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2015/11/16

ライのギターと映画音楽

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昨晩、ライ・クーダーの『チキン・スキン・ミュージック』のことを書いた。1995年にパソコン通信を始めた頃、誰か凄いロック・ギタリストを教えてくれと質問する人がいたので、僕がライの『チキン・スキン・ミュージック』を推薦したことがある。その頃には、僕はもう既にすっかりライの虜だった。

 

 

ライくらい上手いロック・ギタリストはいないと思うようになっていたし、その彼の最高傑作が『チキン・スキン・ミュージック』なんだから。でも返ってきた感想は、なんかホワ〜ンとして掴所がなかったというものだった。その人は、多分ジミ・ヘンドリクスみたいにギンギンに弾きまくる人を聴きたかったんだろう。

 

 

その20年くらい前は、質問してくる相手の嗜好や要求を汲ながら、それに沿うように的確にオススメを選ぶということがまだできていなかった。ただ、自分が素晴しいと信じるものを聴いてほしいと思うばかりだったんだなあ。まあ今でも似たようなもんだけど。

 

 

もちろん、その人のその回答には、るーべん(佐野ひろし)さんはじめ、みなさんから一斉にツッコミが入り、『チキン・スキン・ミュージック』でのライ・クーダーのギターがどれほど素晴しいものなのか、大勢の方々が言葉を尽して説明していた。その時は、的確に説明する言葉を僕は持っていなかった。

 

 

しかしながら、みなさんも説明になかなか苦労していたのも事実だった。実際、ライ・クーダーのギターの上手さは、音源を聴いてもらっても、言葉で説明しても、ちょっと分りにくいものだよねえ。華麗に弾くまくる人じゃないし、いつもだいたい地味で、玄人受けするようなギタリストだもんなあ。

 

 

今でも、僕はライのギターの上手さを言葉でちゃんと説明できる自信が全くない。ただ単に素晴しいと思って聴惚れているだけなんで、他の人にも音源を聴いてもらって、例えば昨日も書いた「カナカ・ヴァイ・ヴァイ」のギター演奏の、この世のものとは思えない美しさにウットリしてもらうしかない気がする。

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=nYo3byPgC5o こういうの(特に「カナカ・ヴァイ・ヴァイ」になる間奏部)を聴いて、美しいと思わない人には、言葉でいくら説明しても無理な気がする。僕だって最初に聴いた時は、どこがいいのかイマイチピンと来なかったんだから、偉そうなことはなにも言えない。

 

 

昨晩書いたように、大学生の頃に聴いた時には良さが分らなかった『ジャズ』も、その後1990年代に聴き返してみたら、凄く面白くて、まあその頃にはジャズの周辺音楽や、ジャズのルーツになった音楽もいろいろと聴いていたので、ライがあのアルバムでなにをしたかったのか、よく理解できた。

 

 

ジャズだけでなく、アメリカ音楽のルーツを広く探求するようになっていたから、『チキン・スキン・ミュージック』や『ジャズ』などでの、ライ・クーダーの博識・慧眼ぶりには驚嘆するばかりだった。ライは米ルーツ音楽に詳しいなんてもんじゃないし、それを1970年代の自分の作品に上手く活かしている。

 

 

ストーンズからのピック・アップ・メンバー等とやった『ジャミング・ウィズ・エドワード』は、1990年代にCDになったのを聴いたんだけど、あれも凄く興味深いアルバムだった。あれを聴くと『レット・イット・ブリード』におけるライの貢献ぶりが、より一層よく分る。ライナーがストーンズ・フリークの寺田正典さんだったはず。

 

 

あの『ジャミング・ウィズ・エドワード』日本盤CDライナーについては、当時寺田さんも、僕が参加していたパソコン通信の音楽部屋に出入りしていて、寺田さんが『レコード・コレクターズ』編集長時代だけど、あの音源に関してるーべん(佐野ひろし)さんが寺田さんになにか教示する場面があった。

 

 

そのことが、寺田さんの書いたライナーの末尾にも書かれてあったはず。そして、そのやり取りが、おそらく、るーべん(佐野ひろし)さんの『レコード・コレクターズ』デビューのきっかけになったようだ。僕なんかは当時なんのことやらサッパリ分らず、ただ傍観してただけだったけど。寺田さんと僕は同い年なんだけど。

 

 

その1990年代半ばは、僕が一番ライ・クーダーの音楽に夢中になって、過去作もいろいろ買って聴きまくっていた頃だった。でもライはいつ頃からか映画音楽の人になっていて、それでも『パリ、テキサス』のサントラ盤は凄く気に入って、繰返し聴いた。あれは映画本編も後から観て好きになった。

 

 

ブラインド・ウィリー・ジョンスンの二枚組CD完全集がいつ頃出たのか忘れたけど、彼のナイフ・スライド(ではないらしいのだが、実際は)としゃわがれ声と、その二つで繰出す背筋の凍るようなゴスペル世界に痺れていた僕としては、ライのブラインド・ウィリー傾倒ぶりがそのまま出ている『パリ、テキサス』はたまらなかったんだなあ。

 

 

『パリ、テキサス』でのライのスライドを聴いていると、まるでブラインド・ウィリー・ジョンスンが蘇ったみたいに聞えるよねえ。というか、まあそのまんまだ。

 

 

 

ブラインド・ウィリー→ https://www.youtube.com/watch?v=DB7C7BgxEWw 

 

 

こんな具合で、ブラインド・ウィリー・ジョンスンのスライド・ギターが大好きだった僕は、ライの『パリ、テキサス』は大好きなサントラ盤だったんだけど、それ以後は、これはと思うものがない。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が、ライの手がけたサントラ盤では一番有名だろうけど、あれはちょっとねえ。

 

 

『ブエナ・ビスタ』は、キューバ音楽としては、おそらく史上最も売れたものだけど、あそこでのライ・クーダーはいただけないので、ちょっと好きにもなれないんだなあ。はっきり言って、ライの入れるスライド・ギターだけが邪魔だ。

 

 

これは『ブエナ・ビスタ』の悪口ではないつもり。ライが台無しにしてはいるものの、キューバの古老達の演奏自体はかなりいい。元々『ブエナ・ビスタ』とは関係なく活動していた歌手のオマーラ・ポルトゥオンドも、その後どんどんとアルバムを出せるようになったわけだし。

 

 

『ブエナ・ビスタ』本編の数年後に出た『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・プリゼンツ・イブラヒム・フェレール 』にもオマーラは参加していて、「シレンシオ」で、主役のイブラヒムと絶品のデュエットを聴かせている。あの「シレンシオ」は本当に美しい。

 

 

映画本編は、ハバナの海岸通りをはじめ、キューバの風景がたくさん見られて愉しかったけど、最後のカーネギー・ホールでのコンサート・シーンでは、ライ・クーダーが出てくるのに、やはり感心しなかった。あの映画(音楽)で、ライのことがちょっとイヤになってしまった。北米ルーツ音楽にはあれだけ深い理解を示すライのに。

 

 

サントラ盤じゃないライ・クーダーのアルバムは、その後も買って聴くものの、一時期ほど夢中にはなれないままだ。僕の移り気なせいもあるんだろうけど、どう聴いても1970年代のライの面白さは、減じている気がしてならない。最近では、70年代の発掘ライヴもの以外は、買わなくなってしまったなあ。

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