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2015/12/20

ストーンズには「見張塔」をカヴァーしてほしい

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18年くらい前だったか、ボブ・ディランで卒業論文を書きたいという学生の卒論指導をしたことがある。僕が勤務していた大学は、音楽大学でもなければ音楽専攻コースがあったわけでもない。普通の文系学部しかない大学で、ロックなどポピュラー・ミュージックで卒論を書きたいという学生が出ると、僕が一手にその面倒を見ていただけにすぎない。

 

 

さて、そのボブ・ディランの最高傑作は『ブロンド・オン・ブロンド』だと信じている僕だけど、個人的な好みだけで言うと、今では『ジョン・ウェズリー・ハーディング』が一番好きだったりする。どうしてなのか、自分でもイマイチよく分らない。アクースティック・ギター中心のサウンドが好みなのかなあ?

 

 

『ジョン・ウェズリー・ハーディング』は、ベースはエレベだけど、それ以外は一曲でペダル・スティールが入る以外、ディランのアクースティック・ギターとハーモニカと歌、そしてドラムスという、まあ地味な編成。今ではそれが大変に心地いいんだよなあ。最近アクースティック音楽指向になっているし。

 

 

でもアクースティック・ギター中心のサウンドといっても、デビュー作から『アナザー・サイド・オヴ・ボブ・ディラン』までのほぼアクースティック・ギター一本だけのディランの音楽は、今では全く聴かなくなったしなあ。ああいうのよりは、断然それ以後のエレクトリック・サウンドのディランを聴きたいもんなあ。

 

 

ボブ・ディランは、僕だってほんのちょっと前までは、エレクトリック・ロック路線の方が圧倒的に好きでよく聴いていた。そっちの方がディランの本来の本領発揮なんじゃないかと、それは今でもそう思っている。1964年のニューポートでのいきなりのエレクトリック路線転向は、彼の音楽的発展の必然的帰結だったもん。

 

 

ディランに限らず、ロック全般について、エレクトリック・サウンドの方が断然好きだった。昔から大好きなレッド・ツェッペリンなんかでも、ファースト・アルバムから、結構アクースティック・ギターを使っているけど、以前はそういうのがあまり好きではなく、エレキ・ギターがハードに鳴り響くものの方が好きだったもんなあ。

 

 

それがなんというか、この数年、もちろん派手なエレクトリック・サウンドの音楽(ロックに限らない)も、相変らずよく聴きはするけれど、どっちかというとアクースティックで、しかもオーケストラとかではなく、比較的少人数編成の音楽の方が、快適に感じるようになってきている。

 

 

それはおそらく少し前から、トルコ古典歌謡が大好きになって、それが殆ど生楽器の少人数編成で、しっとりと歌を聴かせるものが多いから、それがきっかけだったんじゃないかと思う。そういうのが大好きになると、今度はジャズやロックなどでも、少人数のアクースティック嗜好が強くなった。

 

 

僕もそれなりに歳取ったってことでもあるんだろうなあ。日本人は歳取ると演歌が好きになるとかよく言われるけど、僕は今のところはそうはなっておらず、というか演歌や浪曲は昔から好きなものが結構あるので、それは聴くんだよなあ。それに演歌は結構派手なエレキ・ギターが鳴っていたりするんだよね。

 

 

ボブ・ディランの『ジョン・ウェズリー・ハーディング』では、歌の合間に入るソロは、ラスト・ナンバーでペダル・スティール・ギターが絡む以外は、全部ディラン自身のハーモニカで、昔はギター・ソロが間奏で入るものの方が好きだったんだけど、このアルバムでは、そのハーモニカがなかなかいい感じ。

 

 

『ジョン・ウェズリー・ハーディング』は、ディランのアクースティック路線「回帰」の作品と言われたりして、確かにその前の『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』『追憶のハイウェイ61』『ブロンド・オン・ブロンド』と、エレクトリック路線が続いていたから、それも分らないでもない。

 

 

もっとも、ディランの場合は、1960年代半ばのエレキ・ギター導入後も、アクースティック・ギターだってほぼ同じくらい弾き続けているし、中にはアクースティック・ギター中心というアルバムだってあるんだから、「転向」とか「回帰」とかいうのは、違うんじゃないかという気もする。70年代の最高作『血の轍』だって、アクースティック・ギター中心だしね。

 

 

その1974年録音、75年発売の『血の轍』は、70年代ディランの最高作であると同時に、個人的にも70年代ディランでは一番好きでよく聴くアルバム。一曲目の「タングルド・アップ・イン・ブルー」とか九曲目の「シェルター・フロム・ザ・ストーム」とか、たまらない。次作の『欲望』も大好きだけど。

 

 

要するにディランは、1965〜66年頃、マイク・ブルームフィールドやザ・バンド(ホークス)などをバック・バンドに起用して、大胆にエレクトリック・サウンドを取入れたわけだけど、結局その後もアクースティック・ギターをよく弾いて、それ中心の作品も多い。フォーク路線への回帰では全然ない。

 

 

となると、僕が『ジョン・ウェズリー・ハーディング』が一番好きなのは、アクースティック少人数編成のせいじゃないのか?じゃあなんなんだ?ただ、一つはっきり言えることは、このアルバムの音楽は、それ以前の電化路線三作と、録音が直前だった『地下室』セッションを経過したものであるこということ。

 

 

特に、同じ1967年の約一・二ヶ月前の録音だった、ザ・バンドとの『地下室』セッションの成果が、『ジョン・ウェズリー・ハーディング』にはしっかり活かされている。その『地下室』は1975年まで公式発売されなかったから、『ブロンド・オン・ブロンド』の次作ということになり、突然の路線変更に見えるだけ。

 

 

実際『ジョン・ウェズリー・ハーディング』収録曲の多くが、直前の『地下室』セッションの中で既に産まれていたものらしい。ディランはそれらを『地下室』セッションのウッドストックから、ナッシュヴィルに持っていき、ほんの一ヶ月後に現地のリズム・セクションを起用して録音したということになる。

 

 

さらにそのナッシュヴィルでのレコーディング終了後、ディランはザ・バンドのロビー・ロバートスンとガース・ハドスンに連絡し、その録音テープにオーヴァーダビングして完成させてくれと依頼したらしい。テープを聴いたロビーとガースは、付け加えるものはなにもないと判断し、結局そのまま発売された。

 

 

『ジョン・ウェズリー・ハーディング』を聴けば分るけど、全ての曲がカントリー・ロック路線というか、ルーツ・ロック、つまり『地下室』セッションと同様の、古いアメリカーナにインスパイアされてできあがっているようなものばかり。いろんなロックの中でも、僕は特にそういったものが大好きだからなあ。

 

 

そういう『ジョン・ウェズリー・ハーディング』収録曲は全部好きだけど、やはり特に四曲目の「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」がたまらなく大好き。翌年1968年にジミ・ヘンドリクスがカヴァーしたおかげで、ロック・リスナーには、おそらく一番有名なディラン・オリジナルだろう。

 

 

 

正直に告白すると、このジミヘン・ヴァージョンの「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」が、僕はイマイチ好きではない。悪くはないと思うものの、『エレクトリック・レディランド』の中では、一番聴かない曲なんだなあ。ジミヘンより、ローリング・ストーンズにカヴァーしてほしかったという気持だ。

 

 

なぜストーンズかというと、ストーンズは1995年頃、ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」をライヴでカヴァーしていて、録音もしている(『ストリップト』収録)。数多いディランの曲の中からどうしてあれだったのかよく分らないけれど、「ウォッチタワー」の方が似合っているような気もする。

 

 

ディランの『地下室』や『ジョン・ウェズリー・ハーディング』は1967年録音だけど、ストーンズも68〜72年頃、米カントリー・ロックや米ルーツ・ロック路線だったことがあって、ライ・クーダーやLAスワンプ勢を録音に参加させてアルバムを作っていたもんなあ。「ウォッチタワー」は好適だと思うんだ。

 

 

ストーンズが「ライク・ア・ローリング・ストーン」をカヴァーしていた頃、当時やっていたパソコン通信の音楽フォーラムで、あるストーンズ・ファンの方が「次にストーンズにカヴァーしてほしいディラン・ナンバーは?」とアンケートをやったことがあった。

 

 

その時僕が、それなら断然「オール・アロング・ザ・ウォッチタワー」だと答えると、るーべん(佐野ひろし)さんに、その回答は分りやす過ぎると少し笑われたことがあった(『ベガーズ・バンケット』の便所ジャケットを参照)。でも、熱心なディラン・ファンにして熱心なストーンズ・ファンなら、誰だって「ウォッチタワー」を思い浮べるんじゃないかな。

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