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2016/02/23

ウェザー・リポートのヴォーカル・ナンバー

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以前書いた通り、ウェザー・リポートの最高傑作曲は『ドミノ・セオリー』一曲目「キャン・イット・ビー・ダン」(https://www.youtube.com/watch?v=KNnPks3CQWM)だと思っているけれど、その次にいいと思うのが次作の『スポーティン・ライフ』四曲目(A面ラスト)の「コンフィアンス」だ。『スポーティン・ライフ』は、このバンドが最もヴォーカルを多用したアルバム。

 

 

『スポーティン・ライフ』というタイトルは、例のジョージ・ガーシュウィンのオペラ『ポーギー・アンド・ベス』の登場人物の名前だけど、どうしてこの名前がアルバム・タイトルなのかは、当時も今も僕には全く分らない。どなたかお分りになる方がいらっしゃったら、教えていただきたい。

 

 

ウェザー・リポートがヴォーカルを使った曲というのは、全アルバムを通して全部で14曲しかない。ヴォーカル曲だけのプレイリストをiTunesで作っているので分るだけ。デビュー・アルバムでアイアート・モレイラが歌ったり、その後ジャコ・パストリアスがハミングしているものは入れていないけれど。

 

 

デビュー・アルバムでアイアート・モレイラが少し歌うというか声を出しているものを除けば、ウェザー・リポートが初めてヴォーカルを使ったのは、次作1972年『アイ・シング・ザ・ボディ・エレクトリック』一曲目の「アンノウン・ソルジャー」だ。もっともやはり控目な味付け程度のものだ。

 

 

その後、1974年の『ミステリアス・トラヴェラー』に「ジャングル・ブック」が、75年の『幻想夜話』に「バディア」が、78年『ミスター・ゴーン』に「アンド・ゼン」が、79年のライヴ盤『8:30』に「ジ・オーファン」があるけれど、やはりどれもヴォーカルの使い方はスパイス程度のものでしかないもんね。

 

 

そういうわけなので、ウェザー・リポートが本格的な<歌>といえるものを歌うヴォーカリストを起用したのは、やはり以前も書いた通り、1983年『プロセッション』の「ウェア・ザ・ムーン・ゴーズ」が初だ。起用したのはマンハッタン・トランスファー。あんまり面白いとも思えないけれどね。

 

 

そしてその後は専門のヴォーカリストをたくさん使うようになり、そういうヴォーカル曲でのウェザー・リポートの最高傑作が1984年『ドミノ・セオリー』の「キャン・イット・ビー・ダン」ということになる。その次の85年『スポーティン・ライフ』には四曲もヴォーカル曲がある。

 

 

『スポーティン・ライフ』でも、前作で使って成功したカール・アンダースンを引続き起用し、またボビー・マクファーリン、ディー・ディー・ベルスン、アルフィー・サイラスなども参加していて、派手なヴォーカル・アルバムと言ってもいいくらいの内容。世評は全然高くないけれど、僕は大好きなアルバム。

 

 

その『スポーティン・ライフ』の四曲目「コンフィアンス」は、1981年マイルス・デイヴィスのカム・バック・バンドのパーカッショニストとして名をあげたミノ・シネルが書いたオリジナル曲で、ミノがパーカッションだけではなくアクースティック・ギターを弾きながら、本格的に歌っている大好きな一曲。

 

 

 

どうです?いいでしょう?ここでミノ・シネルが歌っているのは、英語とフランス語のピジン(混交語)だ。ミノはフランス出身だけど、父親がマルティニーク出身なので当地をよく訪れていたらしい。まあ歌詞の意味は僕には殆ど分らないけれどね。

 

 

1981年にマイルス・デイヴィス・バンドでデビューした時は、パーカッションしか担当していなかった(その姿を81年、83年の来日公演でも観た)ので、ギターもこれだけ弾き、なによりヴォーカルがこんなに味のある人だとは、全く想像すらしていなかった。初めて聴いた時はかなり驚いたんだよね。

 

 

解散後に知ったことだけど、ミノ・シネルは1984〜86年にウェザー・リポートに参加していた頃に、同バンドのライヴ・ステージでは結構歌っていたらしい。でもそれは全く知らなかったから、『スポーティン・ライフ』の「コンフィアンス」がミノのヴォーカルを聴いた最初だったんだよね。

 

 

でも1985年のリリース当時に聴いた時は、「コンフィアンス」や他のヴォーカル曲を、たいしていいとも思っておらず、やはりインストルメンタル・ナンバーの方が好きだった。「インディスクレションズ」やマーヴィン・ゲイの「ワッツ・ゴーイン・オン」のカヴァーや「フェイス・オン・ザ・バールーム・フロア」だね。

 

 

今の僕の耳で聴くと、『スポーティン・ライフ』のそういうインスト曲は、どこがいいのやらサッパリ分らない。唯一、ザヴィヌルのキーボードとショーターのソプラノ・サックスとのデュオ演奏「フェイス・オン・ザ・バールーム・フロア」だけが美しいなあと今でも感じる程度だ。あの曲のソプラノは絶品。

 

 

マーヴィン・ゲイの最有名曲「ワッツ・ゴーイン・オン」のインスト・カヴァーだって、サッパリダメだもんなあ。マーヴィンのオリジナルに倣って冒頭に人声の会話が入り、それは様々な言語によるもので、日本語だって聞えたりするけれど、シンセサイザーがメロディを弾く演奏は全然面白くもなんともない。

 

 

それに比べて、例えばB面一曲目の「パール・オン・ザ・ハーフ・シェル」などは、ボビー・マクファーリンの超絶技巧ヴォーカルをフィーチャーしていて、今聴いてもなかなか面白い。最初ショーターがテナーとソプラノを多重録音しているのかと思ったら、テナーに絡むソプラノみたいな音はマクファーリンの声だ。

 

 

「パール・オン・ザ・ハーフ・シェル」でヴォーカルを担当しているのはボビー・マクファーリンだけ。「コンフィアンス」もミノ・シネルだけだけど、その他のヴォーカル曲は全てコーラスだ。『プロセッション』でマンハッタン・トランスファーを起用して以来、ザヴィヌルはコーラスの方をよく使う。

 

 

そのマンハッタン・トランスファーを使った「ウェザ・ザ・ムーン・ゴーズ」は、ライヴ盤『ライヴ・アンド・アンリリースト』にも収録されていて、そこではザヴィヌル自身がヴォコーダーを使って歌っている。公式ライヴ盤に収録されているヴォーカル曲はこれだけ。他にもやってはいたみたいだけど。

 

 

昔はヴォーカル物よりインスト物の方が好きだったから、ウェザー・リポートでもそうだったけれど、最近は圧倒的にヴォーカルの入る音楽の方が好きだから、ウェザー・リポートでも『ドミノ・セオリー』とか『スポーティン・ライフ』といったアルバムが、昔よりもっと好きになってきているんだよね。

 

 

以前も書いた通り、1983年からのザヴィヌルがどうしてこんなにヴォーカルを多用するようになったのか、分るような分らないような、イマイチはっきりしないんだけれど、ウェザー・リポート解散後のソロ・プロジェクトでもヴォーカル・ナンバーが凄く多いし、最初からそういうポップな指向性の人なんだろう。

 

 

マイルス・デイヴィスのために書いた曲や、それを彼とともに録音したアルバムとか、その後の前期ウェザー・リポートで一躍有名人になったザヴィヌルで、僕もその時期にザヴィヌルを知ったんだけど、ヴォーカルの多用は、ポピュラー音楽としてのジャズのあり方を考え直すようになったということだろう。

 

 

ウェザー・リポートでも「キャン・イット・ビー・ダン」や「コンフィアンス」が最高だし、その後のソロ活動なんかヴォーカル曲ばかりだし、サリフ・ケイタと一緒にやったりと、そういう方がザヴィヌル本来の持味だったんだろう。ヴォーカル曲の方が好きだなんていうウェザー・リポート・ファンは、絶対に僕だけだよなあと思っていたら、以前四ッ谷いーぐるの後藤雅洋さんが、ザヴィヌルは「分っている」と言ったことがあったなあ。

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