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2015/10/15

ブルーズ三大キングで一番好きだったアルバート・キング

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大学生の頃に買ったブルーズマンで、一番好きだったのがアルバート・キング。といっても、その頃は『ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン』の一枚しか持っていなかったけど、これが最高だった。35分程度だけど、昔のLPはこんなもんだった。今は新譜でも平気で60分とか70分のとかがあるけど。

 

 

大学生の頃から、「ブルーズ界の三大キング」というのがいるのだということだけは一応知識として持っていて、そのうち、B.B.キングは『ライヴ・アット・ザ・リーガル』が名盤としてあがっているので、買って聴いてみたら凄くいいので大ファンになって、特にA面二曲目からのスロー三曲メドレーが最高だった。他にも何枚かレコードを買って聴いていた。

 

 

もっとも、僕が買っていたのは、その1965年の『ライヴ・アット・ザ・リーガル』以外は、全部70年代のアルバムで、『ザ・ジャングル』など、50年代から60年代初頭録音のクラウン/ケント時代が最高だと言われているということは、当時は全く知らなかった。

 

 

また、フレディ・キングについては、名前しか知らず、レコードは一枚も買っていなかったのはなぜだったんだろう?僕がフレディ・キングを聴くようになったのは、CD時代になってからのことだ。エリック・クラプトンが、影響源の一つとしてフレディ・キングの名前を出していたことを知っていただけ。

 

 

そしてアルバート・キングは、なぜか『ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン』だけ買って愛聴していたのだった。これ、どうして買ったんだろうなあ?B.B. キングを買ってから、その後初めて三大キングの名前を知ったんだったから、なんとなく興味を持ってレコード屋で探してみただけなんだろう。

 

 

ただ、あのアルバムには、店頭で見ると「ザ・ヴェリー・ソート・オヴ・ユー」があって、これ、ジャズ歌手がよく歌う古いポップ・スタンダードで、ビリー・ホリデイやフランク・シナトラやナット・キング・コールなどのヴァージョンで馴染のある曲名。それらと同じ曲なのかどうかは、聴くまで確信が持てなかったけど。

 

 

だって、「ザ・ヴェリー・ソート・オヴ・ユー」はブルーズ曲でもなんでもない普通のバラードで、ジャズ歌手やジャズ系のポップ歌手が歌うのなら分るけど、ブルーズ歌手がこれを取りあげるというのは、当時の僕はちょっと想像できなかったんだなあ。だから買って聴いてみるまで半信半疑だったのだ。

 

 

また、クリームの『ホイールズ・オヴ・ファイア』に「ボーン・アンダー・ザ・バッド・サイン」が入っていて、この二枚組レコードは僕が買ったのではなく、ロック好きの弟が買ってきたものを僕も聴いていたんだけど、それでこの曲は知っていたので、それもあのアルバムを買った理由だったはずだ。

 

 

またあのアルバムには「カンザス・シティ」もあって、ビートルズ(『ビートルズ・フォー・セール』)のヴァージョンとか、それも自分でレコードを買ったわけじゃないけど知っていて、あるいはジェイムズ・ブラウンの1968年アポロ・ライヴにも入っていて、それは自分でレコードを買って知っていた。

 

 

そういうわけで三曲は聴く前から知っている曲があったことも、アルバート・キングの『ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン』を買った大きな理由だったんだろうね。「クロスカット・ソー」をクラプトンが1983年の『マニー・アンド・シガレッツ』でカヴァーするけど、これはそっちの方を後で知った。

 

 

いざ買って聴いてみると、もう一曲、六曲目の「ザ・ハンター」も聴き憶えがあった。というのも、レッド・ツェッペリンがファースト・アルバムのラスト「ハウ・メニー・モア・タイムズ」の中で、これをやっているのだった。全然どこにも書いてはいないんだけど(このバンドはそんなのばっかりだね、今からでも遅くないからなんとかしてくれ、ジミー・ペイジさん)。

 

 

さらにもう一曲、どこかで聴いたようなメロディがあって、それは10曲目の「アズ・ティアーズ・ゴー・パッシング・バイ」。でもそれがなんなのかしばらく分らなかったんだけど、よくよく考えるとこの歌のメロディが、デレク&ザ・ドミノスの「レイラ」冒頭のギター・リフによく似ていた。クラプトンがここから借用したと認めていることを、後になって知った。

 

 

そんなわけで、聴いてみたら同曲と分ったポップ・スタンダードの「ザ・ヴェリー・ソート・オヴ・ユー」以外は、多くの曲がブルーズ系のロック・ミュージシャンにカヴァーされたり借用されたりしている、アルバート・キングの『ボーン・アンダー・ザ・バッド・サイン』。アルバム自体も大好きになった。

 

 

音がくぐもったようなというかモコモコしているというか、アルバート・キングのヴォーカルがそもそもそんな明瞭な歌い方じゃないし、声量も小さくて、これは録音に失敗しているんじゃないの?とすら思ったものだった。彼の弾くギターのサウンドもこもっているし。でも今CDで聴直すとそうでもないから、当時のこの印象はなんだったんだろう?

 

 

だから最初の頃は音質だけにはちょっと我慢しながら聴いていたけど、何度も聴くうちに、ヴォーカルもギターもバックバンドも、どんどんヤミツキになってくる魅力があったのだ。特にシングル・トーンしか弾かないギターの、チョーキングを多用するプレイが大好きで、ロック・ギタリストが影響を受けたのも分る。

 

 

大学生の頃は、あまり聴いてはいなかったブルーズ・ギタリストの中では、B.B.キングと並び、いやそれ以上にアルバート・キングのギターが大好きになった。ヴォーカルも凄いBBに比べたら、アルバートの方のヴォーカルは、なんというか、味があるとしか言いようがないけど。

 

 

それでも「アイ・オールモスト・ロスト・マイ・マインド」などは、曲のメロディと歌詞の良さと、フルートが入っているいうアレンジの良さも手伝って、アルバート・キングのヴォーカルもなかなかいいんじゃないかと思える。また名唱の多いスタンダードの「ザ・ヴェリー・ソート・オヴ・ユー」もいいね。

 

 

スタンダード曲だから数多くの名唱ヴァージョンが既にあって、アルバート・キングも当然聴いていたはずだから、それでも敢てこれを取りあげて歌ったというだけあって、「ザ・ヴェリー・ソート・オヴ・ユー」での歌は、アルバム中で一番いいように思う。1978年のアラン・トゥーサン・プロデュース作『ニュー・オーリンズ・ヒート』でも再演しているから、お気に入りなんだろう。

 

 

この1967年のアルバム、買った当初は全く分ってなかったことだけど、スタックス・レーベルの作品だ。スタックス最大のスター、オーティス・レディングのレコードは少しだけ持っていたけど、このレーベルのことは全く意識していなかった。スタックスに強い興味を持つのはCD時代になってからだ。

 

 

ただ、『ボーン・アンダー・ザ・バッド・サイン』には、バック・ミュージシャンの名前が書いてあったように思う。ブッカー・T&ザ・MGズとかメンフィス・ホーンズとかいう名前は一応分ってはいたし、個々のメンバー名も、スティーヴ・クロッパーとかドナルド・ダック・ダンなど、名前だけ見ていた。

 

 

そして、スタックス・サウンドということは全く分らずに、ただなんかカッコイイバンドだなと思いながら聴いていたのだった。タイトなリズムもホーン・セクションのサウンドも大好きだった。CD時代になってスタックスに強い興味を持ち始めると、これがサザン・ソウルの名バンドだということも分った。

 

 

今では全244曲のCD九枚組『ザ・コンプリート・スタックス/ヴォルト・シングルズ』なども愛聴している僕。これにはアルバート・キングも二曲だけ入っている。こういうのを通して聴くと、スタックスのリズム・セクションの素晴しさを強く実感する。この九枚組は面白いものばかりで、聴き飽きない。

 

 

それでもアルバート・キングの『ボーン・アンダー・ザ・バンド・サイン』では、米南部サウンドが大好きな僕が今聴いても、あまり南部臭がしないような気がする。サザン・ソウル歌手のレコーディングではないというのが理由なんだろう。でも熟練の腕前で、スタンダード曲も見事にこなしているね。

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