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2015/09/06

ラテン音楽とジャズ

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僕が小学生低学年の頃、父親がラテン音楽好きで、ペレス・プラードなどの8トラ・カセットをクルマでガンガンかけていたせいで、僕もその頃からラテン音楽好きだった。小学校低学年で「マンボ No.5」とかの曲名も知っていた。

 

 

だけど、僕が自分から積極的にレコード買ってラテン音楽を聴始めるのは、もっともっとずっと後のことで、17歳の頃にジャズを本格的に聴始めるようになっても、しばらくはラテン音楽には縁がなかった。『ゲッツ/ジルベルト』をきっかけに、ボサノヴァを少し聴いていた程度だった。

 

 

後から振返ると、大学生の頃からチャールズ・ミンガスの『メキシコの思い出』や『クンビア・アンド・ジャズ・フュージョン』とかが大好きだったし、油井正一さんの『ジャズの歴史物語』の中で、「ジャズはラテン音楽の一種」という説を読んでいたりはしたんだけど、ふ〜んと思った程度だった。

 

 

いったい、僕は、ブラジル音楽以外のラテン音楽を、いつ頃から積極的に聴始めたんだろう?結構最近のことじゃないかという気がする。多分、カエターノ・ヴェローゾの『粋な男』(94年)を聴いて、あれはブラジルではなくて、周辺のスペイン語圏の曲を取上げたもので、その辺りからなのか?

 

 

あるいは、ロス・ロボスをその前から好きだったから、その辺からイースト・ロサンジェルスのチカーノ・ミュージックに興味を持って、聴くようになったのか?しかしロス・ロボスにしても、僕が聴始めたのは92年の『キコ』辺りからだったから、まあどっちにしても、90年代に入ってからだなあ。

 

 

それに大人になってからは、昔好きだったペレス・プラードとかのマンボや、1930年代に流行したルンバとかのキューバ音楽は、カッコ悪いとすら感じていたもんなあ。キューバ系音楽でも、70年代のサルサの流行を知ったのは、もっとずっと後のことで、リアルタイムでは全く知らなかったもんなあ。

 

 

キューバ音楽を聴始めたのは、やっぱり中村とうようさんの『大衆音楽の真実』を読んで、ソンを知ってからだった。ソンを聴始めたのも、その後しばらくしての90年代に入ってからだったはずだから、やっぱりその辺だなあ、僕がラテン音楽を聴くようになったのは。

 

 

もちろん「アフロ・キューバン・ジャズ」というのがあって、1931年にはデューク・エリントン楽団が「南京豆売り」をカヴァーしてたり、あるいは1940年代以後は、ディジー・ガレスピーが本格的にそういう音楽をやっていたり、チャーリー・パーカーにもそういうアルバムがあったりしたんだけど。

 

 

エリントンは「南京豆売り」をカヴァーしただけだなく、「キャラヴァン」(初演は36年のコンボ録音)みたいな曲があったりするし、ディジー・ガレスピーには「マンテカ」があるだけでなく、その初演にはコンガ奏者のチャノ・ポゾが参加しているし、パーカーもマチート楽団に客演していたりする。

 

 

その後も、さっき書いたミンガス始め、ジャズとラテン音楽とは密接な繋がりがあって、古くはジェリー・ロール・モートンのソロ・ピアノ録音にも、既に彼が「Spanish tinge」と呼んだ、ハバネラ風の曲があったりする。だけど、それをちゃんと考えるようになったのは、やはり90年代以後。

 

 

そして、90年代以後ラテン音楽を聴始めて、ジャズとの繋がりや、ニューオーリンズ音楽との関係を、例えばプロフェッサー・ロングヘア(大学生の頃、二・三枚、LPを買っていた)の音楽などを含め、いろいろと考え始めると、大学生の頃には見えていなかった面白いことが分るようになった。

 

 

そうすると、例えばキューバ人ジャズ・ピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバの演奏に聴かれるキューバ風味を面白く感じたり、マウント・フジでの彼とチック・コリアの共演による「スペイン」を聴いても、違って聞えてきたり、マイルス&ギルの『スケッチズ・オヴ・スペイン』も感じが違ってきたりした。

 

 

あるいは、ホレス・シルヴァー(カーボベルデ系アメリカ人)の「セニョール・ブルーズ」(『シックス・ピーシズ・オヴ・シルヴァー』収録)が、昔はあまり聞えていなかったラテン風味が分ってきたりして面白くなってきた。今では「セニョール・ブルーズ」こそ、ホレスの最高作と思っている。

 

 

そして「ジャズはラテン音楽の一種」という油井正一さんの言葉の意味が、まあ今でもちゃんとは分っていないままジャズからちょっと離れているけど、それでも昔はふ〜んと思っただけなのが、多少は面白く感じてきたりしているのだった。それが分り始めるまで、30年以上。随分かかったもんだなあ。

 

 

ジャズ以外でも、大学生の頃から好きだったカルロス・サンタナも、好きな曲やアルバムが変ってくるようになったし、あるいはグナワ・ディフュジオンの『バブ・エル・ウェド・キングストン』の一曲目「マダンガ」におけるブレイクでのティンバレスの使い方を面白い(完全にサルサ)と思うようになった。

 

 

その「マダンガ」での間奏ブレイクでの、まるでサルサなティンバレスが入ったのとほぼ同時に、グナーワなカルカベが入り始めて、なんだこりゃ?と大変あれは面白いんだよねえ。今聴直しているけど、カッティングのギターが、リズムはレゲエだけど、クチュクチュとまるでインヴィクタスみたいだし。

 

 

その「マダンガ」→ http://www.youtube.com/watch?v=wS8TRtlbQpo 他にも、グナーワで始って、後半ラガマフィンに変貌する「サブリナ、あるいは天然ガス」→ http://www.youtube.com/watch?v=1n78IiiCehg とか、このバンドは、やっぱりこの『バブ・エル・ウェド・キングストン』が好きだ。

 

 

ちょっと書いたパーカーのラテン・ジャズ作品『フィエスタ』を見直すと、「ラ・パローマ」をやっているなあ。この曲、スーザ・バンドので初めて聴いたと思ってたけど、そうじゃなかったんだ。でもパーカーのは、ハードなアフロ・キューバンになっていて、この曲本来のゆったりしたハバネラ風味がない。

 

 

イラディエールの名曲「ラ・パローマ」、スーザ・バンドのがYouTubeになかったので、自分で上げた→ http://www.youtube.com/watch?v=VOunR0Ac0hE  一方、チャーリー・パーカーのヴァージョンはこれ→ http://www.youtube.com/watch?v=MDud5LJb2Wg

 

 

「ラ・パローマ」のフィーリングは、連綿と継承されていて、ロス・ロボスの別働隊ロス・スーパー・セヴンの2001年作『Canto』一曲目の、ラウル・マロが歌う古い曲「シボネイ」http://www.youtube.com/watch?v=SLhNQaaSB9k なんか、完全にそういうゆったりしたハバネラ風味。大好き!

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