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2015/12/25

年間ベストテン2015〜新作篇・リイシュー篇

1995年以来欠かさず書続けている、私的な音楽年間ベストテン。ブログをはじめた今年も、ここ数年の慣例に従って、今日12/25日クリスマスに発表する。なお、これは今年リリースされたものが対象ではなく(そもそも僕が多く買っているジャンルでは、すぐには買えないものが多いから)、今年「買った」ものが対象。

 

 

【新作篇】

 

(1) Lệ Quyên / Vùng Tóc Nhớ

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三年前からちょっとだけは聴いていたヴェトナム人女性歌手レー・クエンの2014年作。これがもう圧倒的に素晴しくて、ウットリと聴惚れるまま現在に至る。何度聴いても素晴しい以外の言葉が出てこず、いまだに完全に骨抜き状態。

 

 

 

(2) Dorsaf Hamdani / Barbara Fairouz

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現在フランスに住み欧州を中心に活動しているチュニジア出身女性歌手の2014年暮れの作品。アラブ歌謡の人だけど、シャンソンとアラブ歌謡を絶妙なアレンジで違和感なく溶け込ませた傑作。

 

 

 

(3) Gochag Askarov / Sacred World of Azerbaijani Mugham

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アゼルバイジャン人男性歌手の、これはどうやら2012年作らしい。知ったのが今年一月だったというなんとも遅すぎた出逢いだけど、強靱極まりない声はおそらく現役男性歌手では世界最強だろう。ペルシャ古典声楽のタハリール唱法の影響も聴ける。


 

 

(4) Faada Freddy / Gospel Journey

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セネガルのヒップホップ・ユニット Daara J の男性ヴォーカルによる、楽器なしで声と体を叩く音だけで創り上げたコーラス・ミュージック。単なるアフリカ音楽の枠を大きく越えた普遍的作品。



 

 

(5) Nina Becker / Minha Dolores: Nina Becker Canta Dolores Duran

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ブラジル人女性歌手が、サンバ・カンソーンの大先輩ドローレス・ドゥラーンの歌をカヴァーした作品。ニーナの歌もいいし、ショーロ風なシンプルな伴奏もステキ。

 

 

 

(6) Oliver Mtukudzi / Mukombe We Mvura: Live at Pakare Paye

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サハラ以南のブラック・アフリカものでは、ファーダ・フレディとともによく聴いた。同じジンバブウェの音楽家による今年の作品では、個人的にはトーマス・マプフーモよりこっちが好き。



 

 

(7) Manu Théron, Youssef Hbeisch, Grégory Dargent / Sirventés: Chants fougueux des Pays d’Oc

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オック語で歌う南仏の音楽トリオ。ウードとダルブッカ中心のアラブ風味濃厚なサウンドが大の僕好み。3ピース・バンドでのソリッドなグルーヴ感は、クリームやジミ・ヘンドリクスを彷彿とさせる。

 

 





(8) Tigran Hamasyan / Mockroot

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同じ音楽家による同じく今年の作品では、ECMから出たアルメニア宗教音楽集も面白くて、どっちを選ぶか大いに迷ってジャズ的なこっちになった。もっとも僕は現代ジャズだと思って聴いているわけではない。



 

 

(9) María Simoglou Ensemble / Minóre Manés: Rebétika songs of Smyrna

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タイトルが示す通り、現代ギリシア人音楽家によるスミルナ派レンベーティカ集。僕には完全にトルコ古典歌謡にしか聞えない。現在世界中で最も好きな種類の音楽。同じ趣向のTAKIMもよかったけれど、こっちを。

 

 

 

(10) Luis Barcelos / Depois Das Cinzas

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第五位に選んだニーナ・ベケールの作品でも弾いている十弦バンドリン奏者による、完全トラディショナル・スタイルのショーロ・カリオカ。こういうブラジル音楽が、個人的には一番しっくり来る。


 

 


新作篇ではその他にも、HK・エ・レ・サルタンバンク(フランス)とかアリレーザ・ゴルバーニ(イラン)とかヒバ・タワジ(レバノン)とか、選外にしたけれど素晴しい作品があって、どれをベストテンに入れるか大いに迷った。メモしてある手許のテキスト・ファイルでは35位まで記載されている。

 

 

【リイシュー・発掘篇】

 

(1) v.a. / Great Singers of the Republic of Azerbaijan

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リイシュー篇第一位は断然これ。アリム・ガスモフくらいしか聴いていなかった僕の脳天にはムチャクチャ衝撃だった戦前古典ムガーム歌手達の物凄さ。

 

 

 

(2) E.T. Mensah & The Tempos / King of Highlife Anthology

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第一位を聴くまでは、これが今年のリイシュー篇第一位になるに違いないと信じ込んでいた、ガーナのハイライフ音楽家の素晴しいアンソロジー。リイシュー意義では、今年リリースされたものではNo.1だったかも。



 

 

(3) Alexis Zoumbas / A Lament For Epirus 1926-1928

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荻原和也さんのブログで知った(新作篇第十位といい、その他といい、ホントそんなのばかりで、感謝します!荻原さん!)、ギリシア人ヴァイオリニストのアメリカ録音。ドッキリするほど生々しい音が驚き。まるで演奏家の息づかいまでも聞えてくるかのよう。


 

 

(4) Sly and the Family Stone / Live at the Fillmore East: October 4th & 5th, 1968

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個人的にこの音楽家は1968/69年頃が一番好き。その時期の未発表ライヴ四枚組なんて最高。アッパーなファンク・チューンのメドレーは、一番好きな1969年ウッドストックでのライヴ・パフォーマンスに匹敵する興奮。



 

 

(5) Duke Ellington / The Conny Plank Session

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クラウト・ロックで有名なコニー・プランクがエリントンも録音していたとは。それも驚きだったけれど、エリントン楽団の演奏も過激で前衛的。これはもうジャズなんかじゃないね。



 

 

(6) Lee Dorsey / Yes We Can

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今年亡くなったアラン・トゥーサン・プロデュースによる(従って当然バックはミーターズ)、1970年のニューオーリンズ・ファンクの名盤。CDでは初めてマトモな形でリイシューされ、大きな喜びだった。



 

 

(7) Eddie Condon / Classic Sessions 1927 - 1949

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去年出ていたことに今年気付いた、大好きなシカゴ派ディキシーランド・ジャズの最重要人物エディ・コンドンの古典録音集。彼の1920〜40年代録音コンプリート集を早くどこか出してくれ。

 

 

 

(8) v.a. / A Century of Âvâz: An Anthology of The Contemporary Art of Singing in Persian Classical Music

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ペルシャ古典声楽アーヴァースの名唱集。タハリール唱法をたっぷり聴け、周辺の西アジア地域の音楽に与えた影響も分る。




 

 

(9) Lead Belly / The Smithsonian Folkways Collection

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レッドベリーによる古いアメリカーナばかり五枚組。うち未発表録音16曲。ライ・クーダーなどのファンなら必聴のアンソロジーで、再発見多数。




 

 

(10) v.a. / Highlife On The Move

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第二位のE.T. メンサーと同じくハイライフのアンソロジーだが、こっちはナイジェリアも含む。好みだけならこっちだったかも。フェラ・クティの最初期録音その他初めて聴くようなものばかり。


 

 



なお、ボブ・ディランの『カッティング・エッジ』も、1965〜66年という一番好きな時期だから、聴きたくてたまらないんだけど、安めの輸入盤でも一万円以上もするので、まだ買えていない(買って聴いていたら、間違いなく上位に入っていたはず)。未発表集とはいえ過去音源のたったの六枚組なのに、どうしてそんな高値なんだ?

 

 

リイシュー篇は、メモしてある手許のテキスト・ファイルでも23位までしか記載されていない(新作篇の35位までといい、どっちも買って聴いたもの全部ではなく、良かったと思うものだけメモする)ので、あんまりは聴いておらず、新作篇ほどの充実ぶりではなかったけれど、それでもそれなりに面白かった。新作篇・リイシュー篇ともに、2015年も大変楽しい音楽ライフでした。

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