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2015/10/27

ジャズとロックは同じような音楽だ

Vanew77

 

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ジャズ・ファンもロック・ファンも、「ジャズとロックは全然違う音楽だ」って言うんだけど、僕に言わせれば、どっちも同じような音楽だ。僕もジャズのレコードばかり買っていた頃は、ロックも多少聴いてはいたものの、やはりジャズとロックその他の英米音楽はかなり違うよねと思っていた。

 

 

その頃はあまり深く考えず、また実際の音源で確かめることもせず、ただ書物等で読む「ジャズは、アメリカ南部において、ヨーロッパ的要素とアフリカ的要素との融合によって誕生した」というのをナイーヴに信じていたし、ロックはブルーズ、ブギウギ、リズム&ブルーズなどの黒人音楽を土台に成立したものと思っていた。

 

 

ジャズにおけるアフリカ的要素とは、すなわちリズムのシンコペイションのことをみんな言っていたと思うんだけど、ジャズのような比較的平板でシンプルなリズムは、アフリカ由来ではないように思う。ジャズのリズムが平板でシンプルとか言うと、熱心なジャズ・ファンはみんな怒り出すだろうと思うけど。

 

 

20代半ばでアフロ・ポップに出逢い、その後大衆音楽も伝統音楽もアフリカものをたくさん聴いてみた率直な感想としては、アフリカ音楽(と一概に括るのもおかしいんだけど)に聴けるリズムは、もっと複雑でポリリズミック。ジャズのようなシンプルな2ビートや4ビートは、かなり少ないんだよねえ。

 

 

ジャズがアフリカ音楽的なポリリズムを使うようになったのは、もっと時代が下って1970年代以後のジャズ・ファンクが盛んになってからだろう。マイルス・デイヴィスだって、1969/70年頃の音楽は、まだそんなに複雑なリズムではない。マイルスの場合は72年の『オン・ザ・コーナー』からだ。

 

 

誕生期から1960年代末までのジャズの殆どは、かなりシンプリファイされた平板な(と今の僕の耳には聞える)リズムであって、それにアフリカ的リズムの要素を見出すことは、僕には難しい。60年代のトニー・ウィリアムズとかエルヴィン・ジョーンズとか、凄いドラマーだけど、まあ普通のジャズだ。

 

 

だから、今ではジャズのリズム、というかリズム含め全ての要素は、ヨーロッパ由来の白人ルーツだったんだろうと思っている。ブログでは初めて書くけれど、ジャズは元々19世紀の(ヨーロッパ起源の)管楽器アンサンブル、すなわちブラス・バンドが起源となって変化していったのであって、完全に白人由来。

 

 

アイリッシュ・ミュージックをいろいろ聴くようになると、そこにあるリールなどのダンス・ミュージックのリズムが、ジャズのリズムにかなり酷似していることに気が付いた。リールは全部2ビートか4ビート。ご存知の通り、アイルランド移民がある時期アメリカに大量に流入したので、その文化はいろいろと継承されている。

 

 

アイルランドのダンス・ミュージック以外にも、19世紀後半にヨーロッパ大陸で流行したダンス・ミュージックであるポルカも、速い2ビート系のリズムが多く、こういうのもおそらくアイルランド文化とともに新大陸に流入して、ジャズ発生に寄与したに違いない。ポルカには管楽器使用のものも多いしね。

 

 

(ジャズではなく)ロックでは、アイリッシュ・ミュージックやポルカなどの欧州白人音楽やマウンテン・ミュージックなどが、重要な音楽的起源であるという意見が最近かなり増えているというか、定説になりつつあるかも。僕がこういう意見に初めて触れたのは、中村とうようさん編纂の1996年『ロックへの道』CDでだった。

 

 

従来のロック起源観というのは、ブルーズ、ブギウギ、リズム&ブルーズといったブラック・ミュージックを土台にして成立したものというものが支配的で、当のロック・ミュージシャン自身もそう発言しているし、実際ロックには、12小節3コードのブルーズ形式の曲もかなり多いし。ジャズにも多いけど。

 

 

実際ロック界のファースト・ジャイアントであろうエルヴィス・プレスリーのレパートリーは、ブルーズ・ナンバーばっかり。エルヴィスが出現した時、リズム&ブルーズを(黒人風に)歌える白人歌手が出てくれば大人気になるはずという声のなかで出てきたブラック・フィーリングを湛えた白人シンガーだった。

 

 

とはいえ、例えば今ではエルヴィスの全録音のなかで一番魅力的と(おそらく多くの人が)思っているメンフィスのサン・レーベル時代の音源を聴くと、ブルーズなどの黒人音楽ばかりではなく、ヒルビリーなどの白人音楽もかなり色濃く反映されているというのは、誰だって分るはずだし、そこが魅力的だ。

 

 

まあそれでもやはり、ロックのベースはブルーズ等黒人音楽という考えが圧倒的に支配していたはずだ。中村とうようさんの『ロックへの道』は、それを根底から覆す目から鱗の一枚だった。あのCDの一曲目はマイクル・コールマンというアイリッシュ・フィドラーの音源で、それ以後も主に白人音楽が続く。

 

 

あのCDを編んだとうようさんの主旨というのは、ロックは1950年代に出現したものというより、それ以前の「ジャズ時代」から既に、活気のあるビートに乗って力一杯歌うパワフルでポジティヴな音楽は、庶民の音楽の中にたくさん存在していて、そういうものがロックを産む底流にあったというものだ。

 

 

その主旨のもと、CDの最後に収録されている1954年ビル・ヘイリー「ロック・アラウンド・ザ・クロック」で見事に華開く終着点に辿り着くまで、白人・黒人の区別なく、54年までの実に様々なアメリカ大衆音楽の音源が並べられている。マウンテン・ミュージック等も収録されている。

 

 

ロック・ビートの直系の祖先はブギウギかもしれないが、白人音楽でも七曲目に収録されているハリー・リーサー楽団の「ロック・アンド・ロール」というタイトルの曲があって、1934年の録音なんだけど、このセックスの暗喩である言葉が、身体のリズム感覚を表現するものとして、既に存在した。

 

 

元々この1934年の曲は、ティン・パン・アリーのソングライターが書いて、ボズウェル・シスターズが初演の曲。このCDには、もう一曲、同じ「ロック・アンド・ロール」というタイトルの49年ドールズ・ディキンズの録音も入っているし、その他ロックという言葉が入る曲がいろいろ収録されている。

 

 

「ロック+ロール」というワンセットのフレーズが曲名(の一部)になっているものが、1950年代以前からたくさんあって、それらはどれも快活で強いビート感覚を伴った大衆音楽。しかもそれは白人音楽・黒人音楽の垣根を越えて存在している。そう見てくると、ロック起源観も変ってくるね。

 

 

セックスの暗喩である身体運動を表す言葉が音楽のジャンル名になったというのは、ジャズだってそうなのだ。ジャズという言葉だって、元々はセックスのこと。だから、この名称を嫌う人は結構いた。ロックという言葉を忌嫌うロック・ミュージシャンやロック・リスナーがいるのかどうかは知らないが。

 

 

つまりジャズとロックは、ジャンル名の起源も元々同じようなものだし、音楽的内実のルーツを見ても、アイルランドやヨーロッパ大陸の白人音楽を大きなベースとして成立しているし、しかも20世紀前半のジャズ時代から既にロック的な萌芽がかなり見られるし、2/4/8拍子系といったリズムの根幹も同じ。

 

 

というわけで、最初に戻るけど、ジャズもロックもだいたい同じような音楽なんじゃないかという僕の意見になってしまうわけなんだ。まあ世界中のポピュラー・ミュージックをたくさん聴くようになってからは、特にそういう考えが僕の中では強くなっている。同じアメリカ音楽じゃないかと思ってしまう。

 

 

こういう僕の今日の発言、ジャズしか聴かないとかロックしか聴かないとか、あるいはそれらのルーツについては無関心で、現在存在する音楽が聴ければそれで満足という方々には、絶対に納得してはいただけないだろうものだね。でも様々に探っていると、いろんなことが芋蔓式に繋がっていて、面白いんだ。

 

 

それにしても、ロックの方は、中村とうようさんが『ロックへの道』を編んでくれたから大いに助かっているけど、ジャズの方は『ジャズへの道』的なCDってないよねえ。ジャズ誕生以前の19世紀の音源というものが、当然ながら殆ど存在しないわけだから、そういうアンソロジーは不可能だ。だけど、誰かまとまった文章にしてくれると有難いんだけどなあ。

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