CDリイシューで聴くようになったサザン・ソウル
前にも書いたことがあるけど、僕は昔からソウル・ミュージック、特にサザン・ソウルをあまり聴いてこなかった音楽リスナーで、積極的に聴始めたのもCD時代になってどんどんリイシューされるようになってから。アナログ盤時代に聴いていたサザン・ソウル歌手は、オーティス・レディングくらいだ。
ジャズも黒人音楽として考えていて、ジャンプやジャイヴの古いものや、1960年代末からのソウル・ジャズやジャズ・ファンクなど、全部真っ黒けなものばかりが好きなんだし、ブルーズだって大学生の頃から大好きでよく聴いてきたのに、どうして黒さの象徴みたいなソウル・ミュージックをあまり聴いていないんだろう?
もっとも、ソウルの一変種みたいなファンク・ミュージックは大好きで、大学生の頃からジェイムズ・ブラウンなどはアナログ盤で愛聴していたし、マイルス・デイヴィスやハービー・ハンコックやジミー・スミスなど、ジャズ畑出身の音楽家のやるファンクも、たまらなく大好き。
しかも、ソウル・ミュージックの大きな屋台骨である黒人ゴスペルも、昔から大好きで、実を言うと、今でもソウルよりゴスペルの方が好きなくらい。そういえば以前書いた大阪在住の熱心なソウル・コレクターの方が、ソウルなど黒人音楽が大好きなのに、なぜかゴスペルが苦手だという人だった。
ソウルのことを分っているとは言えないから、えらそうなことは言わない方がいいんだけど、ゴスペルを聴かないソウル・リスナーって、ちょっともったいないような気がしてしまう。まあ人の嗜好というものは、本当に十人十色だなあ。ソウルの創始者サム・クックはゴスペル出身というだけでなく、多くの歌手がソウルとゴスペルを行き来しているけど。
米国黒人音楽では、僕の場合ソウルはかなり聴き方が足りないけど、他のジャンルはまあまあそれなりに聴いている。しかも書いたようにファンクは大好きで聴きまくっているから、それ以前の普通のというか、デトロイト、フィリー、ノーザン、サザン(ディープ)などのソウルを、イマイチ聴いてこなかった。
ドゥー・ワップをソウルに分類することもあるみたいだけど、それはどうもちょっと違うような気もするなあ。ドゥー・ワップは、僕は大好きでまあまあ聴いている。きっかけはフランク・ザッパだったりしたけど。ザッパは熱心なドゥー・ワップのシングル盤コレクター。彼の音楽にもそれが活かされている。
オーティス・レディングだって、少しだけアナログ盤を聴きはしたものの、あまり好きにもなれず、たくさんレコードを買う気にはなれなかった。CD時代になって、これではイカンと思って、いろいろ他の人のソウル・アルバムも買って聴くんだけど、どうもピンと来ない場合もあった。
生理的なものなのだろうか。暑苦しいというか。もちろん大好きなものもたくさんあるけど。例えば一連のモータウン作品などは、1960年代のヴォーカル・グループも好き。また、スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイなどの、70年代のセルフ・プロデュース作品以前のモータウン作品にも好きなものが結構ある。あまりアクが強くないせい?
同じような傾向で、そんなにアクが強すぎないフィリー・ソウルやノーザン・ソウルは、多少聴くようにはなった。問題はサザン(ディープ)・ソウルだよなあ。サザン・ソウルこそソウル・ミュージックの神髄ともいうべきものだという人もいて、日本にだってファンが多いもんなあ。
アナログ盤ではオーティス・レディングしか聴いていなかったサザン・ソウルも、CDリイシューでは、いろんなアルバムを結構たくさん買って聴いてはいる。特に最近は、シングル盤中心だったサザン・ソウルの世界で、主にシングル盤しか残していない歌手の音源も、結構リイシューされているし。
ゴールドワックス・シングル盤音源全集とかももちろん買って聴いたし、ソウル・ミュージックに関しては全く他人任せのリスナーである僕なんかは、シングル盤まで追掛ける熱意はないから、主に英国のリイシュー・レーベルであるケント/エイスの仕事で、そういうリイシューCDをたくさん買った。
ジェイムズ・カーのゴールドワックス・シングル音源全集とか、数年前に出たばかりのスペンサー・ウィギンズのフェイム録音全集とか、もちろん全部買っている。それらは今ではかなりの愛聴盤。前にも強調したけど、特にスペンサー・ウィギンズのフェイム録音はたまらなく好きなんだ。
男性歌手ではそうなんだけど、女性のソウル歌手では、長年アリサ・フランクリンが一番好きだった。彼女は1967年のアトランティック移籍後すぐにマッスル・ショールズのフェイム・スタジオで録音したのが、名盤として名声を上げたわけだから、一応サザン・ソウルの歌手に入れてもいいんだろうか?
もちろんアリサの歌うサザン・ソウルは最高に胸に沁みてくるんだけど、前にも書いたように、僕は実をいうとアリサに関しては、ソウル歌手になる前の、1961年のデビューから66年までのコロンビア時代が大好きで、そこではジャズやブルーズをたくさん歌っていて、それがとてもチャーミング。
だからまあ、アリサに関しては、サザン・ソウルを歌うアトランティック時代より、ジャズを歌うコロンビア時代の方が好きだというような僕は、あまりいいリスナーとは言えないんだろうなあ。アリサ同様フェイムで録音した女性歌手では、一時期エタ・ジェイムズの『テル・ママ』が好きでよく聴いていた。
そういうのを聴くと、エタもサザン・ソウル歌手なのかと思ってしまうし、現にそう分類してある文章も見掛けるんだけど、エタはどう考えてもソウル歌手ではないような気がするなあ。僕なんかには、エタはどっちかというとブルーズ歌手だなあ。百歩譲ってもR&B歌手だね。
そして、サザン・ソウルに分類されている女性歌手で、僕が今一番気に入っていて愛聴しているのは、実をいうとキャンディ・ステイトンなのだ。もっとも彼女はゴスペルもたくさん歌っているけど、やっぱりなんたってサザン・ソウルを歌ったフェイム録音集が最高だよねえ。1970年代前半のもの。
はっきり言って僕はあまり熱心なキャンディ・ステイトンのリスナーではなかった。長年にわたって、一番有名な『スタンド・バイ・ユア・マン』一枚しか聴いたことがなく、それもその元は南部のカントリー・ナンバーだったタイトル曲がいいなと思っていただけだった。
それがコロッと変ったのが、2011年に出た『エヴィデンス:コンプリート・フェイム・レコーズ・マスターズ』二枚組だった。タイトル通りキャンディのフェイム録音全集ということで、もちろんリリースされて即買ったんだけど、これでまとめて聴いてみて、なんてチャーミングな歌手なんだと惚れ直した。
その『エヴィデンス』二枚組は、それはもう何度も繰返し聴いて、今でもよく聴く愛聴盤なんだよねえ。最大のヒット曲である「スタンド・バイ・ユア・マン」はもちろん入っているし、「ザッツ・ハウ・ストロング・マイ・ラヴ・イズ」といったサザン・ソウル・スタンダードもある。最高なんだよね。
「ザッツ・ハウ・ストロング・マイ・ラヴ・イズ」は、数多くのヴァージョンがあって、オーティス・レディングのが一番有名だろう。僕は、最初に歌ったO.V. ライトの1964年シングル盤(ゴールドワックス)ヴァージョンが一番好き。でも、キャンディ・ステイトンのもなかなか魅力的だよ。
それにしても、キャンディ・ステイトンのサザン・ソウル代表曲「スタンド・バイ・ユア・マン」が、元はカントリー・ナンバーだったり、サザン・ソウルの代表的なスタジオであるフェイムのミュージシャンが全員白人だったり、特に南部における黒人音楽と白人音楽との関係は面白いがあるなあ。
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