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2016/02/21

古典ジャズ・ピアニスト達の競演

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ジャズ系の音楽のうち、ソロ・ピアノで奏でられるものでは、20世紀初頭のストライド・ピアノ(ハーレム・スタイル)が一番好きなもの。大衆音楽におけるソロ・ピアノではブギウギ・ピアノも最高に好きだけど、あれはちょっとジャズとも言いにくいだろう。ジャズにも大きな影響を与えてはいるけど。

 

 

ストライド・ピアノは、ピアノ一台だけで演奏される音楽で、これには当然ベースやドラムスといったリズム・セクションは付かない。そもそもピアノという楽器は、一台でオーケストラのような演奏ができるものだし、もしストライド・ピアノにベースやドラムスが入ったりしたら、邪魔で仕方がないはず。

 

 

ストライド・ピアノにリズム・セクションが付くわけないじゃないか、そんな録音はないだろうと言われそうだ。もちろんその通りだけど、僕の知る限り、ほんのちょっとだけあるんだなあ。そのうちの一つが、1965年ピッツバーグ・ジャズ・フェスティヴァルでの実況録音『ザ・ジャズ・ピアノ』だ。

 

 

この1965年ピッツバーグ・ジャズ・フェスティヴァルでは、目玉企画が<様々なスタイルのジャズ・ピアノを、それを創った人の演奏によって聴く>というもので、ウィリー・ザ・ライオン・スミス、アール・ハインズ、デューク・エリントン、メアリー・ル−・ウィリアムズなど、大御所が大勢出演しているのだ。

 

 

そのなかでメアリー・ルー・ウィリアムズただ一人が、古典スタイルではない演奏を披露している。特に「ジョイシー」。これは1922年にプロ・キャリアをスタートさせた人の演奏とは到底思えない1965年時点での最新型ジャズ・ロックで、ファンキー!

 

 

 

CDリイシューではLP盤時代には未収録だった音源も収録されて、この時のコンサートの模様がよく分るようになった。このアルバムに収録されているストライド・ピアニストは、ウィリー・ザ・ライオン・スミスだけなんだけど、アール・ハインズもエリントンも、その影響を隠さない演奏を披露している。

 

 

ウィリー・ザ・ライオン・スミスとかジェイムズ・P・ジョンスンなど、主に20世初頭に大活躍したストライド・ピアニストは、ジャズ界における初のオリジナルなピアノ・スタイルの持主だったと言ってもいいくらい。スコット・ジョップリンのラグライム・ピアノを初のジャズとする見方もあるけれどね。

 

 

しかしラグタイム・ピアノは完全記譜音楽だし、ジャズ初のピアノ・スタイルというより、ジャズ前史とでも言った方が正確なのではないだろうか。シンコペイトするリズムは、まあまあジャズ的ではあるけれど、まだまだジャズが本来持つフィーリングには乏しいように、僕の耳には聞える。

 

 

前にも書いたけれど、そもそも誕生直前〜誕生直後のジャズにピアノはなく、完全にブラスバンド由来の管楽器音楽として成立した。ピアノは一箇所に据置いて弾くしかない楽器だから、街中を演奏しながら練歩くニューオーリンズ・ジャズのアンサンブルの中には存在しようがない。

 

 

というわけなので、主に1910〜30年代が一番の流行期だったハーレム・ストライド・ピアノこそが、ジャズ界初のピアノ音楽だったと僕は見ている。録音で残っているのはその頃からだけど、ということはこのピアノ・スタイルは、その少し前から存在していたと考えて間違いないだろう。

 

 

さて、先に書いた1965年のライヴ盤『ザ・ジャズ・ピアノ』で、ウィリー・ザ・ライオン・スミスは、ソロで三曲披露している。どれも完全なるストライド・ピアノ・スタイルで、65年録音なので音質もいいから、彼のピアノ・スタイルが非常によく分って、古い録音は苦手という方にはオススメ。

 

 

一曲は「コントラリー・モーション」で、ウィリー・ザ・ライオンのオリジナル曲。それ以外の二曲はいずれもジャズ・スタンダード(一つは「ブルー・スカイズ」、もう一つはスタンダード数曲のメドレー)なので、ストライド・スタイルだけど、純然たるものではなくそれ以外の要素もかなり入っている。

 

 

というわけなので、ウィリー・ザ・ライオンのストライド・ピアノ・スタイルが一番分りやすい「コントラリー・モーション」をちょっと聴いてほしい。彼らの全盛期1920年代の録音も、ほぼこういう感じの演奏なのだ。こういうのが僕は大好きなんだよね。

 

 

 

そしてもう一曲、アルバム・ラストで、ウィリー・ザ・ライオンはじめ、アール・ハインズなど、ほぼ全員が勢揃いして、ハインズの曲「ロゼッタ」を代る代る弾いている。そして、これにはベースとドラムスが入っているというわけなのだ。ウィリー・ザ・ライオン・スミスがリズム付きで弾くのは珍しいはず。

 

 

その「ロゼッタ」を聴くと分るのだが、ウィリー・ザ・ライオンが弾く箇所(誰がどの順番で弾いているか書かれていないけど、スタイルが一聴瞭然なので、すぐに分る)だけが、やや異質に聞える。他のピアニストがベースとドラムス付きで普通に聞えるのに、ウィリー・ザ・ライオン・スミスの演奏ではそれが邪魔。

 

 

どうしてベースとドラムス、特にベースが邪魔というか不必要かというのは、これはもうはっきりしていて、ウィリー・ザ・ライオン・スミスもその他全員もそうだけど、ストライド・ピアノでは、左手の低音部が非常に強力だからだ。これはストライド・スタイル最大の特徴の一つ。これがあるから、独奏で充分。

 

 

<ジャズ・ピアノの父>との異名を持つアール・ハインズも、またデューク・エリントンも、そもそもジェイムズ・P・ジョンスンやウィリー・ザ・ライオン・スミスなどのストライド・ピアノの模倣から出発した人だった。エリントンなどは、ウィリー・ザ・ライオンが影響源であったことを隠さなかった。

 

 

それは、『ザ・ジャズ・ピアノ』に収録されているエリントンのピアノ独奏「セカンド・ポートレイト・オヴ・ザ・ライオン」にも、はっきりと表れている。 曲名がもちろんトリビュートだし、聴けば分るように露骨にストライド・スタイルだね。

 

 

 

なぜ「セカンド」が曲名に入っているかというと、エリントンは「ポートレイト・オヴ・ザ・ライオン」という曲を、1939年にコロンビアに録音しているからだ。ピアノ・ソロではなくオーケストラでの演奏。それは別にウィリー・ザ・ライオン・スミスの音楽的な影響は聴けないけれども、敬愛を込めての曲名だ。

 

 

またさきほど貼った音源を聴けば分るように、「セカンド・ポートレイト・オヴ・ザ・ライオン」では、ストライド・スタイルから、途中で突然印象派風のピアノに移行する。印象派スタイルも、エリントン・ピアノの大きな特徴の一つだった。二つの大きなスタイルが同居していて、大変面白い音源だよねえ。

 

 

また『ザ・ジャズ・ピアノ』一曲目のアール・ハインズ独奏「サムウェア」。 ここでも、ほぼ全面的にハインズが確立した右手の単音弾きスタイル(トランペット・スタイル)だけど、影響源だったストライド風な残滓が、かすかに聞けるように思う。

 

 

 

アール・ハインズは、その後に続くほぼ全員のジャズ・ピアニストに非常に大きな影響を与えていて、彼の右手単音弾きスタイルを踏襲していないジャズ・ピアニストは、ほぼ存在しないと言ってもいいくらいなんだけど、モダン・ジャズのピアニストとの最大の違いは、左手で弾く低音部の強力さだろう。

 

 

戦前のジャズ・ピアニストは、右手単音弾きスタイルでも、左手がかなりしっかりしていた。やはりハインズから非常に大きな影響を受けている、スウィング期のジャズ・ピアニストで僕が一番好きなテディ・ウィルスンだって、左手の低音部は強力。だから、ベニー・グッドマン・コンボにはベースがいない。

 

 

それもこれも、ぜ〜んぶ元を辿れば、ジェイムズ・P・ジョンスンやウィリー・ザ・ライオン・スミスなのだ。モダン・ジャズでも、セロニアス・モンクみたいに、ストライド・スタイルの継承者のような人もいる。僕はだからモンクのソロ・ピアノが大好き。ビル・エヴァンスのソロ・ピアノより断然いい。

 

 

やっぱりジャズでピアノのソロ演奏を聴くなら、ハーレム・ストライド・スタイルが断然一番いいね。それかあるいは、その強い影響下にある人達の演奏に限る。モダン・ジャズの世界で、僕がソロ・ピアノを聴くのはほぼ唯一セロニアス・モンクだけという、その最大の理由もそこにあるというわけなのだ。

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コメント

私の好きな古典派ピアニストを挙げるとアート・テイタム、エロール・ガーナー、ジョージ・シアリング、テディ・ウィルソンになります。アーマッド・ジャマルはモダンの人になるのかな。モンクももちろん大好きです。

テイタムはやっぱり神様。大抵の人(私も含む)はベン・ウェブスターを迎えたカルテットで入門となりますが、本当は30年代の「アーリーソロズ」とかの切れ味抜群の演奏を最初に聴いた方がいいと思う。ガーナーも「ミスティの人」になってしまっているのが残念。シアリングはアルマンド・ペラサを迎えたラテンタッチの演奏が最高にゴキゲンです。

「お前は甘口のカクテル派か?」と言われてしまいそうですが、華麗に響くピアノも捨てがたいのでこんな人選になってしまいます。

recio y romanticoさんが名前を挙げているピアニストは、僕も全員好きですよ。特にアート・テイタムこそワン・アンド・オンリーな真の天才ですね。テイタムに関しては、既に記事を書上げていますので、そのうちにアップします。

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