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2015/12/30

泥臭いモダン・ジャズ・テナー

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スタンリー・タレンタインのCD二枚組ライヴ・アルバム『アップ・アット・ミントンズ』。タイトル通り、ニューヨークのミントンズ・プレイハウスで、1961年に録音されたものだけど、僕はもうこれが大好きでたまらない。大学生の時にLPレコード二枚(二枚組ではない)で買って以来の、大の愛聴盤だ。

 

 

スタンリー・タレンタインというテナー奏者ってかなりマイナーな人で、僕は全く知らない人だったのに、どうしてその『アップ・アット・ミントンズ』を買ったのかというと、これはもう完全にレコード屋店頭で見てのジャケ買いだった。

 

 

今でこそワールド・ミュージック・ファンになって、ジャケットの好みもだいぶ変ってきたけど、大学生の頃の熱心なジャズ・ファン時代は、こういうシンプルで洒落たデザインのジャケットが好きだった。だからだいたいブルーノートのジャケット・デザインは好きだけど、アトランティックなどはイマイチ。

 

 

もちろん中身の音楽はアトランティックのジャズ・レコードだって大好きで、よく聴いていたんだけど、ことアルバム・ジャケットに関してはあまり好きじゃなかったんだよねえ。今ではどっちかというとアトランティックのジャケットの方が好き。でもブルーノートのを見ると、甘酸っぱい懐かしい気分だ。

 

 

それはそうとスタンリー・タレンタイン。ジャズ・テナー奏者としては、洗練されているというよりかなり泥臭くブルージーな吹き方をする人で、レコード・デビューが1960年。その当時はもっぱらブルーノートから作品を出していたようだ。ようだというのは、実は僕は彼の作品をあまり知らない。

 

 

リーダー作品で、今でも買って聴いているのが、その『アップ・アット・ミントンズ』だけで、他は全く買ったことがない。聴いていないという意味ではない。大学生の頃、ジャズ喫茶でいろいろと聴きはしたのだ。だけど、『アップ・アット・ミントンズ』ほどの魅力を感じられる作品には出逢わなかった。

 

 

だから、極めて個人的な感想だけど、スタンリー・タレンタインのアルバムでは、『アップ・アット・ミントンズ』二枚組が一番いいなあ。あまり熱心なファンとは言えないから、えらそうなことは言わない方がいいけどね。しかし、この二枚組は本当に素晴しい内容なんだ。ライヴ盤だというのもいいね。

 

 

ごくたまに「ライヴ盤は聴かない」という人がいて、今でも僕のTwitterフォロワーさんの中にもいるんだけど、実は昔からそういうリスナーはいた。僕に言わせれば、一部のスタジオ制作完璧主義者を除き、殆どの音楽家はライヴ・アルバムの方に素晴しいものが多いと思うんだけどな。もったいない。

 

 

ついでにいうと、ライヴ・アルバムは聴くけど、実際のライヴ・コンサートには行かない・行きたくないという人も、昔から結構いたなあ。そういう人に言わせると、レコードで聴いているイメージが壊れてしまうのが嫌だというのが最大の理由らしい。特にレコード聴取が中心のジャズ・ファンに多いよね。

 

 

パソコン通信時代の音楽仲間にも、そういう人が一人いて、熱心なユッスー・ンドゥール・ファンだったから、1999年のブルーノート東京でのユッスーのライヴに無理矢理誘ったことがある(僕は91年のにも行ったけど、その頃はまだネットを始めていない)。そしたら凄くいいので、考えを改めたようだった。

 

 

また話が逸れた。スタンリー・タレンタインの『アップ・アット・ミントンズ』二枚組は、サイドメンもいい。リズム・セクションがホレス・パーラン・トリオで、それにギターのグラント・グリーンが加わった五人編成。このメンツを見ただけで、中身の音楽の傾向がだいたい想像できてしまうよねえ。

 

 

以前書いたようにギターのグラント・グリーンは真っ黒けでブルージーな演奏が身上の人だし、ピアノのホレス・パーランだって、全く同じような傾向の人。ホレス・パーランもブルーズが得意で、彼のトリオ・アルバムは大好きでよく聴いていた。アーシーでファンキーだし、ブロック・コードで弾きまくる。

 

 

スタンリー・タレンタインは知らない人だったけど、レコード屋の店頭でジャケットが気に入ったジャケ買いだったことの他に、こういうサイドメン(はほぼ知っていた)の顔ぶれと、やっている曲目に好きそうな曲が並んでいるというのも、大きな購買理由だった。帰って聴いてみたら、想像通りの音が出た。

 

 

スタンダード・ナンバーの「バット・ナット・フォー・ミー」「ブロードウェイ」「イエスタデイズ」「晴れても降っても」「ラヴ・フォー・セール」「サマータイム」が中心で、二枚組全八曲のうち六曲だ。残り二曲がタレンタインのオリジナルのブルーズ・ナンバー。いかにも僕が好きになりそう。

 

 

二曲のオリジナルのブルーズ・ナンバーで、タレンタインもグリーンもパーランも、これでもかというくらい泥臭く攻めているのは当然なんだけど、それ以外のスタンダード・ナンバーでも、三人はペタトニック・スケールを駆使して、相当にブルージーなソロを展開しているのが、なんとも言えずいいね。

 

 

「ブロードウェイ」という曲をスタンダードにしたのはレスター・ヤングで、1940年のカウント・ベイシー楽団での録音が有名。そこでのレスターのソロが絶品で、後に西海岸の白人テナー奏者テッド・ブラウンが56年の『フリー・ホイーリング』でカヴァーしているのもいい。

 

 

その『フリー・ホイーリング』での「ブロードウェイ」では、後半サックス三人のアンサンブルで、先に書いた1940年レスター・ヤングのソロを、ハーモニーを付けてそっくりそのまま再現していて、レスターへの敬愛ぶりがよく分る。相当後のスーパー・サックスなんかがやったようなことの先取りだったね。

 

 

だから「ブロードウェイ」という曲はレスター・ヤング系の軽くてソフトな印象がつきまとう曲なんだけど、『アップ・アット・ミントンズ』でのスタンリー・タレンタインその他は、そんなことには一切構わず、真っ黒けでブルージーな演奏を繰広げているんだなあ。僕は白人ジャズも大好きではあるけどね。

 

 

『アップ・アット・ミントンズ』に限らず、スタンリー・タレンタインは、ジャズマンとしてはアクの強すぎるくらいのテナー奏者だから、一般のファンの間では好みが分れる人だろう。その上、このアルバムではグラント・グリーン+ホレス・パーラン・トリオの伴奏だからなあ。好きじゃない人もいるはず。

 

 

僕はと言えば、こういうかなりアクの強い真っ黒けなテナー・サックスが大好きだったくらいだから(もちろん書いたように、ジャズでは、軽くてソフトな西海岸の白人サックスも好きなんだけど)、その後ビッグ・ジェイ・マクニーリー等の、ジャンプ〜R&B系ホンカーへの適性はあったということだなあ。

 

 

スタンリー・タレンタインは、1970年代に主にCTIレーベルに、オルガンや電気楽器を使ったファンク系のアルバムを残しているらしいけど、僕はそれらは全く聴いていない。ジャズ喫茶で聴いていたのも、60年代のジャズ作品ばかり。今聴けば、70年代のファンク・アルバムだっていいに違いない。

 

 

僕はタレンタインのそういう1970年代以後(90年代まで録音がある)のアルバムをディグする前に、もっと前の40年代のジャンプや50年代のR&Bなど、古いブラック・ミュージックに夢中になって、そういうのばかり追掛けるようになったからなあ。今考えたら、70年代作品も聴いておけばよかった。

 

 

というのも、『アップ・アット・ミントンズ』でギターを弾いているグラント・グリーンだって、以前書いたように、1970年代電化ファンク路線のアルバムを聴いたら、そっちの方がはるかにカッコよくて、完全にはまってしまい、今でも時々聴くのはそっちの方だからなあ。タレンタインだってそうかもなあ。

 

 

もちろん1970年代のジャズマンは、ほぼ全員が電気楽器を使って他ジャンルとクロスオーヴァーした作品を残したわけで、そういう時代だったんだし、タレンタインもCTIなら、軽い傾向のレーベルだから、そんなに期待するほどファンキーでもないのかもしれないけどね。

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コメント

私のスタンリー・タレンタイン体験は、高校生の時に聴いた、CTIの「カリフォルニアコンサート」からです。CTIは、あまりお聴きでないみたいですが、私はCTI時代の音を中心に聴いてました。「シュガー」とか、フレディー・ハバードの「イン・コンサート」とか、泥臭いというか、迫力あるテナー音が好きでした。あの時代、ベースの印象的な単なリフを繰り返すのが多く、「レットクレイ」とか、「ジブラルタル」なんか良く聴いてました。あれ、ファンクなんですかね。ブラスはあまりリズムを刻んでいませんでしたが。ファンク関連ですが、モーリス・ホワイトが旅だったので、E,W&Fをひたしぶりに聴いてみなしたが、「powerlight」までは最高ですね。タワーオブパワーも好きです。(私のファンクの対する理解度はあまり高くありませんが)

TTさん、別にCTIのサウンドが嫌いとかいうわけじゃないんですよ。なんたって僕がジャズを聴始めた頃はCTI全盛期でしたからね。そりゃもうたくさん聴きました。もっと黒くて重たいものが好みだというだけの話なんですよね。

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