よかった頃のベニー・グッドマン
1958年のベニー・グッドマン楽団の演奏動画をツイートしていた人がいたけど、僕は今はもちろん昔も、39年以後のグッドマン楽団は殆ど聴いたことがない(チャーリー・クリスチャンが入っているスモール・コンボは例外)。エディ・ソーター・アレンジの奴くらいじゃないかなあ、ちゃんと聴いたのは。
チャーリー・クリスチャン在籍時のベニー・グッドマン・コンボの演奏は、昔から大好きで、でもアナログ時代はちゃんとまとまった形ではリリースされておらず、散発的に手に入るもので、辛うじて喉の渇きを癒していた程度。CDでは、2002年に『ザ・ジーニアス・オヴ・エレクトリック・ギター』という四枚組に集大成されて、聴きやすくなった。これは愛聴盤。
ベニー・グッドマン・ファンからも、チャーリー・クリスチャン・ファンからも、どうもこのコンボ録音は、若干看過されてるような気がする。個人的には、チャーリー・クリスチャンでは、例のミントンハウスでのセッションものよりも、グッドマン・コンボでの録音の方が好きなんだけどなあ。クリスチャンのギターについて、グッドマンが、これがビバップという奴なら、ビバップも悪くないなと言ったらしい。
なお、1939〜41年に在籍したチャーリー・クリスチャンは、テディ・ウィルスン、ライオネル・ハンプトンに続いて、ベニー・グッドマンが雇った三人目の黒人ジャズマン。ブラック・ミュージック・ファンで、グッドマンが好きで聴く人は少ないと思うけど、彼は自分のバンドで黒人を雇った、あの時代では稀(史上四人目)な白人バンド・リーダーなのだ。この事実だけは、憶えておいてほしい。このため、グッドマンは白人客から罵られることもあったらしい。
クリスチャン入りのコンボ録音以外の、ベニー・グッドマン楽団の演奏で、今でもごくたまに取りだして聴くのは、例の1938年のカーネギー・ホール・コンサートだけ。あれはいい。でもあれには、グッドマン楽団以外にも、エリントン楽団やベイシー楽団から、大勢の黒人ジャズマンが参加しているけどね。
あっ、チャーリー・クリスチャンとのグッドマン名義のコンボ録音以外にも、例のビリー・ホリデイのコロンビア録音に参加しているものは大好きで、今でも結構聴く。なかでも特に「ミス・ブラウン・トゥ・ユー」の歌の前に出る、イントロのクラリネットは絶品だね。
「Miss Brown To You」https://www.youtube.com/watch?v=HfgIrFPaNEI
最高にチャーミングだよね、このイントロのクラリネット。油井正一さんがこれにゾッコンで、イントロばっかり繰返して聴いていたというのも納得。自分名義の録音全てを含めても、グッドマン生涯最高のソロだと思う。
ベニー・グッドマンは、テディ・ウィルスンの一連のブランズウィック録音にも参加してて、そっちでも結構いいソロを吹いているんだよなあ。テディ・ウィルスン名義のブランズウィック録音と、ビリー・ホリデイ名義のコロンビア録音は、実質的には同じセッション。名義を変えて発売しただけ。
その証拠に、「君微笑めば(When You’re Smiling)」なんかも、ビリー・ホリデイ名義とテディ・ウィルスン名義の両方で発売されたもんね。テイクが違うだけで、同じ日の同じメンツによる同じ録音。ビリー・ホリデイの歌もほぼ同じ。レスター・ヤングのテナー・ソロのフレージングが違うくらい。
こうしたビリー・ホリデイやテディ・ウィルスンの録音にベニー・グッドマンが参加したのは、これをプロデュースしたジョン・ハモンドの肝いりというか命令だったらしい。ジョン・ハモンドはベニー・グッドマンの恩人だからね。その後、グッドマンはハモンドの姉アリスと結婚してるし(1942年)。
それにしても、ビリー・ホリデイ名義のコロンビア録音は、CDでも10枚組の全集が出てるのに、テディ・ウィルスン名義のブランズウィック録音の方は、一度もマトモにCDリイシューされていない。本家コロンビアは出す気がないみたいだなあ。仕方がないから、仏Classicsからのリイシューで全部持ってるけど、なんとかならないのかなあ?
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