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2016/01/15

クリーンな「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」

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ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を、冒頭に前の曲の余韻が入っていないクリーンな単独状態で聴いたというのは、映画『イマジン』のサントラ盤が初だったように思う。リリースが1988年だから、ビートルズのCD化と同じ頃だけど、『イマジン』を買った方が、ちょっとだけ早かったような。

 

 

タイトルで分る通り『イマジン』は、ジョン・レノンの伝記映画だったらしい。「らしい」というのは映画本編は僕は観ていないのだ。なのにどうしてそのサントラ盤だけ買ったんだろうなあ。その辺は全く記憶がないけど、憶えているのはこれを買ったのが、新宿丸井地下のヴァージンメガストアだったこと。

 

 

ビートルズ時代の曲をはじめ、解散後のソロ・ナンバーとか、代表曲ばかりいろいろとまとまって聴けるので、店頭で見て、これはいいなとでも思ったんだろうなあ。書いたようにビートルズの初CD化とほぼ同時期だけど、『イマジン』の方で先に、九曲あるビートルズ・ナンバーをCDで聴いたはず。

 

 

聴いてみると、入っている六曲目の「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」が、冒頭に前の曲「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(リプリーズ)」末尾の観客の拍手がかぶさっていないクリーンな状態で入っていて、こういうのは初めて聴いたのだった。ご存知の通り、アルバム『サージェント・ペパーズ』では、これら二曲は繋がっていて、冒頭に拍手がかぶっている。

 

 

ビートルズのベスト盤であるいわゆる俗称『青盤』に、「ア・デイ・ザ・ライフ」が単独で入ってはいたものの、アナログ時代の『青盤』収録の同曲は、やはり『サージェント・ペパーズ』同様に、前曲末尾の拍手がかぶさって入っていたので、これはもうこういうもんなんだろうと思っていたんだよね。

 

 

だから『イマジン』サントラ盤で、完全なクリーン状態で存在する「ア・デイ・ザ・ライフ」を聴いた時は、あ、ちゃんとこういう形でテープが残っているんだと、ちょっと驚きでもあった。スタジオ録音で連続で演奏・収録されたわけじゃないんだから、当然なんだけど、何十年もファンは聴いていなかった。

 

 

その後、CDリイシューされた『青盤』には、『イマジン』サントラ盤同様に、完全クリーン状態での「ア・デイ・イン・ザ・ライフ』が収録されるようになっている。僕の知る限りではこの二つだけじゃないかなあ。僕はビートルズの公式ベスト盤は『赤盤』『青盤』しか聴いていないので、知らないだけかも。

 

 

書いておくと、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」という曲は、僕は別に嫌いじゃないけど(嫌いなビートルズ・ナンバーなど一つもない)、そんなに大好きではないし特に思い入れもなくこだわっていたわけでないけれど、このバンドには強い気持を持っていたので、知りたかっただけ。

 

 

以前も書いたけど、僕が自分のお金で買ったビートルズの音源は、1987/88年の公式初CDリイシューが初だった。もちろん自分で買わなくても、ほぼ全て聴けたので特に困りもしていなかったのだ。でも自分で一つも買っていないという事実には、少し引け目を感じていて、CD化の際に一気に全部買揃えた。

 

 

僕は1962年生れ(つまりビートルズと同年デビュー)なので、同時代的にはビートルズは全く憶えていない。むしろ解散後のジョンやポールやジョージのソロ活動をリアルタイムで追掛けていたのだった。だから大学二年の時にジョンが射殺されたニュースを知った時は、かなり衝撃だったのを憶えている。

 

 

とはいえ、ジョンのソロ活動も好きではあったけど、どっちかというとポールやジョージのソロ・アルバムの方が好きだった。ジョンは歌詞の意味にも重きを置く曲が多い人だったので、それだけにかえってちょっと遠慮したい気持になることがあったんだなあ。

 

 

その点ポールの曲の歌詞はだいたいどれも普通のどうってことないラヴ・ソングだから、歌詞に気を取られることなく、彼の書くキレイなメロディを楽しむことができた。ジョージの場合は、長い間『オール・シングズ・マスト・パス』と『コンサート・フォー・バングラデシュ』の人だという認識だった。

 

 

だから1987年の久々の傑作『クラウド・ナイン』にはちょっと驚いて、その翌年の、ボブ・ディランやロイ・オービスンやジェフ・リンらとやったトラヴェリング・ウィルベリーズ一作目もよかったから、なんだかその頃ようやく凄く良くなってきた人だなあというような考えを持っていたのだった。

 

 

もっともビートルズ時代のジョージのオリジナル曲は大好きで、ひょっとしたらジョンやポールの曲よりいいんじゃないかと思うことすらあったんだけどね。一連のインド風の曲ではなく、「タックスマン」「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」「サヴォイ・トラッフル」「サムシング」など。

 

 

特に殆ど注目されないと思うんだけど、『ホワイト・アルバム』二枚目B面の「サヴォイ・トラッフル」が、なぜだか僕はビートルズ時代のジョージの曲では一番好きで、出だしのスネアからもう大好きでたまらない。ひょっとしてサックス・セクションが活躍する辺りが、ジャズ好きの僕は好きだったのかも。

 

 

ジョージといえば、1995年のビートルズ「再結成」。この時に創られた「新曲」二曲でも、ジョージのギターが素晴しくよくて、ひょっとして80年代末からのジョージは、活動のピークにあったのではないかとすら思ったくらいだった。「フリー・アズ・ア・バード」のスライドなんか絶品だよねえ。

 

 

あの「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラヴ」の二曲では、僕はもう断然前者の方が好き。冒頭のリンゴのスネア二発がバンバン!と鳴る瞬間に、もう心を奪われてしまい、直後に出るジョージのスライド・ギターでもうメロメロになる。音程が不安定になりやすいスライドで正確無比な演奏を聴かせる。

 

 

もちろん「リアル・ラヴ」だって大好き。ここでも間奏のジョージのソロがいい。この曲は、最初に書いた1988年のサントラ盤『イマジン』一曲目に、ジョンのアクースティック・ギター弾き語りによるデモ・ヴァージョンが入っていたので、知っていた曲だった。それがあんな風に仕上るなんてね。

 

 

「リアル・ラヴ」のアクースティック・ギター弾き語りデモは、ジョンが1979/80年に計六つ録音してあったらしく、サントラ盤『イマジン』一曲目に収録されたのは、六つ目のヴァージョンのようだ。95年の「再結成」ビートルズが、どのヴァージョンを基にして制作したのかは、全く知らない。

 

 

いずれにしても、1988年のサントラ盤『イマジン』が、僕がビートルズやジョンのソロ作品をCDで聴いた最初だったことは間違いない。最初期の録音が「ツイスト&シャウト」で、最後期の録音が「スターティング・オーヴァー」「ビューティフル・ボーイ」「ウーマン」。ジョンのキャリア全体を見渡した、よくできたアルバムだったと思うよ。

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