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2016/02/08

凄すぎる60年代末のJBライヴ

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ジェイムズ・ブラウンの1968年ダラス・ライヴ『セイ・イット・ライヴ・アンド・ラウド』が、何度聴いても凄すぎる。これ、ひょっとしたらJBのライヴ・アルバムでは一番凄いんじゃないだろうか?初めて聴くわけじゃないし、1998年だったかな、初めてリリースされた時に聴いて衝撃だったんだけど。

 

 

大学生の頃に最初に買ったジェイムズ・ブラウンのレコードは『ライヴ・アット・ジ・アポロ Vol.II』。これは当時LPでバラ売り二枚だった。二枚組ではない。冒頭のMCが最高で、間髪置かず「シンク」が始った瞬間にKOされてしまった。マーヴァ・ウィットニーとのデュオ。

 

 

大学生の頃はジャズのレコードばかり買っていて、他の音楽を買っていいと思っても、あまり追求しなかったんだけど、ジェイムズ・ブラウンだけはいろいろとレコードを買っていた。それくらい、あのアポロ・ライヴのファンク・ミュージックはショックだった。特にギターとドラムスが最高に好きだった。

 

 

初期の『プリーズ・プリーズ・プリーズ』や『トライ・ミー』とか、1960年代末期の『コールド・スウェット』や『セイ・イット・ラウド〜アイム・ブラック・アンド・アイム・プラウド』とか、71年のアポロ・ライヴ盤『リヴォルーション・オヴ・ザ・マインド』(これも凄かった)とかも買って聴いた。

 

 

また東京に出てきてからも、1986年リリースの二枚組コンピレイション・アルバム『イン・ザ・ジャングル・グルーヴ』を買って、これも愛聴していた。このアルバムは、リリース当時のヒップ・ホップ・シーンでのJBサンプリング人気を受けて、その元ネタ集みたいなものとしてリリースされたものらしい。

 

 

さて、あの1967年録音のアポロ・ライヴの中でも、特に凄いと思って繰返し聴き、今でも愛聴しているのが、オリジナルLPでは一枚目B面だった「ゼア・ワズ・ア・タイム」〜「アイ・フィール・オール・ライト」〜「コールド・スウェット」のメドレー。この時のバンドは、ギターが二本でドラマーも二人。

 

 

その二本のギターの絡み(一人がコード・カッティング、もう一人がシングル・トーン弾き)が、もうたまらなく最高だ。バンド全体も一糸乱れず渾然一体となって盛上げている(なにしろJBのバンド訓練は厳しかったらしく、ライヴでもミスをしたらギロリと睨まれ、しかも罰金だったようだ)。

 

 

「ゼア・ワズ・ア・タイム」〜「アイ・フィール・オール・ライト」の猛烈なグルーヴ感も物凄く、完全に虜になってしまったわけだけど、JBが ”Cold Sweat, Hit It!” と叫んだ瞬間にパッとバンド演奏がチェンジしてしまう辺りの劇的な展開にも、大いに感心した。

 

 

1970年代電化マイルス・デイヴィスのライヴで、ワン・ステージが全曲繋がって、マイルスのキュー一つでバンドの演奏がパッと瞬間的かつ劇的にチェンジするのは、どう考えても、この頃からのJBのライヴ盤を聴いて、ヒントを得ていたに間違いないと思う。

 

 

同じ1960年代末頃のファンク・ミュージックでは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのライヴでも、ワン・ステージがほぼ全曲繋がっているのが、去年出たフィルモア四枚組で確認できるけど、当時はスライの単独ライヴ盤はなかったからなあ。マイルスはスライのライヴにも足を運んでいたかもしれないけどね。

 

 

JBの1967年アポロ・ライヴでの「ゼア・ワズ・ア・タイム」は、これだけ取りだして編集されて、1968年のスタジオ・アルバム『アイ・キャント・スタンド・マイセルフ』に収録されている。これも大学生の頃に買って聴いていたレコードの一枚。

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このアポロ・ライヴ二枚、CDになった時(それは二枚組だったはず)にもすぐに買って愛聴していたけど、2001年にこれのデラックス・エディションが出て、当時のライヴがほぼ完全に再現され、リマスターもされていい音でリリースされた時は、そりゃもう嬉しかった。

 

 

ただ、あのデラックス・エディションでちょっと残念だったのが、元のLP(と最初のリイシューCD)では、MC「イントロダクション・トゥ・スタータイム」から間髪入れず「シンク」だったんだけど、デラックス・エディションでは、「シンク」が一枚目一曲目で、MC「イントロダクション・トゥ・スタータイム」が二枚目冒頭だった。

 

 

これが当日のライヴそのままを再現したものなんだろう。「シンク」がファースト・セットで、MC「イントロダクション・トゥ・スタータイム」がセカンド・セット。ということは元のオリジナルLPは、かなり編集されていたことが分ったわけだ。考えたらそれは当然だっただろうけどね。

 

 

とはいえ、昔の(確か1987年リリースの)CDは、もう音がショボく聞えるので、今更あれを聴く気にもなれず、悩んだ僕は、結局そのデラックス・エディション音源から、Audacityというアプリを使って自分で編集し、オリジナルLP通りに作り直して、それをCDRに焼いていつも聴いているんだよねえ。

 

 

余談だけど、Audacity、Windows版もあるオーディオ・ファイル編集ソフトで、フリーウェアなのに高機能で重宝している。トラックが切れているものを一個ずつ抜出すなら、iTunesでピックアップすれば済むけど、スタジオ・アルバムでもライヴ・アルバムでも、一繋がりの部分から切取ったりするのには、これを使っている。

 

 

さて、ジェイムズ・ブラウンのLP、CDをたくさん買って聴いてきたけど、JBも多くのソウル歌手の例に漏れず、やはりシングル盤中心の人なので、1991年に出たCD四枚組ボックス『スター・タイム』は重宝した。僕みたいなヤワなソウル・ファンは、こういうのでもないとなかなか。

 

 

しかしながら、その『スター・タイム』も既に持っていた音源と結構ダブるし、この四枚組CDボックスを一度は全部通して聴きはしたものの、その後は全曲通して聴くということは殆どなく、この曲・あの曲と一つ一つピックアップして聴くだけなんだよなあ。

 

 

iTunesができて、それに『スター・タイム』をインポートしてからは、そうやって一曲単位でピックアップして聴くということがしやすくなったので、それでまた最近はあの四枚組を聴直すことも多くなった。それにしてもジェイムズ・ブラウンのカタログは整理されていないよね。

 

 

ジェイムズ・ブラウンくらいの大物になれば、そのうち待っていればコンプリート集が出そうな気がしないでもないけど、JBもマイルス・デイヴィスやフランク・ザッパみたいにアルバム数がむちゃくちゃに多い人だし、またその二人と違ってJBは、録音レーベルも多いから、なかなか難しいのかなあ。

 

 

そしてジェイムス・ブラウンもまたライヴで本領を発揮して、スタジオ・アルバムよりライヴ・アルバムの方がはるかに凄い人だよねえ。書いたように僕もその1967年アポロ・ライヴ二枚でノックアウトされて、JBに惚れちゃったわけだから。

 

 

一番最初に買って聴いて惚れたものだから、やはり一番思い入れがあって大好きなのは、1967年録音の『ライヴ・アット・ジ・アポロ Vol.II』なんだけど、最初に書いたように98年に出た68年ダラス・ライヴ『セイ・イット・ライヴ・アンド・ラウド』が、今では一番凄いライヴ盤のように聞える。

 

 

こんなに凄いライヴ盤が、録音から30年間もリリースされていなかったのは、前年1967年録音のアポロ・ライヴLP二枚を68年にリリースしていたばかりだったというのと、もう一つ、このライヴの四ヶ月前にマーティン・ルーサー・キングが暗殺されたばかりだったという事情も考慮したんだろうね。

 

 

ジェイムズ・ブラウンは、恒例のアポロ・ライヴを1990年代にも一枚残しているけど、もうあの辺はちょっとなあ。やっぱり67〜71年頃のライヴが、脂が乗りきっていて最高に凄い。71年アポロ・ライヴの『リヴォルーション・オヴ・ザ・マインド』も壮絶だったもんねえ。

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