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2015/09/20

ブラック・アフリカとアラブ・アフリカ

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僕のワールドミュージック入門が、ナイジェリアのキング・サニー・アデだったおかげで、しばらくはアフロ・ポップ中心に聴いていたんだけど、最近はアフリカものでは、いわゆるマグレブ地域など、サハラ以北のアラブ圏のアフリカ音楽(と言っていいのか?)を中心に聴いている。

 

 

地理的には同じアフリカ大陸にありながら、音楽的には(その他文化的にも)、サハラ以北とサハラ以南とでは、大きく違う。同じ「アフリカ音楽」で括ってしまえないし、現に音楽関係のいろんな書物やウェブサイトでも、この二つははっきりと分けられている。

 

 

 

もちろん北アフリカのマグレブ音楽でも、モロッコのグナーワなど、元はブラック・アフリカがルーツの音楽があったり、サハラ以北なのか以南なのか分りにくいモーリタニアや、あるいははっきりサハラ以南の国の音楽でも、イスラム圏音楽の影響が強い場合も結構ある(宗教的にはイスラム教徒が多い国がかなりある)から、厳密には分けられない。

 

 

 

 

それでも、普通「アフリカのポピュラー音楽」とだけ言えば、アラブ・アフリカのものは入れず、サハラ以南のブラック・アフリカのものを指す。キング・サニー・アデは最初の大スターだったけど、同じ頃スターになったフェラ・クティも、以後のサリフ・ケイタやユッスー・ンドゥールなど、全てサハラ以南の音楽家だ。

 

 

僕はようやく最近聴始めた、もっと前の時代のスークースやハイライフの音楽家達もブラック・アフリカの音楽家だし、ティナリウェンの活躍で、21世紀になって注目を浴びるようになったいわゆる砂漠のブルーズも、マリ等を拠点とするトゥアレグ族達がメインだから、やはりブラック・アフリカの音楽家。

 

 

というわけで、昔も今も「アフリカのポピュラー音楽」は、サハラ以南のブラック・アフリカを中心に、世界的に注目を浴びてきたけど、しかしながら、最近の僕の関心はサハラ以北のアラブ・アフリカにあったりする。そして同じアラブ圏という意味で、西アジア一帯の音楽にも大きな興味がある。

 

 

大きなきっかけは、これも以前書いたけど、1998年に買って聴いたオルケストル・ナシオナル・ドゥ・バルベス(ONB)のデビュー・ライヴ・アルバムと、翌年のグナワ・ディフュジオンの『バブ・エル・ウェド・キングストン』だった。この両者とも、アルジェリア等マグレブ地域出身の在仏音楽家。

 

 

近年のドルサフ・ハムダーニ(チュニジア出身)にしてもそうなんだけど、こういった北アフリカの元フランス領だった地域の音楽家は、フランスに渡ってパリなどを中心に活動している場合が多く、アルバムもフランスのレーベルからリリースされることが多い。フランス語で歌ったりもする。

 

 

その在仏チュニジア出身のドルサフ・ハムダーニは、自己名義のアルバムでは、二枚ともフェイルーズの曲を一部歌っている。フェイルーズはレバノン出身の大歌手(現在も存命)。レバノンは地理的にはアジア圏の国だけど、音楽を含めた文化的には、中東の一部というか同じアラブ文化圏というわけで、北アフリカのアラブ諸国とも繋がっているというわけ。

 

 

ちょっと関係ない話だけど、FIFA(国際サッカー連盟)の分類でもレバノンはアジアだけど、同じ西アジア文化圏にあるような気もするトルコは、1962年以後UEFA(欧州サッカー連盟)所属だ。また、南北アメリカは、北中米カリブと南米に分けられていて、これは南米がサッカーの世界では特別な地域だからなんだけど、音楽ファン的視点からは、違和感がある。サッカー・ファン的視点からも、北中米カリブの一部としてW杯予選などを戦うメキシコのサッカー・スタイルは、南米的なんだけど。

 

 

僕が西アジアのアラブ文化圏の音楽に興味を持ったのも、ひとえに北アフリカのアラブ圏の音楽を聴始め、それが音楽的に西アジアの音楽と深く繋がっている、というか、一続きの同じ音楽圏に属していると知ったからだった。三年前から積極的に聴始めたトルコ古典歌謡も、音楽の内容的には共通するものがある。

 

 

アラブ圏といえば、トルコは入らないけど、「中東」といえば、トルコも含んでの西アジア・北アフリカ一帯を指す。まあこの「中東」という表現もヨーロッパ側からの視点ではあるけれど。また、トルコ語だって1928年のケマル・アタチュルクによる文字改革以前は、アラビア文字表記だった。

 

 

今年に入ってから強く興味を抱き、いろいろ聴始めたアゼルバイジャンのムガーム音楽にしても、元々イラン(ペルシア)古典声楽の強い影響下にあるし、トルコ古典歌謡とも繋がっていて、その辺一帯の音楽が完全に一続きになっているのが、いろんな音源を聴いていると実感できたりする。

 

 

そういうわけで、最近の僕は、文化的に一体となって繋がっている、西アジア〜北アフリカなどの、アラブ圏・トルコ・アゼルバイジャン等の音楽を中心に聴いていて、アフリカ大陸の音楽でもサハラ以北のアラブ圏をメインに、買って聴いている。それらは音楽の歴史も長く、聴けば聴くほど面白い。

 

 

サハラ以南のアフリカ音楽に興味がなくなったわけでは全然ないんだけど、めぼしいリイシュー物以外の、新譜を買う頻度は少し減った。2015年に入ってから、新譜で買ったのは、セネガルのファーダ・フレディ、ジンバブウェのオリヴァー・ムトゥクジとトーマス・マプフーモ、ブルキナファソのババ・コマンダントだけだなあ。どれも良かった。

 

 

その中ではファーダ・フレディの『ゴスペル・ジャーニー』が一番素晴しいように思う。また、同じジンバブウェの音楽家の2015年作では、トーマス・マプフーモのも傑作だとは思うものの、僕はオリヴァー・ムトゥクジのライヴ盤の方が断然好みだなあ。

 

 

リイシュー物はもっと数を買っているんだけど、その中では、やはりE.T. メンサー(ガーナのハイライフの音楽家)の四枚組が、一番意義が大きかったように思う。個人的な好みだけなら、フェラ・クティの最初期音源も入っている、同じガーナとナイジェリアのハイライフの二枚組アンソロジー『ハイライフ・オン・ザ・ムーヴ』だけどね。

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