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2015/10/25

オリエンタルな詩情と哀感〜マリア・シモグルー・アンサンブル

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当ブログでは、マイルス・デイヴィスか古いジャズの話ばかりの僕が、今夜は珍しく今年の新作の話。とはいえやっぱり、中身の音楽のスタイルは古いものではあるけれど。数日前にエル・スールさんから届いたばかりのMaría Simoglou Ensembleというバンドの『Minóre Manés』。

 

 

このバンド、マリア・シモグルー・アンサンブルという読み方でいいのかよく分らないけれど、とにかく現代ギリシア人による古いスミルナ派レンベーティカ音楽のアルバムで、副題に『Rebétika songs of Smyrna』とあるので、もうそれだけでだいたいの内容は想像できてしまう。

 

 

なお、みなさんご存知の通り、「レンベーティカ(rembetika、rembetiko)」も「レベーティカ(rebetika、rebetiko)」も、ギリシア語からラテン文字アルファベットに転写する際に発生するだけの違いで、同じもの。rebetiko表記が多いみたいだけど。

 

 

コレ→ http://elsurrecords.com/2015/07/30/maria-simoglou-ensemble-minore-manes-rebetika-songs-of-smyrna/ もうこれ、一度聴いた瞬間に、傑作に間違いないと惚れ込んでしまい、まさにこういうのこそ今の僕にとって最高の音楽なので、毎日二回・三回と繰返して聴いているんだよねえ。まだ数日しか経ってないけど、もう完全にこのアルバムの虜なのだ。

 

 

ギリシアのスミルナ派レンベーティカが、元々オスマン帝国時代のアナトリアで華開いた音楽で、トルコ音楽やアラブ音楽の趣が強いことは、以前も書いたけど(https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-2686.html)、この『ミノーレ・マネス』は、もうそれすら忘れてしまうほど、完全にトルコ古典歌謡なのだ。

 

 

上記記事の冒頭では、TAKIMというギリシア人バンドがやるトルコ古典音楽『TAKIM』について触れたんだけど、数日前に届いて聴いたマリア・シモグルー・アンサンブルは、それをさらに一歩進めたような完全なるトルコ古典歌謡で、ギリシア語で歌っていなかったら、ギリシア音楽だとは気付かないほど。

 

 

このバンド、六人編成のようで、中心になっている女性ヴォーカリストが、バンド名にもなっているマリア・シモグルー。彼女、僕は初耳の人だけど、調べてみたら、地中海アンサンブル・バンドらしい、オネイラ(ONEIRA)のメンバーとして活動しているそうだ。そのバンドも全くの初耳だからなあ。

 

 

マリア・シモグルーのヴォーカル以外には、リラ、ネイ、カノンナキ、ラフタ、パーカッション程度で、全ての曲が少人数の完全アクースティック編成で演奏されているのも、最近のギリシア〜トルコ古典歌謡についての僕の趣味と完全に一致する。CD付属のブックレットは英語でも書いてあるので、助かる。

 

 

ブックレットには、各曲ごとにその曲が作られた年代も書いてあって、全部1930年代になっているから、これはスミルナ派レンベーティカにしては、かなり新しい部類に入るだろう。ギリシアとトルコが既に完全に分離された後のことだ。それでも、ギリシアの港町等で、スミルナ派も生きてはいた。

 

 

年代だけでなく、作詞・作曲者の名前も書かれてあるのだが、まだまだ入門したばかりの初心者である僕には、知らない名前ばかりだ。でもラテン文字アルファベットによる綴りだけからも、全てギリシア人だろうという判断はできる。ということは1930年代にトルコ風な曲を書く人がまだいたんだなあ。

 

 

またブックレットには、ギリシア語の曲名と歌詞に、仏訳・英訳も併記されていて、英訳はともかく仏訳は、主役のヴォーカリスト、マリア・シモグルーが現在マルセイユ在住で、このアルバムもフランスのレーベルBUDAから出ていることによるものだろう。アルバムの録音は全部アテネで行われたものだけど。

 

 

このアルバム、全部で13曲なんだけど、13曲目が終った後の長いポーズのあとに隠しトラックが仕込まれていて、SP音源のようなノイズ混じりのかなり古くさい録音仕立になっているトルコ歌謡で、ちょっと面白い趣向。ピアノとヴァイオリンだけの伴奏で、しかもSPの音だけど、歌声はマリアのものだ。

 

 

中身は書いたようにスミルナ派レンベーティカというよりも、完全にトルコ古典歌謡そのものだとしか僕の耳には聞えない。楽器編成やその音のテクスチャー、女性ヴォーカル(多少男性も歌う)の質感など、全てそうだ。去年出て今でも愛聴盤のトルコ古典歌謡二枚組『Girizgâh』の音楽に似ている。

 

 

『Girizgâh』に似ているというより、僕なんかのヘボ耳にはほぼソックリというかそのまんまだとしか聞えないんだよね。実際、最初に『ミノーレ・マネス』を聴いた直後に『Girizgâh』を聴き返したくなって、そうしたくらいなのだ。去年のこの二枚組が好きになった方には、大推薦。

 

 

秀逸なジャケット・デザインが中身の音楽もよく表現していた『Girizgâh』とは違って、この『ミノーレ・マネス』のアルバム・ジャケットは、現代風で若者風なポップなイラスト(上掲)。だけど中身の音楽はこれ以上ないほど激渋。

 

 

二つとも非常に短いけれど、エル・スールさんが貼っていた、YouTubeに上がっているティーザーがある。聴いてもらえば、僕の言っている意味が少しお分りいただけるのではないだろうか。

 

 

 

 

またアルバムから12曲目だけがフルで上がっていたので、これも貼っておこう。ちょっと聴いてほしい。もっといい感じの曲がアルバムにはあるし、そういうのが上がっているといいんだけど、探してもないみたいだ。自分で上げるしかないかな。

 

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