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2015/12/07

ザラついた声で激しくシャウトするゴスペル歌手サム・クック

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Twitterで(知らない人と)少しだけサム・クック関係のやり取りをした関係の流れで、今日はサムのソウル・スターラーズ時代の完全集三枚組を、少し聴いていた。ソウル・スターラーズ時代と言わず、僕がサム・クックを初めて聴いたのは、『ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック』というベスト盤だった。

 

 

『ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック』は、調べてみたら1986年に出たコンピレイションCDだ。僕が買って聴いたのは、多分90年過ぎじゃなかったかと思う。そして、このコンピレイション盤の一曲目が、ソウル・スターラーズ時代の「タッチ・ザ・ヘム・オヴ・ヒズ・ガーメント」だった。

 

 

 

その頃は、サム・クックという人がどういう経歴を持った歌手だったのか、まだ全く知らなかったし、ゴスペル時代を経てソウルに転向したということも、全く分ってなかったんだけど、その一曲目「タッチ・ザ・ヘム・オヴ・ヒズ・ガーメント」と二曲目「ザッツ・ヘヴン・トゥ・ミー」もゴスペルだった。

 

 

どうもこの時が、二曲だけだけど、ゴスペル音楽をちゃんと聴いていいと思った最初だったのかもしれないなあ。マヘリア・ジャクスンなどは、ジャズの文脈でもよく名前の出てくる歌手だから、一応聴いていたし、アリサ・フランクリンのゴスペル・アルバムも聴いてはいたけど、イマイチに感じていた。

 

 

マヘリア・ジャクスンとか、アリサのゴスペル・アルバムとかの面白さは、少し後にならないと分らなかった。当時はゴスペルはソロ歌手より、コーラスでやるカルテット・スタイルや大人数のクワイアなどの方が聴きやすく親しみやすく、特にゴスペル・カルテットのアルバムばかり買っていた。

 

 

それで、もっと聴きたくて、サムの歌うソウル・スターラーズ時代のCDを買おうと思ってCDショップに行ったけど、僕の探し方が悪かったのか見つからず、ようやく買えたのが1991年にスペシャルティの権利を買ったファンタジーから出たこのアルバム。

 

 

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聴いてみたら、『ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック』の一曲目だった、ゴスペル時代のサムの最高傑作であろう「タッチ・ザ・ヘム・オヴ・ヒズ・ガーメント」などはもちろん入っているけど、一曲目の「ピース・イン・ザ・ヴァリー」がまた素晴しくて、こりゃたまらんとなったわけだ。

 

 

 

しばらくは、このスペシャルティ録音のCDばかり聴いていて、サム・クックは凄い凄いと思っていた。そういうわけだから、ソウル歌手としてのサム・クックを聴くのは、ちょっと遅くなってしまったのだった。そういうサム・クック入門をした人間は少ないかもしれない。

 

 

今考えたら、その一枚物CDに、ゴスペル歌手としての、ソウル・スターラーズ時代のサムの代表的歌唱がかなり入っているし、編集盤は他にもいくつも出ている。その後、2002年に出た三枚組CD全集を買って、これを聴きまくった。特にラストに三曲入っているライヴ音源が凄い。

 

 

『ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック』では、四曲目がソウル転向後の「ユー・センド・ミー」だったんだけど、続けて聴いて、全くなんの違和感もなく、スムーズに繋がっていた。だからゴスペルとソウルの違い(歌詞内容以外の本質的違いは、実はいまだによく分らない)を意識することはなかった。メイン歌手のバックで「オー、イエス・マイ・ロード」とか「オー、ジーザス」とか繰返しているのを、そのままホーン・セクションなどのリフに置換えただけじゃないのかと思ってしまう。

 

 

少なくとも、サムの歌い方については、ソウル・スターラーズ時代も、ソウル・ミュージック転向後も、なにも変っていない。バックのサウンドは当然ながら違うんだけど、そもそも「ソウル・ミュージック」というものが、サムの創ったジャンルなんだから、サムの歌に違いがないということの意味は大きい。

 

 

実は本音を言うと、ソウル・ミュージック転向後のサムの歌声は、特にスタジオ録音では少しスムースで滑らか過ぎる気がして、引っかかりがなく、いろんなブラック・ミュージックを聴いていると、最初は少し物足りなく感じていた頃があった。ナット・キング・コールがアイドルだったらしいから、当然だけどさ。

 

 

それに比べたら、ソウル・スターラーズ時代の歌唱は、やはり滑らかであるとはいえ、少し荒々しさがあるし、やや濁った声で強くシャウトするような瞬間もある。ゴスペル時代のサムで、僕が一番好きな「タッチ・ザ・ヘム・オヴ・ヒズ・ガーメント」などでもそうだ。どっちかといと、そういう方が好きな僕。

 

 

ゴスペル時代もソウル・ミュージック時代も、サムの歌い方はほぼ同じと言ったそばから、少し違うと言ったり、なんか僕も矛盾しているみたいだけど、どっちも僕の正直な気持なんだよね。多くのサム・クック・ファンの方々には、おそらく納得していただけるはず。今もゴスペル時代が好きではあるけど。

 

 

ソウル・スターラーズ時代のスペシャルティ録音全集三枚組のラストには、ライヴ録音が三曲収録されていて、これら三曲は、僕はこの三枚組ボックスで初めて聴いたものだった。そのうち、特に後半の二曲「ビー・ウィズ・ミー・ジーザス」と「ニアラー・トゥ・ジー」が、背筋が凍りそうなほど凄まじい。

 

 

サム・クックはソウル転向後も、ライヴ録音の方が圧倒的に凄いけど、ゴスペル時代もそうだったことがよく分る三曲だった。もっともっと聴きたいんだけど、ソウル・スターラーズ時代のライヴ音源は、他に存在しないんだろう。オーティス・レディングも真っ青のザラついた声で、激しくシャウトしている。

 

 

ちょっとそれ貼っておこうかな。

 

「ビー・ウィズ・ミー・ジーザス」→ https://www.youtube.com/watch?v=3tbL_4VaoPU

 

「ニアラー・トゥ・ジー」→ https://www.youtube.com/watch?v=yODRHN9IKjI

 

どこで歌っているのかなあ?女性の歓声が凄くて、サムの歌がよく聞えない瞬間があるほどだね。

 

 

こんなに凄いんだから、世俗歌手に転向せず、ゴスペルを歌い続けていたらよかったんじゃないかとすら思ってしまうけど、そんな風に思うのは、まあ多分僕だけなんだろう。一般的にはサム・クックはゴスペル歌手というより、ソウル・ミュージックの創始者としての評価が著しく高いわけだからなあ。

 

 

ところで『ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック』というCD、今日も聴いたけど、今聴くとかなり音がショボイよね。これはCD時代初期のものだからなあ。今では、これに収録されている殆どの曲が、もっとちゃんとした音質のCDで聴ける。唯一の問題は、ラストの「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」だ。

 

 

「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」、サムの書いた曲では最高傑作だろうし、曲調と歌詞の内容も相俟って、公民権運動の時代を代表する大名曲。無数のカヴァーも存在するんだけど、長年CDでは『ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック』でしか聴けず、ストリングスもシンセサイザーで出しているみたいな音だったもんなあ。

 

 

どうやらアブコとRCAの間で権利関係の問題があって、なかなかCD収録されなかったらしい。「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」が実に効果的に使われていた1992年の映画『マルコム X』でも、そのサントラ盤にこの曲は収録されていなかった。そのシーンこそが、映画で一番印象深い場面だったのに。

 

 

「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」が収録されているオリジナル・アルバム『エイント・ザット・グッド・ニュース』が、初めてちゃんとCDリイシューされたのは、かなり遅く2003年になってのこと。それまではストリングスが少しシンセサイザーによるものみたいに聞えていたのも、きちんと聞えるようになった。

 

 

でも『エイント・ザット・グッド・ニュース』というアルバム、全体的にはポップ時代のナット・キング・コールによく似ていて、「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」以外は、個人的にはちょっとだけ食足りない感じがする。SACDや紙ジャケ(日本盤)でも出ているらしいけど、それらは僕は知らない。

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