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2015/11/02

最初に買った洋楽レコード〜ビリー・ジョエル

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僕が自覚的にレコードを買って聴いて、好きになった最初の洋楽歌手は、何を隠そうビリー・ジョエル(とレッド・ツェッペリン)だった。高校一年か二年の頃。以前ツェッペリンのことは少し書いたけど、実はビリー・ジョエルの方が少しだけ早かった。

 

 

高一か高二というのはかなり遅いよね。それ以前の小・中学生の頃は、主にテレビの歌謡番組で見聴きした歌手、山本リンダの「どうにもとまらない」が小六の時の僕のハジレコだったことは以前も書いたけど、沢田研二や山口百恵やキャンディーズとか、テレビでよく見て好きで、ドーナッツ盤も買ってはいた。

 

 

洋楽では、ビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』を最初に買って、それで大好きになったんだけど、あのアルバム、当時は分っていなかったけど、結構ジャジーだ。だいたいアルバム・タイトルがジャズの街のことだし、ゲストで一曲フレディ・ハバードが吹いていたりするしなあ。

 

 

あの『ニューヨーク52番街』がレコーディング/リリースされた1978年というのは、フュージョン全盛期だったから。フレディ・ハバードも、もっと前からCTIなどにフュージョン系のアルバムをいろいろと吹込んでいた。ヴァイブのマイク・マイニエリが入っている曲もあるし。

 

 

生粋のニューヨーカー(であることは、もうしばらく後になって知ったことだったけど)のビリー・ジョエルも、1970年代半ばの、ニューヨークなどでも吹き荒れていたフュージョン・ブームに乗っかって、という言い方が悪いならば、インスパイアされて、おそらくああいうアルバムを作ったんじゃないかなあ。

 

 

もっとも、その頃僕はまだジャズやフュージョンを全く聴いていない。それらを熱心に聴始めるのは、その二年後くらいで、高一か高二の時にビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』を聴いた時も、当時好きだったのは、ジャズ〜フュージョン風の曲ではない。好きだったのは「オネスティ」や「マイ・ライフ」。

 

 

最初レコードを買う前に、ラジオの洋楽番組、多分ヒット・パレードみたいな流行の曲を流すような番組で、「オネスティ」や「マイ・ライフ」を聴いて好きになって、それでレコードがほしいと思って、レコード屋に行ったんだろうなあ。その頃は試し聴きというのは、そういうやり方しかなかった。

 

 

その頃は、サウンドよりも、なにより「オネスティ」や「マイ・ライフ」の歌詞の内容に共感していたのだった。今考えたら、なんでもないというかどうってことないアホみたいな歌詞だけど、当時はかなり真剣に受止めていたんだよなあ。

 

 

だから、歌詞内容よりサウンドが断然面白いB面は、高校生の頃はイマイチ好きじゃなかった。今聴くと、B面の「スティレット」や「ロザリンダの瞳」などの、ちょっとラテンな雰囲気の曲調が、断然面白い。特に「ロザリンダの瞳」は、マイク・マイニエリのヴァイヴやラテン・パーカッションも入っているし、ナイロン弦ギターも聞える。

 

 

さらにB面ラストのアルバム・タイトル曲では、ジャズの街という曲名そのままに、微かにだけどディキシーランド・ジャズの香りがして、実際クラリネットなども入っているし、三分もない短い曲だけど、今ではなかなかのお気に入りになっている。このアルバムの締め括りに相応しいナンバーだ。

 

 

ジャズを聴始めた頃に好きで繰返し聴いていた、A面ラストの「ザンジバル」。なぜ好きかというとフレディ・ハバードのトランペット・ソロが入っているせいなんだけど、今ではこれはあまり面白いとは感じなくなった。ハバード本人にしても、当時たくさんこなしていたセッションの一つに過ぎなかったんだろう。

 

 

そういうわけで、今たまに取りだして聴くといろんな感想があるビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』だけど、高校生の時にとにかく大好きにはなったので、その後、それ以前のレコードも買って聴くようになった。前作『ストレンジャー』で大成功した歌手だということも知った。

 

 

余談だけど、ボクサー・グローブが映っている『ストレンジャー』のジャケットは、当時観て好きだった映画『ロッキー』のイメージと完全に重なっている。『ロッキー』が1976年で、『ストレンジャー』が1977年だから、ビリー・ジョエルと彼の制作スタッフ側が、間違いなく意識したんだろう。

 

 

『ストレンジャー』からは、アルバム・タイトル曲と「素顔のままで」があまりにも有名で、特に後者には、僕も好きなジャズ・アルト・サックス奏者のフィル・ウッズのソロが入っていて、お気に入りだ。多分ジャズ・ファン以外の一般の音楽リスナーにとっては、一番有名なフィル・ウッズの演奏。

 

 

だけど、僕はあのアルバムで一番好きなのは、「素顔のままで」よりも、むしろA面ラストのやや長め(約七分)の「イタリアン・レストランにて」だったりする。まあこっちにもジャズっぽいサックスやクラリネットの演奏が入っているけど、それよりテンポ・チェンジのあるドラマティックな曲展開が好き。

 

 

もちろん『ストレンジャー』や『ニューヨーク52番街』といった、成功後のビリー・ジョエルだけではなく、それ以前の不遇を託っていた頃のレコードもほぼ全部買って聴いていたけど、第一作目の『コールド・スプリング・ハーバー』だけが廃盤で入手できず。これは大学四年生の時に復刻LPが出た。

 

 

1971年作の『コールド・スプリング・ハーバー』は、ファミリー・プロダクションズという会社から出たもので、全く売れずすぐに廃盤になって、幻の作品のように言われていた。このアルバムの権利を、成功後のビリー・ジョエルの所属会社だったコロンビアが買取って復刻したのが1983年。

 

 

だからその次の、大手コロンビアでの1973年第一作『ピアノ・マン』が、実質的にはビリー・ジョエルのデビュー・アルバムのように扱われていた。これは昔から普通にレコードが買えた。その次の74年『ストリートライフ・セレナーデ』(この頃はニューヨークではなくロサンジェルス時代)とかも。

 

 

そのロサンジェルス時代の『ストリートライフ・セレナーデ』は、案外好きなアルバムで、アルバム・ジャケットもいいし、それに特に九曲目の「スーヴニア」が、これはもうたまらなく美しいバラードで、二分ほどの短い曲だけど、彼の書いたバラードでは今でも一番好きで、よく聴くんだなあ。

 

 

 

切なく美しいよねえ。この曲、ビリー・ジョエル自身もお気に入りの曲で、成功してからも一時期ずっとライヴのエンディング曲として演奏していたらしい。僕は彼のライヴに行ったことも、ライヴ盤を聴いたこともないんだけど、ピッタリだよね。

 

 

売れる前でも、ニューヨークに戻ってからの次作『ニューヨーク物語(Turnstiles)』は、素晴しい作品。これに入っている名曲「ニューヨークの想い」は、おそらくビリー・ジョエルのオリジナル・ナンバーの中で、最も多くカヴァーされている曲じゃないかと思う。

 

 

この次の『ストレンジャー』で、初めてプロデューサーのフィル・ラモーンと組んで大ブレイクして人気歌手になるわけだけど、それ以後のアルバムも、1983年の『イノセント・マン』までは、1981年のライヴ盤『ソングズ・イン・ジ・アティック』を除き、全部買って聴いていた。

 

 

その間、1980年の『グラス・ハウス』とか82年の『ナイロン・カーテン』とかは、レコードが出た当初は繰返し聴いていたけど、その後はあまり聴かなくなった。だけどその次の83年『イノセント・マン』、これがドゥーワップやR&B等、黒人音楽へのオマージュ・アルバムで、今でも大好きで聴くアルバムだ。

 

 

『イノセント・マン』が出た1983年(大学四年)には、既にいろんな米国ブラック・ミュージックを聴いていたから、あのアルバムの面白さも一回聴いて即座に理解できた。今でもアルバム丸ごと聴くビリー・ジョエルのCDは、これだけ。この「ディス・ナイト」が一番いい。

 

 

 

この曲の歌詞、特に "How many nights have I been thinking about you" という部分には、僕の当時の個人的経験が重なっていて、涙が出た。今でもこの曲を聴いてこの部分になると、それが蘇ってなんとも言えない気分になるんだけど、これは記事の本題には関係ない(恥)。

 

 

『イノセント・マン』には、ビリー・ジョエル自身が書いた解説が付いていて、このアルバムを作る際に意識し、収録曲に影響を与えた歌手として、ジェイムズ・ブラウン、ベン・E・キング、シュープリームス、マーサ&ザ・ヴァンデラス、フォー・シーズンズ、サム・クックなどの名前を挙げているんだよね。

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