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2015/11/01

世界中にあるモーダル・ミュージック

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僕より数歳年上のあるロック・ファンが、大学生の頃にジャズ・ファンから「ジャズにはモード奏法とかいろいろあってさぁ」みたいなことを言われたらしく、それ以来ジャズ(・ファン)にはちょっと引け目を感じているんだと話してくれたことがあった。

 

 

その話を聞いたのは15年くらい前だったから、おかしなことを言うジャズ・ファンがいたもんだと思ったけど、僕もその人のことをあまり笑えない。ジャズのレコードばかり買っていた大学生の頃は、僕も少し似たような考えを持っていたからだ。ジャズはロックなどより上等とまで言わなくても、なんかちょっとした優越感みたいなものに浸っていたことは確かなことなのだ。

 

 

その頃は、モードについても全く分っていなかった。もちろん今でもよく理解しているとは言えないけれど、ちょっとだけ勉強した。モードに基づく音楽作りは、別にモダン・ジャズの専売特許でもなんでもない。ロックにだってモーダルなものはたくさんあるし、そもそもモードとはスケールのことだ。

 

 

スケールによる音作りだと言えば、ブルーズだってスケール・ミュージックだ。ブルーズ・スケールって、だいたいメジャー・スケール(長調)でも短調みたいな響きがするというか、どっちなのか分りにくくなることがあるけど、そもそも長調/短調という区別が西洋和声のものだから、当然だね。

 

 

ジャズにおけるモード奏法を確立したということになっているマイルス・デイヴィスの1959年『カインド・オヴ・ブルー』は、全五曲のうち、モード・ナンバーが二曲、ブルーズ・ナンバーが二曲なのも、今となっては大変分りやすいというか、モード(スケール)のなんたるかを明確に示しているような気がする。

 

 

モード(スケール、旋法)を使った音楽というのは、もちろん世界中にあって、世界の民俗音楽と、それに基づく大衆音楽の世界を見渡すと、コーダルな音楽よりモーダルな音楽の方が支配的なんじゃないだろうか。僕が大好きでよく聴いているアラブ音楽もそうで、それにはマカームという旋法体系がある。

 

 

一概に「アラブ音楽におけるマカーム」と言っても、地域によってかなり違うようだ。東アラブ音楽と西アラブ音楽(アラブ・アンダルース音楽)では、旋法体系が異なるし、またその中で国によっても多少システムが異なるらしい。普段はあまりそういうことを意識しながら聴いているわけでもないけど。

 

 

それでも同じような調性感が存在するのは確かで、それだから、アラブ音楽というアイデンティティを、素人リスナーの僕でも感じることができるわけだ。そして同じようなものがトルコ音楽にもあって、トルコ古典音楽における旋法体系もマカームと呼ぶようだ。アラブのマカームと似ているみたい。

 

 

トルコ古典音楽を聴くと、アラブ古典音楽と似たような感触を感じるのも、旋法体系が似通っているせいなんだろう。長らく同一帝国領内の地域として、アラブもトルコも存在したため、おそらく音楽を含め、文化の交流がかなり活発だっただろうことは、想像に難くない。ほぼ同一音楽文化圏と言ってもいいはず。

 

 

そしてイラン古典音楽や、その影響下のアゼルバイジャン古典音楽にも、アラブやトルコのマカームと共通する旋法体系があって、イランではラディーフ、アゼルバイジャンではムガームと呼ばれる。どれも「マカーム」の異称に他ならない。さらにそれらは、インド音楽のラーガとも繋がっているらしい。

 

 

そう考えると、こと旋法体系だけで見たら(他の面でもそうだけど)、北アフリカからアラブ〜トルコ〜イラン〜アゼルバイジャン〜インドなど、その辺は全部ズルズルと繋がっているよねえ。だからどんどん芋蔓式に興味が湧いて、一ヶ国だけ聴いていて満足するということにならない。

 

 

そんな具合にいろいろと聴くようになった最近になってようやく、僕は大学生時代のジャズ優越思想から脱却できた気がするんだなあ。「ジャズはモード奏法とかあって(高級?)」と発言した件の人物を笑えない過去の自分ではあるけど、それがどう間違っているかは、最近になってやっとちょっぴり分ってきた。

 

 

そして、最近ジャズを聴始めたリスナーやこれから入門するリスナーには、モード(スケール)について、理解を深めてもらって、どうかロックや世界中の大衆音楽を見下したりすることのないようにと願うばかり。今ではモードによる音作りがモダン・ジャズだけのものだと思ってる人は、殆どいないとは思うけど。

 

 

ところで、一説によると、クラシック音楽でモード(スケール)を使った曲作りは、クロード・ドビュッシー(1862〜1918)が初めてらしいけど、本当なのだろうか?大衆音楽で頻用される、ペンタトニック・スケール(五音音階)を使ったのも、彼が初めてだとかいう話だけど、どうなんだろう?

 

 

また、これも大衆音楽でも多用される7thコードなどは、かなり前から既に聴ける(非和声音だけど)けど、9th、11th、13thといった、いわゆるテンション・ノートと言われる和声を初めて使ったのも、ドビュッシーだとか。そういった和声拡張の一端として、モードの探求もあったのか?

 

 

7thのコードなんかは、これを使わないと、大衆音楽でも、曲作りも演奏もできないけれど、テンション・ノートでも、9thとかは、ドビュッシーよりももっとだいぶ前から普通に聴ける気がするんだけどなあ。どうなんだろうなあ?

 

 

いずれにしても、ドビュッシーなど印象派作曲家の和声使用法が、ジャズ、特にモダン・ジャズのコードやモードに強い影響を与えたのは、どうやら確かなことらしいけど、僕はクラシック音楽については全く分っていないので、はっきりしたことは言えない。どなたか詳しい方、教えて下さい!

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