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2016/02/03

ニューオーリンズ発のブラスバンド音楽

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ダーティ・ダズン・ブラス・バンドの1986年モントルー・ライヴ盤がブレイクしたせいで、本国アメリカだけでなく、日本を含めた世界中で一気に人気が出たような感じのニューオーリンズ発のブラスバンド音楽。僕みたいな熱心なジャズ・ファンにも、とても新鮮で心地いい音楽なのだ。

 

 

一番新鮮だったのは、スーザフォンとかチューバとか、それまであまりポピュラー・ミュージックでは使われない管楽器を低音部担当として使ったことで、しかも単にベース部分担当というだけではなく、ソロを吹きまくったりするのは、それまであまり聴いたことがなかった。多くの人がそうだったと思う。

 

 

もっとも僕の場合は、ジャズの世界でギル・エヴァンスのアレンジしたオーケストラが大好きで、ギルは1940年代のクロード・ソーンヒル楽団時代から、よくチューバを使っていた。70年代にも例のジミヘン集における「ヴードゥー・チャイル」でチューバがメイン・メロディを吹くというアレンジだ。

 

 

もっともあの1974年のジミヘン集でギルがアレンジしているのは「アップ・フロム・ザ・スカイズ」と「リトル・ウィング」の二曲だけで、その他は別の人のアレンジ。チューバがメイン・メロディを吹く「ヴードゥー・チャイル」は、その当のチューバ奏者ハワード・ジョンスンのアレンジなのだ。意外だよね。

 

 

そうであるとはいえ、1940年代からチューバやフレンチ・ホルンを使ってアレンジしてきたのは、ギル・エヴァンスその人に他ならないので、ジミヘン集では他の人の名前がアレンジャーとしてクレジットされてはいるものの、やはり相当な部分でギル本人が関わっていたに違いない。

 

 

そういうギル・エヴァンスのサウンドが大好きで、昔からよく聴いていたから、ダーティ・ダズンなどブラスバンドの低音管楽器へのアプローチは、初めて耳にしたというのではない。でも新鮮に感じたのはなぜだったんだろうなあ。ファンキーなグルーヴ感のせいかなあ。

 

 

ブラスバンド自体は新しくもなんともない。発生期のジャズだって、南軍の軍楽隊が残した管楽器を使ってのブラスバンド音楽が母胎だったわけで、元々はピアノなどは入っていないホーン・アンサンブルだった。その発生当時は低音部分担当だって、ウッド・ベースは持歩けないから、チューバなど管楽器だった。

 

 

1910〜20年代の初期ジャズ録音に、そういう管ベース入りのものがある。あるいはライ・クーダーが1976年の『チキン・スキン・ミュージック』や78年の『ジャズ』で、そういう管ベース入り管楽器アンサンブルを再現している曲があるので、是非一度聴いてみてほしい。大変面白いよ。

 

 

または、ジャズ誕生以前の19世紀のアメリカ音楽、ゴットシャルクやフォスターやスーザなどの音楽も、管楽器アンサンブルで、録音で残っている一番古いものでも1910年頃からだけど、そういうものを聴いても、やはりチューバなどの管楽器がベースというか低音部担当の役割を果しているのが分る。

 

 

だから、1980年代にブレイクしたダーティー・ダズン(このバンドのデビューは1977年らしいけど)などのブラスバンドは、言ってみれば一種の先祖帰りみたいなものだったんだろう。100年近くそういうものが消えていたというか地下に潜っていたから、それを復活させてみると新鮮に聞えたという。

 

 

ダーティ・ダズンなど1970年代末期の彼らだって、全くの「無」からそういう発想を思い付いたはずがない。やはりアメリカの古い管楽器アンサンブルの音楽を研究して、そういうところから発掘して、スーザフォンやチューバを低音担当で使うという手法を復活させたに違いないと、僕はそう考えている。

 

 

ただまあ凄く古い録音を除けば、アメリカ音楽でそういうやり方をした管楽器音楽はあまりないから、それでダーティー・ダズンが登場してきた時に、それで「新しい」と思ってしまったんだろうなあ。今考えたら新しくもなんともない。ダーティ・ダズンやその他も、凄く魅力的な音楽ではあるけれどね。

 

 

ダーティ・ダズンもリバース・ブラス・バンドもそれ以外も、1970年代末以後の「新しい」ブラスバンドが、ほぼ全てニューオーリンズから出てきたというのは、もちろん偶然ではない。ジャズ誕生の地であるニューオーリンズは、それゆえにジャズ以前のブラスバンド音楽のメッカでもあったわけだから。

 

 

そして、例えばダーティー・ダズンの1986年モントルーでのライヴ盤(これで彼らは一気にブレイクした)では、ジャズ以後のニューオーリンズ音楽、例えばプロフェッサー・ロングヘアのナンバーなども取りあげている。もちろん管楽器(+打楽器)のアンサンブルでやっていて、大変に楽しい。

 

 

そういうアルバムで聴けるブレイク当時のダーティー・ダズンは、完全に管楽器と打楽器だけでいろんな音楽を構成していて、それが面白かったんだけど、ブレイク後はそれ以外のいろんな楽器奏者と共演するようになった。例えば1999年の『バック・ジャンプ』は、オルガンのジョン・メデスキとの共演盤。

 

 

僕はその1999年の『バック・ジャンプ』が、実を言うとダーティ・ダズンのアルバムの中では一番好きで、ジョン・メデスキのオルガンだけではなく、ヴォーカルなども入っていて、打楽器もシンプルなものではなく、完全なるフル・セットのドラムス。初期のようなシンプルさは消えてはいる。

 

 

ニューオーリンズのブラスバンドというのは、演奏しながら街中を練歩くというのが特徴だったわけで、だからオルガンなどの鍵盤楽器やほぼ座ってでしか叩けないフル・セットのドラムスなどは入りようがない。最初、ダーティ・ダズンが誕生した時も、そういう音楽の「復権」を目指していたはずだった。

 

 

もちろん、だからといって、『バック・ジャンプ』みたいなアルバムは、彼らがダメになったものだというつもりもは毛頭ない。書いたように、僕はこれが一番好きなダーティ・ダズンのアルバムだしね。ルイ・ジョーダン・ナンバーやマーヴィン・ゲイ・ナンバーも取上げていて、黒人音楽好きにはたまらないんだ。

 

 

しかしながら、一抹の寂しさを禁じ得ないのも事実なんだな。1995年頃にニューオーリンズ旅行した際に現地で聴いたドクター・ジョンのライヴの前座が、全く名前を聞いたことのないブラスバンドで、狭いステージに上がったそのバンドは、管楽器奏者だけで打楽器もなしだった。

 

 

そのブラスバンド、元気満点でやたらと威勢がよく勢いはあったけど、アンサンブルはかなり粗暴というか荒削りで、まあはっきり言って一流半、あるいは二流のブラスバンドとかし聞えなかった。ニューオーリンズにはこういう無名のブラスバンドがそりゃもう無数にあるのだということだけは知っていた。

 

 

そのニューオーリンズ旅行の際には、ストリートでも少人数のブラスバンドをいつくか聴いた。たとえ無名で前座であれ、ライヴハウスに出演できる(そしてお金がもらえる)ようなのは、まだかなりマシな方で氷山の一角なんだろう。ニューオーリンズというのは、そういう土地。

 

 

ダーティー・ダズンやリバースやその他などはCDアルバムも出して、世界中でそれが聴かれて有名になっているけど、CDなんか出せるわけもない無数のブラスバンドの存在などが、ニューオーリンズの音楽文化を支えているんだろうね。

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