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2015/11/17

「キャンディ」で繋ぐリー・モーガンとマンハッタン・トランスファー

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アレックス・クレイマー作曲、マック・デイヴィッドとジョーン・ウィットニー作詞の1944年発表のポップ・ソング「キャンディ」。大好きなスタンダード・ナンバー(と呼んでいいのだろうか?)なんだけど、ジャズマンがこの曲を演奏したものではリー・モーガンの1958年ヴァージョンが一番好き。

 

 

リー・モーガンの「キャンディ」は、そのまま『キャンディ』というブルーノートのアルバムになっている。ヴォーカル入りのヴァージョンなら数多い「キャンディ」だから、僕も何種類か持っているけど、インスト演奏の「キャンディ」って、そんなに多くなく、僕はこのリー・モーガンのしか持っていない。

 

 

リー・モーガンの『キャンディ』というアルバムは、ピアノ・トリオをバックにしたリー・モーガンのワン・ホーン・カルテット編成なので、彼のトランペットをたっぷり楽しめて、「アイ・リメンバー・クリフォード」があるせいで非常に高名な『ヴォリューム 3』とかより、僕はこっちの方が好きなのだ。

 

 

ワン・ホーン・カルテット編成の『キャンディ』で伴奏を務めているピアニストが、ブルーノート専属のソニー・クラークなのも、僕には嬉しい。大好きなモダン・ジャズ・ピアニストで、たくさんアルバムを買って聴くようになった最初のジャズ・ピアニストだったので、そのせいもある。

 

 

もっともアルバム一曲目の「キャンディ」では、ソニー・クラークはあまり活躍せず、一応ピアノ・ソロはあるけれど、むしろドラムスのアート・テイラーのブラシ・プレイとの掛合いでリー・モーガンが吹いているようなアレンジなのだ。いきなりブラシの音で曲がはじまるし、その後もかなり目立っている。

 

 

『キャンディ』(の半分)を録音した1958年には、リー・モーガンはアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの一員だった。そのバンドでも名演をいろいろと残しているし、大好きなんだけど、自己名義のリーダー・アルバムも結構あるよね。個人的には57〜63年頃のモーガンが一番よかった。

 

 

もちろんその後の、例えば1970年のライヴ録音『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』(CDでは三枚)もかなり好きではある。ベニー・モウピンがテナー・サックスやバス・クラリネットで参加しているし、それ以上にピアノのハロルド・メイバーンが真っ黒けで、僕は大好きなピアニストなんだよね。

 

 

LPリリースが1971年だった『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』は、リー・モーガンの最後から二つ目の作品で、翌年にモーガンはニューヨークのジャズ・クラブで演奏中に射殺されてしまうという非業の死を遂げている。その時33歳だったから、もっともっと活躍できたはずで、今でも現役だったはず。

 

 

こういう『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』みたいな素晴しい作品がありはするものの、個人的好みだけを言わせてもらえば、リー・モーガンは1958〜61年のジャズ・メッセンジャーズ時代に、そのバンドと彼名義で残した録音がやっぱりいいなあ。『ザ・サイドワインダー』は63年の作品だけど。

 

 

ちなみにその1963年の『ザ・サイドワインダー』一曲目のタイトル曲は、ジャズ界における初のジャズ・ロック作品と言われることがあるらしい。でも63年だったらもっと早くに似たようなジャズ作品があったはずだ。例えばハービー・ハンコックの「ウォーターメロン・マン」は62年だし、他にもありそう。

 

 

ハービーの「ウォーターメロン・マン」が、1962年の時点で既に後のファンク路線を予告しているような作品で、実際70年代にファンク化して再演していることは前も書いた。だからリー・モーガンだって、あとほんの三年くらい生きていれば、似たような路線を辿ったんじゃないかと、僕は思うのだ。

 

 

実際、「ザ・サイドワインダー」という曲は、前述の1970年録音『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』で再演している。かなり黒いフィーリングだけど、でもまだファンクっぽい感じにはなっていない。だから、せめてあと三年だけでいいからリー・モーガンが生きていればよかったのに。惜しいことをした。

 

 

ちなみに1970年ライヴ再演の「ザ・サイドワインダー」では、テナーが、この後ハービー・ハンコックの一連のファンク・アルバムで活躍することになるベニー・モウピンだから、かなりファンキーに吹いているし、ピアノのハロルド・メイバーンだってブラック・フィーリング横溢なソロを弾いている。

 

 

ハロルド・メイバーンはピアノ・ソロの途中で、あのウィルスン・ピケット最大のヒット曲「ダンス天国」(Land of 1000 Dances)のフレーズを引用して弾いているくらいだもん。1963年の初演から相当にファンキーな曲だったけど、70年ヴァージョンはそれがもっと拡大している。

 

 

こういうのを聴くと、リー・モーガンのファンク路線への転向は、もうすぐそこまで来ていたように思うんだなあ。1972年に死んでしまったから、今では58〜61年の作品が一番好きだと思うようになっていて、「ジャズ」のトランペッターとしてのピークは、おそらくそのあたりだったと思うのだが。

 

 

最初に書いたスタンダード・ナンバーの「キャンディ」。インスト演奏はリー・モーガンのしか持っていないんだけど、ヴォーカル入りのならいくつか持っていて、一番好きなのがマンハッタン・トランスファーの1975年ヴァージョン。ジョー・スタフォードのオリジナルもダイナ・ショアのも好きだけど。

 

 

マンハッタン・トランスファーは、一般的にはジャズ・ヴォーカル・グループに分類されているけど、アメリカン・コーラスの歴史を実にタダシク引継いでいて、あの『ドゥー・ワップ・ボックス』の三巻目にも一曲収録されているくらいなのだ。ジャズ・ファンは、あんなボックスは聴かないだろうけどさ。

 

 

『ドゥー・ワップ・ボックス III』に収録されているのは、マンハッタン・トランスファー1984年の『バップ・ドゥー・ワップ』の「ベイビー・カム・バック・トゥ・ミー」。タイトル通り古いヴォーカル・ナンバーばかりカヴァーしたアルバムで、「ルート 66」や「サフロニア B」もあるんだ。

 

 

「ルート 66」は、みなさんご存知の有名スタンダード・ナンバーだけど、僕は、ルイ・ジョーダン系歌手カルヴィン・ボウズの1950年ヴァージョンが初演のジャンプ・ナンバー「サフロニア B」の方が好き。『ジャンピン・ライク・マッド』という1997年リリースの、ジャンプ・ブルーズばかり集めたCD二枚組アンソロジーで初めて知って以来、かなりの愛聴曲なのだ。

 

 

こういう曲がいろいろと入っているマンハッタン・トランスファーの『バップ・ドゥー・ワップ』を聴けば、彼らが古くからのアメリカン・コーラスの伝統に連なっていることがよく分る。1970年代の作品から、それは聴けば分ることだけど、彼らのリスナー層の中心であろうポップ系ジャズ・ファンは、どう思っているんだろうなあ?

 

 

リー・モーガンを聴く硬派なジャズ・ファンは、「トワイライト・ゾーン」やウェザー・リポート・ナンバーの「バードランド」が一番有名だから、マンハッタン・トランスファーなんかとバカにして聴かないだろうけど、ゴスペル・カルテットやドゥー・ワップなど古くからのアメリカン・コーラスが大好きな、僕みたいな音楽ファンには、大変楽しいグループなんだよね。

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