーワやシャアビの印象が強い。あのアルバムでもラガ風ミクスチャー・サウンドみたいな曲は、最初はそんなに好きじゃなかったもん。

 

 

つまり二曲目の「シャッターを開けろ」とか四曲目のアルバム・タイトル曲とかより、九曲目のグナーワ(からすぐにラガマフィンになるけど)「サブリナ、あるいは天然ガス」や、ラストのシャアビ「夜の奧のガゼル」とかの方に惹かれていた。このバンドの本領は、一曲目とか二曲目とか四曲目などの、ラガ・ベースのマグレブ系ミクスチャーだろうけど。

 

「サブリナ、あるいは天然ガス」→ https://www.youtube.com/watch?v=1n78IiiCehg

 

「夜の奧のガゼル」→ https://www.youtube.com/watch?v=DH7xEPnQ79I

 

 

だから、ミクスチャー・サウンドが一層進んだ2003年の『スーク・システム』とかは、大変な傑作だとは思うものの、実はそんなに好きじゃなかった。もっともあのアルバムがメジャーのワーナーから出たこともあって、あれで一気にこのバンドの認知度が高まって、大きな人気も出たわけだけど。

 

 

ついでに言っておくと、その『スーク・システム』の日本盤が出た時に、ワーナージャパンのバンド名表記が「グナワ・ディフュージョン」だったせいで、それで各種メディアやライターさん達も一斉にそれに倣うようになってしまい、まあそんなこともあって僕にとっては、いろんな意味で複雑な気持になるアルバムだった。

 

 

このバンドでは、2015年の今でも『バブ・エル・ウェド・キングストン』が一番好き。『スーク・システム』とかより、そっちの方が好きだというファンは少数派かも。僕はどの国の音楽でも、現代風のより古典伝統的、あるいはそのバランスが取れているものを好きになる場合が多い。もちろん例外はあるけども。

 

 

グナワ・ディフュジオンに関しては、僕の知る限りでは、1999年の『バブ・エル・ウェド・キングストン』が、このバンドが日本に紹介された最初(日本盤のアルバム名表記は『バベル・ウェド・キングストン』)だったはず。当時の新宿丸井地下のヴァージンメガストアで、偶然発見して買ったのだ。

 

 

なお、繰返しになるけど、この『バブ・エル・ウェド・キングストン』の日本盤がオルター・ポップから出た時は、バンド名表記はちゃんとグナワ・ディフュジオンになっていたんだよなあ。フランスのバンドなんだから、Gnawa Diffusionはグナワ・ディフュジオンだよ。あんまり言うと、お前もマイルスをマイルズにしろよと言われそうだけど。

 

 

関係ない話だけど一応書いておくと、Milesの場合は、語尾の子音である"s"は、実際の発音時には殆ど消えてしまって聞えない。実際、いろんなライヴ・アルバムで彼を紹介しているMCや、あるいはサイドメンだった人達の様々なインタヴューなどを聴いても、Milesの語尾の"s"が聞えるものはただの一つもない。だから、語尾まではっきり音にすればズになるのは分ってはいるけれど、それにこだわるのは、あまり意味のないことだろう。一方、僕がこだわってブルーズと表記するbluesは、英語ネイティヴの発音を聴くと、これはもうはっきりズと言っているのが分るので。

 

 

話を戻そう。グナワ・ディフュジオンを知った前年1998年に出たオルケストル・ナシオナル・ドゥ・バルベス(ONB)のデビュー・アルバムにすっかりハマってしまっていた僕は、その翌年のこのグナワ・ディフュジオンの『バブ・エル・ウェド・キングストン』で、完全にアラブ音楽というかマグレブ音楽嗜好が決定的になってしまって、現在まで続くというわけ。

 

 

そのONBのデビュー・アルバム(ライヴ盤)は、当時のパソコン通信の音楽友達に勧められて、渋谷のHMVで買ったのだったが、翌年のグナワ・ディフュジオンの『バブ・エル・ウェド・キングストン』は、さっき書いたように新宿で偶然見掛けて、ジャケとアルバム名だけで良さそうだと直感して買った。

 

 

まあONBだって、マグレブ系ミクスチャー・バンドじゃないかと言われたら、その通りだけどね。でも僕の場合は、ONBのデビュー作やグナワ・ディフュジオンの『バブ・エル・ウェド・キングストン』で、ミクスチャー系を探求する方には向わず、ルーツ系というか、グナーワやシャアビなどのマグレブ伝統音楽に興味を持ったのだ。

 

 

ゲンブリ(三弦のベース風撥弦楽器)やカルカベ(金属製カスタネット)なども、ONBのデビュー作で聴いてはいたものの、『バブ・エル・ウェド・キングストン』で、そういうグナーワで使われる楽器が大好きになり、ゲンブリは購入先が分らなかったので、ネットで見つけたカルカベを買ったりした。

 

 

昔はそういう実店舗での偶然の出逢いがあったけど、ネット通販中心の今はそういうことがなくなってしまったと言う人も多いけど、ネットを徘徊しまくっていれば、結構情報があってそういう出逢いは今でもある。手に取ることはできないけど、サンプル音源は聴けたりして、あんまり変らないんじゃない?

 

 

そんなことを考えながら、グナワ・ディフュジオンの『バブ・エル・ウェド・キングストン』を、iTunesにインポートしたら、ジャンル名が「Reggae」になる。これはこれで間違いではない。アマジーグも、ボブ・マーリーに一番影響を受けたらしいし、アルバムの音作りが基本レゲエ(ラガ)だ。

 

 

実際、レゲエ等ジャマイカ音楽研究・評論家の藤川毅さんも、以前アマジーグのソロ・アルバムが刺激的だったと言っていたし、グナワ・ディフュジオンについても、そう思っているはず。だから、HK&レ・サルタンバンクの今年の新作も、聴いたら多分気に入ってもらえるはず。

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