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2016/01/08

再び蘇るオスマン古典歌謡〜『Meydan』

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いやあ、やはり何度聴いても素晴しすぎる。カラン配給のアラトゥルカ・レコーズ第二弾『Meydan』。このアルバム・タイトル、トルコ語の発音に自信がないけれど、『メイダン』でいいはず。一応、各国語の発音を実際に音を出して教えてくれるサイトでも確認した。

 

 

『メイダン』は、トルコ本国では昨年11月にリリースされている。アラトゥルカ・レコーズのTwitter公式アカウントをフォローしているので直後に知って(その数ヶ月前に、ヤプラック・サヤールが新作を録音中とツイートしていたので、出るのは分っていた)、すぐにエル・スールさんに取寄せを依頼し、現在問い合せていただいている最中なんだけど、これがいつ入荷するのかサッパリ分らない。

 

 

そうこうしているうちに、一昨日水曜夜に、まあこんなものがあるわけないよなと思いつつ物は試しと、何の気なしにiTunes Storeで検索してしまったのが、ラッキーというかアンラッキーというか、見つかってしまったのだ、『メイダン』が。嬉しいと同時に大いに困り、五秒ほど悩んで買ってしまった。CDだって買うのに、我ながらアホな金の使い方だ。でもゾッコンだから我慢できなかったんだよなあ。

 

 

それでもう聴きまくっているわけだけど、Macで聴き、CDRに焼いてオーディオ装置で聴きして、もう十回は聴いただろうか。とにかく水曜夜に発見してダウンロード購入して以来数日間、もうこれしか聴いていないという有様。それくらい素晴しい内容なのだ。再び21世紀に蘇ったオスマン古典歌謡。

 

 

これ以下の文章は、アルバム・タイトルと曲名以外には完全に音しかないという、完全にデータなしの状態で書くもので、音だけもらってデータなしでライナーやレヴューを書くこともあるらしい音楽ライターさんの気持とはこういうもんなのかと、ほんのちょっぴり分ったような気分。いろいろと間違っているだろうけれど、ご容赦を。

 

 

2014年秋の第一作『Girizgâh』で聴き慣れているはずの音楽で、『メイダン』だって、中身は金太郎飴状態というか、同じようなものなのに、なぜか新鮮で何度聴いても聴き飽きるどころか、どんどん良くなるスルメ状態。ほぼ全員聴き慣れた声の歌手達で、少人数のシンプルな伴奏もほぼ同じだ。

 

 

しかし最大の違いは、『Girizgâh』も全体的に哀感に富むとはいえ、活き活きと快活な感じもあったのに対し、『メイダン』は、これはもう哀感なんてもんじゃなく、悲哀に満ちたというか、これ以上に音から悲哀が伝わってくる音楽って、他にあるのだろうかと思ってしまうほど、物悲しい感じ。

 

 

いきなり出だしの一曲目「アマン・カナ・ベニ・サッド・エト」からして、イントロのカヌーンのサウンドがそんな感じだし、合唱による歌がはじまると、まるで悲劇映画で人がさめざめと泣いているようなシーンにピッタリ似合いそうな、そんな悲しいフィーリングの旋律だ。すぐに男性独唱になる。

 

 

その男性独唱(声で誰だか分るけれど、音しかなくデータが一切ないので、間違っていたらいけないから書かない)による旋律を聴いていると、なんだかひどく落ちこんで塞ぎ込んでいる時の自分の気持にそっと寄添ってなぐさめてくれているような、そんな感じだなあ。独唱の背後に女声合唱の伴唱が小さく入る。

 

 

二曲目もそんな悲哀に満ちた曲調で、こんなのが続くのなら、それはそれでちょっとしんどいかもなと思いながら聴き進むと、三曲目からはそうでもなく、『Gizizgâh』で聴き慣れたオスマン古典歌謡の世界に戻ってくる。しかし哀感調であることに変りはない。オスマン古典歌謡とはそんな音楽のようだし。

 

 

もちろんなかには少し快活な感じがする曲もある。10曲目の「イチム・ヤニヨール・カビム・カニョール」などはそうだ。悲哀に満ちてもいないし暗い感じでもなく、やや明るく軽快なナンバー。楽器奏者の伴奏も躍動していて、それに乗って歌う女性歌手も跳ねている。まあしかしこういうのは例外的だ。

 

 

17曲目「コック・ヤシャ・セン・アヤシェ」も、女性歌手の歌い方が、明るいというのではないけれど、かなり跳ねていて、特にフレーズの末尾ごとに、まるで米ロカビリー歌手みたいにクイッとしゃくり上げるような感じで、元からそういう旋律の曲なんだろうけど、こういうのは、アラトゥルカ・レコーズの音楽では聴いたことがない。

 

 

書いたようにほぼ全員聴き慣れた声の歌手(一人か二人、知らない声が混じっている)だし、特にアラトゥルカ・レコーズの歌手達のなかで最も愛するヤプラック・サヤールが単独で歌う数曲は、これとこれだということは間違いないと思うんだけど、やはりこれもデータがなく間違っていたらいけないので、書かない。

 

 

ダウンロードした音源は、人名のところが全て “Alaturka Records” になってしまい、誰が歌っているか分らないのだ。これは『Girizgâh』CDをインポートした時もそうだったので、その時はCDブックレットの記載を見ながら全部手動で歌手名を一曲ずつ全部入直したけれど。

 

 

まあヤプラック・サヤールに関しては、あまりに好きすぎて、贔屓の引倒しみたいなことになってしまうし、それでますます耳が曇ることになっているだろうから、やっぱり書かない方がいいだろう。CD現品が到着して確認するまでの楽しみに取っておこう。ヤプラック以外も、だいたい全曲誰だか分るんだけどね。

 

 

当然『Girizgâh』とダブっている曲があるわけはなく、全曲聴いたことのない「新曲」だ。そうは言っても、当然全部19世紀末〜20世紀初頭のオスマン帝国時代のトルコで創られ歌われ、なかにはSP録音された曲ばかりのはず。それを21世紀の新録音で再現したもので、「新しい」音楽ではない。

 

 

『メイダン』での少人数の当然完全アクースティックな伴奏陣は、『Girizgâh』の時よりもさらに少人数になって、多くの曲で伴奏楽器は一つか二つ。それでじっくりと歌手の歌を聴かせるようなアレンジになっているものが多い。しかも前奏や間奏で入るだけで、歌の背後では弾かなかったりする曲もある。

 

 

『Girizgâh』でも、じっくり歌を聴かせるようなアレンジになっていたけれど、ここまでではなかった。まるで無伴奏で歌うのが伝統の英国トラッドでも聴いているような気分だ。一曲か二曲、全く楽器なしのアカペラもある。アラトゥルカ・レコーズのリーダー、ウール・イシュクの意向なんだろう。

 

 

アラトゥルカ・レコーズによるオスマン古典歌謡って、まあ激シブというか地味というか、歌手の歌だってしっとりと落着いているような雰囲気のものばかりだけど、時折刺すような鋭さを感じることがあるよね。鋭さとか強靱さといったものが歌にあるというのは、世界中の優れた大衆音楽に共通するもの。

 

 

そんな具合で、『メイダン』では楽器奏者は完全なる脇役、音が聞えはするものの、あくまで歌をサポートする役目しか果していない。なかではウール・イシュク(だと思うけど)の弾くチェロが、やや目立つ。『Girizgâh』の時よりもたくさんチェロの音が聞えて、先月のコンサートの時のようだ。

 

 

伴奏楽器では、チェロの他ではカヌーンも目立つ。というかカヌーンが伴奏楽器のなかでは一番の主役みたいに聞える。先月の大阪でのコンサートの際も、カヌーンは、ウール・イシュクのチェロ同様活躍していた。チェロかウード、カヌーン、クラリネット(その他管楽器)、あとはほんのわずかな打楽器程度だね。

 

 

アルバム中、26曲目(CDでは二枚目九曲目)の「バハール・ファスリ」が、なぜか17分近くもあるという、この種の音楽にしては珍しいはずの長尺曲。この曲では歌以外の楽器奏者の演奏部分も長く聴けるし、合唱や独唱による歌も躍動的。いつも淡々としている彼らにしてはちょっと珍しく、ドラマティックな曲展開だ。

 

 

それにしても『Girizgâh』でもそうだったし『メイダン』でも、他の曲はSPサイズの三分〜五分程度なのに、この17分近いという長さはなんなんだろう?聴いていると、時々聴き慣れたようなメロディも聞えるような。まあ録音技術発明前の生演奏では、この程度の長さがザラにありはしたんだろうけれど。

 

 

そんなわけで、既に大いに楽しんでいる『メイダン』。CDが入荷したらそれももちろん買う。僕は配信で先に聴いてもCDで聴く楽しみが減るということが全くない人間で、昨年のベストテン第一位に選んだレー・クエンも第四位のファーダ・フレディもそうだった。そういうことだから、エル・スールの原田さんよろしくお願いしますね!

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コメント

相変わらずいろんな音楽を聴かれてますね。
iTunes Storeにありますね。この方のアルバムが2種類。
試しにamazonで試したところ、こちらにもありました。が、3200円と200円高いです。単品も1曲200円と割高ですが、「Girizgâh」の方が、プライムで無料で聞けそうです。
ただ、全部同じに聞こえます。

TTさん、アラトゥルカ・レコーズによるオスマン古典歌謡は、『Girizgâh』と『Meydan』の二つ(どっちも二枚組)しかありませんので。どんな音楽だって、聴き慣れない最初のうちは、「全部同じ」に聞えるもんです。どんどん繰返し聴いていくうちに、徐々に違いや面白さが分ってきますので、諦めずに。二つとも中身が超一品であることだけは、保証します。

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