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2015/10/19

ジャズ歌手アリサ・フランクリン

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僕はあまりいいアリサ・フランクリン・リスナーとは言えない。だって、ソウル歌手として成功したアトランティック時代より、その前の主にジャズを歌っていたコロンビア時代の方が断然好きでよく聴くくらいだからなあ。それに対して、アリサの全盛期アトランティック時代のアルバムは五・六枚しか持っていない。

 

 

それなのに、それ以前のコロンビア時代のアルバムは、CDでは全部持っている。こんなアリサ・リスナーはいないだろう。コロンビア時代のアリサに関しては、2011年にレガシーから12枚組の全集『テイク・ア・ルック:コンプリート・オン・コロンビア』が出て、揃えやすかったということもある。

 

 

僕の知る限りでは、1967〜79年のアトランティック時代に関しては、そういう全集のような形ではリリースされていないと思うのだが、僕が知らないだけだろうか?そういうものがもし出れば、それだってもちろん買うだろうけどね。是非リリースしてほしいという気持があるんだけど。

 

 

1967年までのコロンビア時代のアリサは、主にジャズやブルーズを歌っている。前述の2011年のCD全集が出るまでは、僕は『ジャズ・トゥ・ソウル』というCD二枚組で聴いていた。「スカイラーク」「縁は異なもの」「アンフォーゲッタブル」「ラヴ・フォー・セール」など、スタンダード曲も多い。

 

 

恥ずかしながら僕がアリサを聴始めたのはかなり遅かったので、アナログ盤では一つも聴いたことがなく、だから、コロンビア時代でも、そのCD二枚組『ジャズ・トゥ・ソウル』でしか知らなかった。でもこれで充分な感じだった。僕みたいな根っからのジャズ・ファンには、断然こっちの方が好みなのだ。

 

 

そのコロンビア時代のセレクト集『ジャズ・トゥ・ソウル』を買う前に、名盤としていろんなところで名前があがるアトランティック時代の、例えば『貴方だけを愛して』とか『アット・フィルモア・ウェスト』とかは、一応買って聴きはしたものの、どうもあんまりピンと来ていなかったのだった。不思議だ。

 

 

『ジャズ・トゥ・ソウル』は、単にジャズという言葉がタイトルに入っているのと、店頭で曲目を見たらジャズ・スタンダードが多いというのと、ジャケット写真がなかなかいいという、それだけの理由だけで買ってみたものだ。まだコロンビア時代のことは分っていなかった。でも聴いてみたら、これがよかった。

 

 

ちょっと普通のジャズ歌手とは声の張り方が違うような感じで、純粋なジャス・シンガーより、大好きなブルーズ寄りのダイナ・ワシントンによく似ているような印象を受けたのだった。その後知ったことだったが、アリサはダイナをかなり敬愛していたらしく、コロンビア時代にはダイナ曲集も作っている。

 

 

ダイナ・ワシントンはベシー・スミスを敬愛していて、ベシー曲集のアルバムもあるけど、実はそれは僕はあまり好きではなく、評価もできない感じなのに対し、アリサのダイナ曲集『アンフォーゲッタブル』(これもアルバム丸ごと聴いたのは、前述の全集が初)は、かなり出来がいいように思うんだなあ。

 

 

ダイナ・ワシントン曲集といっても、ブルーズ・ナンバーはあまりなくて、ジャズ・ナンバーがメインだ。キーノートからシングルで出たダイナの代表的ブルーズ曲「イーヴル・ギャル・ブルーズ」もやっていて、ブルーズ・ハープなども入っているアレンジだけど、これにはあんまり感心しないんだよなあ。

 

 

どう聴いても「アンフォーゲッタブル」とか「縁は異なもの」などのジャズ・ナンバーの方が、ストリングスも入る伴奏のアレンジも、アリサの歌も、はるかに出来がいい。そもそも、ブルーズ・ナンバーにストリングスが入るのは似合わないだろう。ジャズ曲でのアリサの声の張り方はダイナによく似ている。

 

 

コロンビアからデビューする前に、一枚ゴスペルを歌ったアルバムが1956年にあるみたいだけど、僕はそれはいまだに聴いたことがない。アリサは父親が牧師なので、小さい頃から教会でゴスペルを歌っていたらしいが、僕が聴いているアリサのゴスペルは、例の1972年の『アメイジング・グレイス』だけ。

 

 

その二枚組『アメイジング・グレイス』は、どっちかというとソウルよりゴスペルが好きな僕は、大好きなライヴ・アルバムなのだ。でも最初に聴いた時は、歌の部分が少ないというか全部ではないので、なかなか歌が出てこないのに、ややイライラしたりしたけど、教会でのゴスペルの現場とはこういうものだろう。

 

 

それはともかく、いわば「幻の」1956年のゴスペル・デビュー・アルバムを除くと、コロンビアから1961年にアリサがデビューした第一作目『アリサ』は、副題に『ウィズ・レイ・ブライアント・コンボ』とあるように、ピアニストのレイ・ブライアントが伴奏を務めている。レイは歌伴も上手い人だ。

 

 

そのデビュー作『アリサ』などは、アルバム丸ごと全部完全にジャズ・アルバムだね。以前も何度か書いているように、レイ・ブライアントはジャズ・ピアニストにして、ブルーズがかなり上手い人だから、このアリサのデビュー・アルバムでもブルージーな持味を存分に発揮していて、聴いていて気持がいい。

 

 

1965年の『ヤー!!!:イン・パースン・ウィズ・ハー・カルテット』は、タイトルに「イン・パースン」とあるし、音を聴いても観客の拍手が聞えるから、ライヴ・アルバムなんだろうと、2011年の全集で買って以来ずっとそう思ってきたけど、調べたら、後から拍手をかぶせただけのスタジオ作だ。

 

 

しかし、バンドの演奏などを聴いても、クラブかどこかでの生演奏っぽいスポンティニアスな雰囲気だし、それに乗って歌うアリサの歌い方もそんな感じだし、これが疑似ライヴだったとは、やや意外な感じがする。この手の疑似ライヴ・アルバムは、ジャズなどでも昔はたくさんあったけど。

 

 

ジャズ歌手としてのコロンビア時代と、ソウル歌手としてのアトランティック時代を聴き比べると、まあ曲が違うから、それに応じて多少の違いはありはするものの、アリサ自身の歌い方は、そんなに変っていないようにも思う。コロンビア時代から、ジャズ歌手にしては、声の張り方が異質な感じがするしね。

 

 

アトランティック第一作の『貴方だけを愛して』のタイトル曲を聴いても、別にコロンビア時代の歌唱法との本質的な違いは、僕にはあまり感じられない。熱心なアリサ・ファン以外は、ソウル歌手として成功する前のコロンビア時代なんて軽視しているだろうから、このことはどうも気付かれてない気がする。

 

 

書いたように、牧師の家に育ったので元々はゴスペルを歌っていたアリサだから、歌唱法はゴスペルの影響を強く受けていて、それはコロンビア時代でも実は一貫しているのが、よく聴くと分るのだ。声の張り方が、ジャズ歌手としては異質という僕が言う理由だ。普通のジャズ歌手はもっとソフトだ。

 

 

だから、ジャズ好きの僕が大好きなアリサのコロンビア時代のジャズ・アルバムは、ソウル・ファンはもちろん、ジャズ・ファンだって、イマイチ好きになれない人が多いように思う。というか普通のジャズ・ファンは、アリサなんて聴かないだろう。ジャズ歌手時代があったことを知っている人が少ないかも。僕だって割と最近まで知らなかったんだから、えらそうなことは言えない。

 

 

そう考えると、コロンビア時代のアリサを、一体どういう層が好んで聴いているのか、やや分りにくいんだけど、それでも2011年にレガシーが全集をリリースしたということは、それなりに需要があるってことなんだろう。もっとずっと需要が大きいはずのアトランティック時代も、早く全集を出せばいいのに。

 

 

まあそんな具合で、コロンビア時代が好きでよく聴く、全くダメなアリサ・リスナーの僕だけど、それでも時々、例えば1971年の『アット・フィルモア・ウェスト』などを聴くと、やっぱりこういうのが最高だよなあとは思ってしまう。ライヴ盤好きということもあるだろうけどさ。カッコイイよねえ。

 

 

もう一つ案外好きでよく聴くのが、2007年にリリースされた『レア&アンリリースト・レコーディングズ』二枚組。タイトル通りアトランティック時代初期の未発表曲集なんだけど、ビートルズの『アンソロジー』などとは違って、残り物の感じが全然しない。未発表集にして初心者にも推薦できる傑作集だね。

 

 

などとこの文章を書き終って、ボンヤリとアマゾンを眺めていたら、なんと来たる11月6日に、アトランティック時代のアリサ全集ボックスがリリースされる模様。これは是非欲しいが、一万円以上もするなあ。当然ポチってしまいましたけど。http://www.amazon.co.jp/dp/B014QHQRW2/

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