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2016/02/18

二枚組LP偏愛主義

Thewhitealbum

 

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最近は『アビー・ロード』の方が好きかもなと思い始めているんだけど、長い間僕の中でのビートルズは『ホワイト・アルバム』が一番だった。何回か書いているように、アナログ時代の僕は二枚組LP偏愛主義で、理由はイマイチ思い出せないけど、ゴチャゴチャたくさん聴けて楽しそうと思ったのかも。

 

 

スッキリまとまった一枚物LPアルバムの統一感とかトータリティなんてものを、最初から殆ど意識も重視もしない音楽リスナーだった僕。今でもそれはあまり変っていないので、聴けば聴いたでアルバムの曲順とか流れとかよく分るし素晴しいと感心したりするんだけど、さほど大切にも思っていないのだ。

 

 

とはいうもののビートルズの『ホワイト・アルバム』の曲順というか流れは、非常によく考えられ練り込まれたものだろうと、聴く度に実感する。例えば一枚目A面の「ディア・プルーデンス」が終って、バンバンとリンゴのスネアが二発鳴って「グラス・オニオン」がはじまる瞬間なんか、たまらんよねえ。

 

 

これはほんの一例で、『ホワイト・アルバム』には、他にもたくさん同じような唸ってしまう曲の流れが存在し、二枚組ではあるけれど、バラバラなゴッタ煮のような感じが全くしないのは、さすがと言うしかない。バラバラだというならバンドのラスト・アルバム『レット・イット・ビー』の方がそんな感じ。

 

 

『レット・イット・ビー』の方は、バンドの実質的解散後に、プロデュースを依頼され膨大なセッション・テープを任されたフィル・スペクターがなんとかまとめ上げたというもので、元々のセッション自体が一部を除きだらしないものなんだから、良く出来ていると言うべきなんだろう。

 

 

そういう『レット・イット・ビー』(と『マジカル・ミステリー・ツアー』)を除けば、それ以外はやはり二枚組の『ホワイト・アルバム』より、他の一枚物アルバムの方がはるかにまとまりはいいよね。特に1967年の『サージェント・ペパーズ』以後は、そういうアルバムの創り方をするようになったし。

 

 

なかでも録音順ではバンドのラスト・アルバム『アビー・ロード』の統一感は群を抜いて素晴しい。特にみなさん強調するようにB面のメドレーは、おそらくロック・アルバム史上最も完璧な片面なんだろうと僕も強く実感する。それでもやっぱり僕はいろいろたくさん聴ける二枚組の方が好きなんだよね。

 

 

理由の一つに、1970年代マイルス・デイヴィスのアルバムが、どれもこれも二枚組ばっかりだったというのもあったと思う。69年8月録音で、翌年3月にリリースされた『ビッチズ・ブルー』以後は、スタジオ作もライヴ作も、『ジャック・ジョンスン』と『オン・ザ・コーナー』を除き、全部二枚組。

 

 

以前どなただったかロック・ファンの方が、1970年代マイルスは、当時買って聴いて凄い凄いと思いはしたものの、どれもこれも二枚組ばかりだから、いつも聴き返すのがしんどくて、だから普段から聴き込んでいるマイルス・マニア以外には、なかなか普段聴き返す人は少ないだろうと言っていた。

 

 

おそらくそういうのも理由の一つで、ある時期に『レコード・コレクターズ』誌のマイルス特集号の記事執筆のお鉢が僕に廻ってきたというわけだった。1998年頃のことだったと記憶している。昔もその頃も、普段からマイルスの1970年代二枚組も頻繁に聴いていたし、そのことをよく話題にしていたから。

 

 

エリック・クラプトンだって、最初に聴いたのがデレク・アンド・ザ・ドミノスの『レイラ』で、もちろんLP二枚組。もっともこれはCDでは一枚になっている。こういうの、実に多いよね。ジミ・ヘンドリクスの『エレクトリック・レディランド』も、ローリング・ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』も。

 

 

スティーヴン・スティルスの『マナサス』だって、今はCD一枚だけど、元はLP二枚組だった。ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』なんか、片面聴き終ってひっくり返すこと三回、それが楽しかったんだけど、今はそういうことはなくなった。いいのかよくないのかイマイチ分りにくいねえ。

 

 

明らかによくないのは、LP二枚組で出ていたアルバムをCDリイシューする際に、一枚に収録できないという理由で一部カットしてあったりするものだ。マジック・サムの『ライヴ』だって、デルマークの米盤CDはそうだ。これはPヴァインの国内盤CDは、二枚組で全曲収録してあるから、まだいいよ。

 

 

なかには全曲収録ではない一枚物リイシューCDしかこの世に存在しないものがあるからね。以前も触れたけど、チック・コリアとゲイリー・バートンの1979年チューリッヒ・ライヴ『イン・コンサート』もその一つ。どうしてECMはちゃんと二枚組で全曲収録したのを出さないのか、理解できないね。

 

 

あのライヴ音源に関しては、『ジ・ECM・レコーディングズ 1972-79』というチック・コリアとゲイリー・バートンの全共演を収録した四枚組に、全曲収録されてはいるけど、一枚物CDからはオミットされている二曲以外は、全部CDでも既発だからなあ。ECMもあくどい商売の仕方するよねえ。

 

 

そういうわけで僕も含め熱心なファンは、その二曲だけのためにその四枚組を買っているわけだけど、こういうことは勘弁してもらいたい。二枚組LPで出ていたのもので、約78分というCD一枚の収録時間に入らないものは、ちゃんと元通り二枚組CDでリリースしてほしい。他にもいろいろあるよね。

 

 

LP時代から三枚組とか四枚組とかそれ以上とか、そういうものもあったわけだけど、そういうのはだいたい大抵過去音源のリイシュー物ボックスで、新作アルバムで三枚組とかいうのものは珍しかった。僕はサンタナの『ロータス』(LP三枚組)くらいしか知らない。きっと他にもいくつかありはしたんだろう。

 

 

そのサンタナの『ロータス』は、僕はCDでしか聴いておらず、しかも最初CDでは二枚組で出た(現在はオリジナル通り三枚組CD)ので、なんだか実感がなかったんだよなあ。だからアナログ時代の新作アルバムで三枚組というのは体験したことがないのだ。音楽を熱心に聴始めて約十年でCD時代になったし。

 

 

マイルス関連で触れたように、普段から二枚組ばかり聴くという人は珍しいらしいんだけど、それが本当なら僕はやや例外的な音楽リスナーかもしれないなあ。以前書いたようにジャズのレコードばかり買っていた大学生の頃は、LPを片面ずつ一枚聴いては取替えるという聴き方だったんだけど、例外もあった。

 

 

二枚組というものは、特別に配慮しない限り雑多なゴッタ煮状態になるのが普通だと思うし、アルバムのトータリティというものを重視する音楽家やリスナーは、あまり好きではないらしい。僕は早くに戦前のSP音源が大好きになったので、それのLPリイシューはもちろん諸々の詰合わせなんだよね。

 

 

そんな、詰合わせ状態のSP音源のLPリイシューばかり聴いてきたせいで、どうも僕はまとまりのあるアルバムのコンセプトとか統一感とかそういうものより、ゴチャゴチャいろいろとたくさん聴けるものの方が好きになっちゃったんだろうなあ。それで一曲単位で取りだして聴くのも、別になんの抵抗もなく普通にやる。

 

 

そしてそういう聴き方をするリスナーにとっては、一枚物より二枚組の方が楽しいんだ。書いたように現在のCDリイシューでは全曲が一枚に収録されているものもたくさんあるから、ちょっと長いなと思うだけで、賑やかな楽しさは少し減じてしまっているような気がする。

 

 

ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』もスティーヴン・スティルスの『マナサス』も、二枚組で聴いた方が面白さが伝わりやすいような気がするんだよねえ。各面そういう創り方をしてあったし。こういう言い方は、若いリスナーにはただのレトロ趣味、オヤジの世迷言に聞えるかもしれないけどさ。

 

 

そんなことを言う僕も、今はアナログ・レコード・プレイヤーが自室にないので、CDしか聴いていない。かつてのLP二枚組でCDリイシューでは一枚になっているものは、当然それを聴くわけだ。それでもかつての記憶が残っているから、ストップせずそのまま通して聴いても、頭の中では自動的に二枚組的処理がされているんだよね。

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コメント

「レコード・コレクターズ」の事が書いてありましたので、「へー」と思って家に帰って見てみると、たまたま買った中にありました。1999年2月号のマイルスのビッチェス・ブリューBOXが出たときの特集ですね。「サークル・イン・ザ・ラウンド」、と「ディレクションズ」と「1969マイルス」について書いていらっしゃいますね。「1969マイルス」はすぐにまた聴きたくなりました。
高校時代、2枚組は、お金持ちの友人が買った物を借りてテープにとって聴くことが多かったです。ビートルズの2枚組、ディランの2枚組、岡林信康の「狂い咲き」(3枚組)というのもありましたが、全てテープで聴いてました。買えるようになったのは大学に入ってからです。ただ、やっぱり2枚組以上はテープにとって聴くことが多かったです。テープにとらなくなったのはCDになってからです。
レコード時代、サンタナ「ロータス」(3枚組)もジャケット欲しさに買いましたが、シカゴの「アット・カーネギーホール」(4枚組)もジャッケットの厚さに感動してお茶の水ディスクユニオンで買いました。レコード時代はCDと違って存在感がありましたね。
確かに、チック・コリアとゲイリー・バートンの「イン・コンサート」CDではレコードのサイド3の各人のソロ演奏が丸々カットされてますね。出して欲しいです。

TTさん、『レコード・コレクターズ』誌のあのマイルス特集号では、実は最初、『イン・ア・サイレント・ウェイ』や『ビッチズ・ブルー』など、他のアルバムも担当することになっていて、その記事も書上げて編集部にメールで送信済だったんですが、いろいろと事情があって、他の方になりました。なお、あれをきっかけにしばらく同誌に、マイルスやジャズ関係の記事を中心にいろいろと書いていました。

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