僕のシカゴ・ブルーズ事始め
歳取ってきたということなのか、最近昔のことを思い出すことが多いけど、マジック・サムの『ライヴ』も、大学生の頃、二枚組LPを買って聴いていた。ジャズのレコードばっかり買ってた時期なんだけど、なぜこういうブルーズ・アルバムを買ったのかは、もはや全く憶えていない。
大学生の頃持っていたマジック・サムのレコードは、『ライヴ』だけで、凄いとは思ったものの、他のLP(二枚しかないけど)も買ってみようとならなかった辺りは、やっぱり本格的に探求してたのはジャズだけだったんだろうなあ。他にもブルーズのレコードはいくつか買ったけど、やはり単発的だった。
あのマジック・サムの『ライヴ』は録音状態が悪い。アン・アーバー・ブルーズ・フェスティヴァルのは少しマシという人いるけど、まあどっちも悪いね。でも今もそうだけど、当時もそれは全く気にならなかった。もっと音の悪いジャズのレコードがたくさんあったし、そういうものも好んで聴いていたので。しかし、ホントなぜあの二枚組を買ったんだろうなあ?
まあシカゴ・ブルーズは、大学生の頃から少しは聴いていて、『シカゴ・ブルースの25年』(確かLP四枚組)とかも買っていて、調べてみたら、これは1981年リリースだから、多分出た直後に買っていたと思う。あの四枚組は、チェス等の大物は殆ど入ってなくて、むしろマイナーなブルーズマンばかり。
チェスとか、大物とか、マイナーとか、ブルーズの世界に関してはそれは当時全く分ってなくて、ただ面白そうだと思って買っただけだった。実際あの四枚組LPは、当時は全く面白くなかったような記憶がある。マディもウルフも誰も知らない19歳が、いきなりあんな四枚組買っても面白いわけがなかった。
ブルーズに関しては、前に書いたような気がするけど、B.B. キングの『ライヴ・アット・ザ・リーガル』が愛聴盤だったけど、それはBBが門外漢でも誰でも知っている超有名人だったから、なにか一枚買ってみようと思っただけで、聴いたら凄くよかったけど、BBがブルーズ界でどういう位置付けの人かなんてことは、全く意識してもいなかった。
ジャズに関しては、20世紀初頭のニューオーリンズ・ジャズから、当時リアルタイムで聴いていた70年代後半のフュージョンまで、全てのスタイルの変遷を自作の樹形図のような形にして、大きな紙に書いて壁に貼っていたりしたけど、ブルーズに関しては、全然ダメだった。
妹尾みえさんのような、生れついてのブルーズ・リスナーみたいな人は違うのかもしれないけど、僕みたいなドシロウトは、やっぱりちゃんと順番を踏んで代表的なブルーズマンの名盤から聴いていかないと、分らなかったんだろうなあ。最初に買ったブルーズのレコードが、あの四枚組LPだったとはねえ。
あの四枚組がリリースされた当時、多分レコード屋でも大きくフィーチャーされていたんだろうと思うし、四枚組LPボックスなんて大きくて目立つし、アルバム・タイトルと枚数で、なんとなくこれでシカゴ・ブルーズ入門ができるんじゃないかと勘違いして、買っちゃったんじゃないだろうかなあ。
『シカゴ・ブルースの25年』で、唯一買った当時から大好きだったのが、最後の方に入っていた、デトロイト・Jrの「コール・マイ・ジャブ」。イビキの音から始る冒頭のユーモラスな掛合いや、曲も楽しいし、最後の「クビだって!」にも笑ったなあ。https://www.youtube.com/watch?v=poUlmEhI16o
それ以外は、どこが面白いのかさっぱり分らず、あまり繰返し聴かなかった。あの四枚組の面白さが分るようになったのは、やっぱりCD三枚組でリイシューされたのを買い直して聴いてからだろうなあ。一度1989年にCDリイシューされたらしいけど、それは見逃してて、僕が買ったのは2008年盤。
今見てみたら、『シカゴ・ブルースの25年』ボックスに入っているもので、一番有名なのは多分オーティス・ラッシュの「アイ・キャント・クイット・ユー・ベイビー」だろうなあ。これはレッド・ツェッペリンのファーストに入っていたので知っていた曲だったから、その意味では当時から馴染はあったはず。
他にもジョニー・シャインズとかココ・テイラーとかメンフィス・スリムとかサニー・ボーイ・ウィリアムスンとかロバート・Jr・ロックウッドとかエルモア・ジェイムズとかバディ・ガイとかアール・フッカーとか、まあまあ有名どころが入っているじゃないの(笑)。でも当時は全く知らなかったもん。
その後、最初に書いたマジック・サムの『ライヴ』二枚組LPも買って、こっちは一回聴いていきなり凄いと思ったけど、これがシカゴ・ブルーズの中でどういう位置付けにあるのかとか、そういうことは全く知らなかった。まあそういうことは音楽を楽しむのには、本質的なことではないとは思うけど。
マディ・ウォーターズとかハウリン・ウルフとかリトル・ウォルターとかサニー・ボーイ・ウィリアムスンとか、そういうシカゴ・ブルーズの代表的なブルーズマンのアルバムを買始めたのは、多分大学生の終り頃からだったろうと思う。同時にブルーズ関係の文章も少し読始めて、徐々に馴染始めたのだった。
その頃、ほぼ同時にデルタ・ブルーズなど戦前のカントリー・ブルーズも聴始めて(ベシー・スミスなどいわゆるクラシック・ブルーズはもっと前から聴いてたけど、あれは油井正一さんも取りあげてたし、当時の僕にとってはジャズだった)、むしろそっちの方が好きになっていった。
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