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2015/10/21

「メス・アラウンド」とブギウギ・ピアノ

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ノラ・リー・キングが歌うピート・ブラウン・セクステットの「キャノンボール」(1942年)の演奏パターンは、ドクター・ジョン『ガンボ』の「メス・アラウンド」で憶えた。ドクター・ジョン『ガンボ』の「メス・アラウンド」はコレ。

 

 

 

「メス・アラウンド」という曲は、アトランティックのアーメット・アーティガンが作曲(ということになっている)して、レイ・チャールズが1953年に録音したR&Bクラシック。https://www.youtube.com/watch?v=iNe5npkid-s  ニューオーリンズでは、プロフェッサー・ロングヘアもやっている。

 

 

この「メス・アラウンド」のパターンは、誰がどう聴いても、ブギウギ・ピアニスト、カウ・カウ・ダヴェンポートの1928年録音「カウ・カウ・ブルーズ」のパターンだね→ https://www.youtube.com/watch?v=-1G9eZcsS14 ドクター・ジョンも『ガンボ』の解説で、そう言っているしね。

 

 

ドクター・ジョンが「メス・アラウンド」のルーツについて、ピアノを弾きながら解説しているヴィデオかなにかがあった気がするけど、なんだったのか忘れちゃったし、今はもうそれを持っていない。だけどYouTubeで探してみると、彼は結構いろいろとこの曲を弾いているねえ。しかも喋りながら。

 

 

ドクター・ジョンもプロフェッサー・ロングヘアも、僕は大学生の頃、同時期にLP買って聴いてたんだけど、「メス・アラウンド」については、『ガンボ』でしか知らなくて、フェスがやったのは、『ロックンロール・ガンボ』を買って初めて知ったのだった。レイ・チャールズのも知らなかった。

 

 

ブギウギ・ピアノも、大学生の頃に一枚物LPアンソロジーを買って聴いていたんだけど、「カウ・カウ・ブルーズ」が入っていたかどうかは、全く記憶がない。そもそもそのLPのタイトルすら憶えていないし、どんなブギウギ・ピアニストが入っていたのかも分らないから、あまり聴かなかったんだろう。

 

 

Googleで画像検索したら出てきた!これだ↓

 

 

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しかし、ホント、どんな内容だったのかはサッパリ憶えていないんだよなあ。何回か聴きはしたけど、あまりピンと来なかったんだろうなあ。誰のどんな曲が入っていたのか、知りたいところだ。

 

 

脱線になるけど、僕がブギウギ・ピアニストを強く意識するようになったのは、以前も書いた通り、あの『フロム・スピリチュアルズ・トゥ・スウィング』コンサートのことを知ってからだった。アルフレッド・ライオンじゃないけど、アルバート・アモンズやミード・ルクス・ルイスに興味を持って、少しずつ聴始めたのだった。

 

 

すぐ後に中村とうようさん編纂の『ブラック・ミュージックの伝統』LP上下巻も買って、それにもブギウギ・ピアノが入っていて、しかも他のブラック・ミュージックとの繋がりが分りやすくなっていたから、それで断然面白くなったのだった。ジャンプ〜R&Bの土台にブギ・パターンがあることも知った。

 

 

これからブギウギ・ピアノを知りたい人には、MCAジェムズ・シリーズの一つとして出た、やはりとうようさん編纂・解説の『伝説のブギ・ウギ・ピアノ』(http://www.amazon.co.jp/dp/B0006GAWVK/)が一番いいと思うけど、これも今は中古しかないんだ。「カウ・カウ・ブルーズ」も入っているんだけど。

 

 

アーメット・アーティガンは、レイ・チャールズに「メス・アラウンド」を書いた時、主なインスピレイション源はピート・ジョンスン(ブギウギ・ピアニスト)だったと語っているらしい。ピート・ジョンスンの何を聴いてインスパイアされたのか分らないけど、あのピアノ・パターンは古くからあるものだ。

 

 

録音で残っているのは、上で貼った1928年の「カウ・カウ・ブルーズ」が最初だと思うけど、元々19世紀末に、ラグタイム・ピアノから発展してブギウギ・ピアノが発生した頃から、既に存在したパターンであったことは、おそらく間違いない。多分、ニューオーリンズでも盛んに演奏されていたはず。

 

 

ブギウギ・ピアノというスタイル自体は、今書いたように19世紀末頃か20世紀初めには存在したと思うんだけど、一般に流行り始めるのは、やはり録音が始った1920年代後半からで、その後30年代末にかけて大流行した。その後、ピアノだけでなくギターや、コンボ、ビッグ・バンドなどでも取入れられるようになった。

 

 

多分アーメット・アーティガンも、多くの黒人ブギウギ・ピアノを聴き(元々彼は米黒人音楽マニアでイスタンブル生れのトルコ人)、その中に「カウ・カウ・ブルーズ」で聴ける典型的パターンを知り、直接はどこから知ったのか分らないけど、それに影響されて「メス・アラウンド」を書いたんだろうね。

 

 

という具合なので、最初に書いたピート・ブラウン・セクステットの「キャノンボール」(https://www.youtube.com/watch?v=xxT4ftNQ5FI)で聴ける典型的な演奏パターンも、1942年録音だし、「カウ・カウ・ブルーズ」でも聴ける、多くのブギウギ・ピアノのパターンから派生してきているんだろう。

 

 

1940年代のジャンプ・ブルーズや、その後のR&Bの土台になったのがブギウギのパターンだった(「なんちゃらブギ」という種類の曲名も実に多い)から、42年のピート・ブラウンの演奏に典型的なそれが聴けても、特にどうってことはない。1953年の「メス・アラウンド」もその一つというわけ。

 

 

しかしプロフェッサー・ロングヘアやドクター・ジョンがやる「メス・アラウンド」は、個人的にはレイ・チャールズのオリジナルより面白く感じる。フェスのはインストばかりだけどね。ブギウギのパターンがニューオーリンズのR&Bピアノと実に相性がいい。というかそもそもブギウギ・ルーツなわけだけど。

 

 

ドクター・ジョン『ガンボ』一曲目の「アイコ・アイコ」だって、ブギウギのパターンに、ニューオーリンズらしく3−2クラーベのリズムが合体したみたいな感じだしなあ。フェスだって、多くの曲がそんな具合。「ビッグ・チーフ」だってそうじゃないか。

 

 

 

ニューオーリンズ・クラシック「アイコ・アイコ」のオリジナルはシュガー・ボーイ・クロフォードのコレ→ https://www.youtube.com/watch?v=PgOrIar_qGk ドクター・ジョンのも基本このパターンだけど、あの転がるようなピアノを(フェスの感じを出すように)付けたのは、彼独自のアイデアだね。

 

 

「メス・アラウンド」だって、フェスのやドクター・ジョンのを聴いていると、これはまるでニューオーリンズ・クラシックかと思ってしまうほど、ハマっている。実際、最初の頃は、僕もそう勘違いしていた。というかそれは「勘違い」ではないのかもしれないよねえ、そもそものルーツを考えたら。

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