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2016/01/27

ECMはチック・コリア&ゲイリー・バートンの『イン・コンサート』を出し直せ

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チック・コリアの、彼自身名義のリーダー作では、ゲイリー・バートンとやった1979年のチューリッヒ・ライヴ『イン・コンサート』が一番いいと思っているんだけど、同じように思っているファンはどれくらいいるのだろう?このLP二枚組ライヴ盤、翌80年のリリース当時からかなり評価が高かったし、今でもそうだろう。

 

 

「彼自身名義のリーダー作では」とわざわざ書くのはなぜかと言うと、チック・コリアに関して、僕の聴いたなかでは、マイルス・バンド在籍時代、特に1969年のライヴ録音での演奏の方が、チックのたくさんのリーダー作よりはるかに素晴しいと僕は思っているからだ。全部フェンダー・ローズだけど。

 

 

例外的にフェンダー・ローズを弾いていないのが二枚だけあって、一枚は1968年の『キリマンジャロの娘』。ここではウーリッツァー(?)を弾いているが、それもエレピには違いない。もう一枚は(公式では)四枚組『ライヴ・イン・ヨーロッパ 1969』の三枚目で、アクースティック・ピアノを弾いている。

 

 

しかしその1969/11/5のストックホルム公演ファースト・セットでも、最初はフェンダー・ローズを弾き始めるんだけど、それが故障しているらしく、盛大な雑音を撒散らすので、チックも諦めてアクースティック・ピアノに切替えただけだ。セカンド・セット(その公式盤四枚組には、なぜか未収録)では直ったらしいフェンダー・ローズに戻る。

 

 

というわけだから、マイルス時代のチックが最初からアクースティック・ピアノでの演奏を試みているものは、ただの一つもないというのが正しい。そして、1969年マイルス・バンドでのチックのフェンダー・ローズは、実に過激でフリーキーで最高だ。スタジオ録音では『ビッチズ・ブルー』が一番いい。

 

 

チックのフェンダー・ローズを有名にしたのは、リターン・トゥ・フォーエヴァーらしいという話を、大学生の頃からよく見るし、まあ一般的はそうなんだろう。僕はこのバンドに関しては、昔アナログ盤では結構聴いたものの、現在CDでは最初の二枚しか買い直していない。

 

 

リターン・トゥ・フォーエヴァーは、初期よりもアル・ディ・メオラがいた頃の方が凄いんだという話もよく見るし、<フュージョン・ロック>なる造語を捻り出して、その頃のRTFを高く評価する向きもあるらしい。分らなくもない意見なんだけど、個人的にはあの頃のRTFにはもう関心がない。

 

 

リターン・トゥ・フォーエヴァー関連で、今の僕が一番いいと思っているのは、スタン・ゲッツ名義の1972年録音『キャプテン・マーヴェル』だ。これは裏RTFとでも言うべき名盤で、フェンダー・ローズのチックにスタンリー・クラークのウッド・ベースなどの編成で、チックの曲を多くやっている。

 

 

一曲目がご存知「ラ・フィエスタ」だし、「クリスタル・サイレンス」もあるし、それ以外もビリー・ストレイホーンの名曲「ラッシュ・ライフ」以外は全部チックの自作曲なのだ。つまり『キャプテン・マーヴェル』の実質的リーダーはチックであって、聴くと彼のエレピが主導権を握っているのがよく分る。

 

 

しかも、このアルバムはドラムスがトニー・ウィリアムズなのも、個人的にはポイントが非常に高い。一曲目「ラ・フィエスタ」を、このアルバムのヴァージョンと、リターン・トゥ・フォーエヴァーのヴァージョン(ドラムスはアイアート・モレイラ)で聴き比べると、いかにトニーのドラミングが凄いかがよく分る。

 

 

もちろんアイアートのドラムスがダメという意味じゃない。アメリカでは主にパーカッショニストとして有名になった彼だけど、元々ドラマーだし、いいとは思うんだけど、言っちゃあ悪いがトニー・ウィリアムズとは勝負にならないと僕は思う。また、サックスもスタン・ゲッツとジョー・ファレルとでは力量が違う。

 

 

話がかなりフェンダー・ローズ方面に逸れた。ゲイリー・バートンとの『イン・コンサート』に話を戻すと、冒頭の「セニョール・マウス」がいきなりの超絶名演で、これを聴いただけで大名盤なのだと確信できるものだった。いやあ、何回聴いても凄いね。

 

 

 

「セニョール・マウス」は、1972年のゲイリー・バートンとの初デュオ作品のスタジオ録音『クリスタル・サイレンス』でも一曲目だけど、全然比較にならないほど79年のチューリッヒ・ライヴの方が凄い。僕は最初に後者の方で知った曲だったので、後からスタジオ・ヴァージョンを聴いて、かなり物足りなかった。

 

 

「セニョール・マウス」は、タイトルでも分る通り、スパニッシュ・スケールを使った曲で、チックはかつてのボスであったマイルス並にスパニッシュにこだわっているような気がする。チックのスペイン風ナンバーって、いつ頃からあるんだろう?僕の知る限りでは1972年の「ラ・フィエスタ」が初。

 

 

僕は特にチックの大ファンというわけでもないので、彼の全録音を聴いてはおらず、だから僕が知らないだけで、もっと前からありそうな気はするなあ。マイルスがスパニッシュにこだわったのは元妻フランシスの影響もあったようだけど、チックの場合、元々スペイン系の血を引いているから、そのせいなのか?

 

 

マイルス・バンド時代、『ビッチズ・ブルー』に「スパニッシュ・キー」があって、一応スパニッシュ・スケールを使ってはいるものの、曲名に反して、出来上りはあまりスペイン風な感じはしない。しかしチックのエレピは、この曲がアルバム中一番いい演奏をしているね。特にキュー出しのフレーズが凄い。

 

 

チックの自作曲では、先に書いたように「ラ・フィエスタ」が僕の知る限り一番早いものだけど、一般に有名なのは、どっちかというと、リターン・トゥ・フォーエヴァー二作目『ライト・アズ・ア・フェザー』収録の「スペイン」の方だろう。「アランフェス協奏曲」のフレーズからはじまるあのヴァージョンは、あまり好きじゃないけど。

 

 

僕の聴いた少ないヴァージョンで、チックの弾く一番いい「スペイン」は、1991年マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァルでの、ゴンサロ・ルバルカバとのデュオ・ヴァージョンだ。 ゴンサロはキューバ人ピアニストだから、スペイン風は得意だしね。

 

 

 

このゴンサロとのデュオによる「スペイン」、僕は当時現場で聴いた。「スペイン」はアンコールみたいな形でラストに演奏されたもので、これの前にデュオ・インプロヴィゼイションをやっていた。ただそれは長いだけで、ちっとも面白くなかったので、それもYouTubeにあるかもしれないが、探していない。

 

 

ゲイリー・バートンとの『イン・コンサート』。「セニョール・マウス」同様、1972年に同デュオによる初演がある「クリスタル・サイレンス」も、このライヴ・ヴァージョンの方がドラマティックな展開になっていて、はるかにいいように聞える。その他数多く既発曲をやっているけど、全部そうだよなあ。

 

 

『イン・コンサート』はLPでは二枚組だったのが、CDでは一枚になっているけど、二曲カットされている。ゲイリー・バートンのソロ・ヴァイブとチック・コリアのソロ・ピアノの二曲だ。それらを入れて全部収録すると約83分になってしまうし、デュオ演奏でもないしというので、カットされたんだろう。

 

 

しかし、そのそれぞれのソロによる二曲、なかなか出来がいい。LPでは僕は大好きだった。CDでもどうして二枚組にして全曲オリジナル通りに収録・発売しないんだ?僕には理解できない。そのカットされた二曲が聴けるCDは、四枚組『The ECM Recordings 1972-79』だけ。

 

 

その二曲以外は全音源がCDでも既発のもので、僕も全部持っている。その二曲をCDで聴きたいがためだけにその四枚組を買ったけど、まさかECMはファンのそういう買い方を想定して、『イン・コンサート』を全曲収録の二枚組CDにしないんじゃないだろうなあ。疑っちゃうぞ。

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コメント

チックコリアの話ですね。ECMのゲイリーバートンとのデュオアルバム。私は「クリスタルサイレンス」から順番にレコードで聴いてました。当時トリオから発売されてましたよね。「クリスタルサイレンス」を聴いたときはかなり感激した覚えがあります。次の「デュエット」は輸入盤ですぐ手に入れて、「インコンサート」も発売されたらすぐに買ったと思います。たしかに「インコンサート」が一番テクニカルですごかった印象があります。この3枚はレコードのみでCDは買ってませんので、ソロの2曲が抜けているのは知りませんでした。3枚目以降はCDでそろえたと思います。ただ、最初の3枚以上の興奮はありませんでした。
リターン・トゥ・フォーエバー時代も、特に好きなのは最初の2枚です。私もスタン・ゲッツの「キャプテン・マーヴェル」は大好きで、レコードでA面ばかり聴いてました。A面の最後トニーのしめのドラム音で満足してB面には行きません。確かこのメンバーでライブレコードも出てましたがイマイチでしたね。
70年代のチック・コリアだと、後「ソロ」、「妖精」と「フレンズ」は良く聴いてましたね。
マイルス時代のチックは、マイルスバンドの中ではエレピ(フェンダーロードス)が一番うまい人だと思ってました。ハービーよりはエレピを理解して弾いていたような気がします。(あまり聞き込んでいませんが)
「スペイン」は、この曲が入っていたら、ついCD買っちゃいます。「TWO FOR THE ROAD」のギターデュオも良いですね。
80年以降のチックはあまり聴いてません。チョコチョコつまみ買いしてますが・・・。久々に2013年の「The Vigil」買ってみましたが、70年代を意識しいる感じがします。

TTさん、アクースティック・ピアノでもフェンダー・ローズでもその他の鍵盤楽器でも、チック・コリアやキース・ジャレットは、どう逆立ちしてもハービー・ハンコックには敵わないと思いますよ。

なお、Fender Rhodesは、フェンダー・ロードスではなく、フェンダー・ローズです。

あら、そうなんですか。3人のなかで鍵盤楽器が一番うまいのは、キース・ジャレットだと思ってました。ハービー・ハンコック、聞き直します。
あと、すみません。私の言語能力は無茶苦茶いい加減です。

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