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2016/01/29

ダイナ・ワシントンはブルーズこそが美味しい歌手

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熱心なジャズ・ファンだから、ダイナ・ワシントンという歌手を知ったのも、大学生の頃に『縁は異なもの』というジャズ・レコードでだった。その頃は普通のジャズ歌手なんだと思っていた。もちろんあのレコードもなかなかいいアルバムだし、ごく普通のジャズ・ファンにも人気のある歌手ではあった。

 

 

『縁は異なもの』は1959年のアルバム。もちろんマーキュリー録音。ストリングスやコーラスも入って、なかなか豪華な創りだった。でもアルバム・タイトルのスタンダード・ナンバー以外は、今では全く憶えていない。つまりCDでは買い直していない。いろいろとスタンダードをやっていたはず。

 

 

同じ頃、「煙が目にしみる」とか「アンフォーゲッタブル」などのスタンダード・ナンバーが入っているアルバムがあったはずで、それも大学生の頃に聴いていた記憶があるんだけど、今調べてもどのアルバムなのか分らない。『アンフォーゲッタブル』というアルバムがあるけど、「煙」は入ってないしなあ。

 

 

「ハーバー・ライツ」や「ラヴ・レターズ」とかも入ってたはずなんだけど、ホントなんのアルバムだったんだろうなあ。あと、大学生時代は、「恋人よ我に帰れ」などが入った、クリフォード・ブラウンとの共演盤も好きでよく聴いていた。ブラウニー目当で買ったわけだけど。

 

 

余談だけど、ブラウニーにはダイナの他、サラ・ヴォーン、ヘレン・メリルとの共演盤がある。ブラウニーのソロに関する限りは、ヘレン・メリルとの共演盤が一番いいように思う。あれだけは、クインシー・ジョーンズがいいアレンジをしているせいもあるんだろう。ブラウニーのソロもよく配置されている。

 

 

もちろんブラウニーと共演しているその三人の歌手としての力量を比較したら、ヘレン・メリルは数段落ちる。サラとダイナ、いや、ダイナが一番上なんだろうという気がするけどね。でも普通のジャズ・アルバムとして聴いたら、クインシーのいいアレンジのせいで、ヘレン・メリル盤が一番いいんだよね。

 

 

さて、そういう普通のジャズ歌手としか思っていなかったダイナ・ワシントンだけど、僕が大学三年か四年の時に、マーキュリー録音の『スリック・チック(オン・ザ・メロウ・サイド)』という二枚組LPが出て、それにたくさんブルーズやR&B系の録音が入っていた。あれで少し認識が変ったのだった。

 

 

今となっては、その二枚組LPにどんな曲が入っていたのかはすっかり忘れてしまった。しかし、それまで聴いていた『縁は異なもの』などのジャズとは、かなり雰囲気が違っていたことだけはハッキリ憶えている。同じ頃、ダイナが<ブルーズの女王>と呼ばれていることも知った。

 

 

ネットで調べたら出てきた→ http://www.discogs.com/Dinah-Washington-A-Slick-Chick-On-The-Mellow-Side-The-Rhythm-Blues-Years/release/4811208 「リズム&ブルーズ・イヤーズ」の副題は忘れていたけど、確かにそういう内容だなあ。「イーヴル・ギャル・ブルーズ」とか最高なんだけど、当時はこのLPでしか聴けなかったはず。ブルーズの女王の呼称に相応しい内容だ。

 

 

ブルーズの女王はベシー・スミスなんじゃないかと言われそうだけど、ベシーの称号は "Empress of the Blues"、すなわち<ブルーズの皇后>だ。そのブルーズの皇后であるベシー・スミスは、何度も書いているけど、大学生の頃からレコードを愛聴していたのだった。

 

 

ダイナもベシー・スミスからの影響が強い人だということを知ったのは、もうちょっと先のことで、ダイナにベシー・スミス集のアルバムもあることだって、かなり後になって知ったことだった。もっとも随分後になって聴いたそのダイナのベシー・スミス集自体は、あまり感心できない内容ではあったけど。

 

 

以前書いた繰返しになるけれど、1961年デビューのソウルの女王アリサ・フランクリンが、そうなるのは67年にアトランティックに移籍し、マッスル・ショールズで録音してからで、それ以前のコロンビア時代は、ジャズなどをたくさん録音している。

 

 

ちなみに、そのコロンビア時代のアリサ・フランクリンには、『アンフォーゲッタブル』という、ダイナ・ワシントンのへのトリビュート・アルバムがあって、ジャズ・ナンバーだけではなく、例の「イーヴル・ギャル・ブルーズ」などのブルーズ・ナンバーも歌っている。

 

 

さて、ブルーズの女王というダイナ・ワシントンの称号の意味を本当に実感できるようになったのは、僕の場合はCD時代になってからだなあ。1990年代半ばに『ファースト・イシュー』という二枚組と、『ザ・クイーン・オヴ・ザ・ブルーズ』という四枚組が出て、それに初期のブルーズ録音がたくさん入っていた。

 

 

特にCharlyという英国の怪しい(?)レーベルから出た『ザ・クイーン・オヴ・ザ・ブルーズ』の一枚目オープニングは、「イーヴル・ギャル・ブルーズ」「ソルティ・パパ・ブルーズ」「ブロウ・トップ・ブルーズ」という三連発で、もうこれで完全にノックアウトされちゃった。

 

 

なかでも1947年録音の「ブロウ・トップ・ブルーズ」は、ライオネル・ハンプトン七重奏団をバックに(というか、ハンプトンのリーダー名義のシングル盤だけど)吹込んだもので、40年代というブルーズ〜ジャンプ系バンドだったハンプトンのバンドと、一番資質が合うようなダイナの持味発揮の名唱。

 

 

 

いいよねえ、ダイナの歌も、冒頭に出るテナー・サックスも、前奏や間奏で入るハンプトンのヴァイブラフォンも全部。こういうのを聴くと、ダイナ・ワシントンという歌手は、やはりブルーズ歌手なんだと実感。僕のなかでは、これがダイナの最高傑作ということになっている。

 

 

そういうのをCDで聴始めた1990年代後半に、ダイナ・ワシントンのマーキュリー録音は、CD三枚組七つという巨大な全集があると教えてもらって、慌ててそれを全部買った。見てみたら、80年代末期に出ているのに、気が付かなかったんだなあ。これは児山紀芳さんの仕事だ。

 

 

しばらくは、その三枚組×7という巨大サイズのマーキュリー録音完全集を聴きまくっていた。マーキュリー録音なら、ブルーズも大学生の頃にLPで親しんでた後年のジャズ録音も、全部入っている。この全集はホント最高だった。これが、日本人ジャズ・ジャーナリストの児山紀芳さんがやった仕事だというのも、なんだか嬉しかったよね。

 

 

最近の2010年(だったかな?)にダイナ・ワシントンの1940年代から50年代初期のキーノート、デッカ、マーキュリーの全シングル集をコンパイルした『ファビュラス・ミス・D!』というCD四枚組が出て、これはおそらく40年代キーノートのシングル盤録音を全部入れた最初のものだったはずだ。

 

 

その『ファビュラス・ミス・D!』という四枚組CDが、ダイナ・ワシントンのアルバムでは、今では最高の推薦盤だね。ブルーズ〜R&B〜ジャズの中間くらいで歌う、ダイナの歌手としての特質が非常によく分るし、なにより歌が生涯で一番旨味を発揮していた時期だ。一枚目前半なんかたまらない。

 

 

 

ちょっと高いけれど、最高に素晴しくて、一生の宝物になるよ。ブルーズ系のリスナーの方々はこういうダイナをとっくにご存知だろうけど、ダイナをちょっとブルーズの得意な普通のジャズ歌手だと思っているジャズ・ファンの方々にも聴いてほしいな。

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