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2016/03/21

デルタのマディ

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以前も一度だけ書いたけど、マディ・ウォーターズのアルバムのなかで個人的に一番好みなのは、シカゴに出てくる前の1941/42年にミシシッピで録音された『ザ・コンプリート・プランテイション・レコーディングズ』なのだが、まあこんなマディ・ファンはいないだろう。

 

 

マディの『ザ・コンプリート・プランテイション・レコーディングズ』は、92年だか93年だかにCDで初めて発売されたもので、元は国会図書館用のフィールド・レコーディング。そのCD化以前に聴けたのかどうかは全く知らない。どれを聴いても完全にギター弾き語りのカントリー・ブルーズ。

 

 

シカゴに出てきてチェスなどのレーベルに録音するバンド・スタイルの代表的なブルーズマンとして有名になる前のマディが、ミシシッピでデルタ・スタイルのカントリー・ブルーズマンだったことだけは一応知ってはいた。シカゴ時代にも少しそういう曲を残しているよね。

 

 

『ザ・ベスト・オヴ・マディ・ウォーターズ』のラストに収録されている「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」もその一つ。エレキ・ギターだしウッド・ベースも入ってはいるけれど、ほぼ完全にデルタ・スタイルの弾き語りカントリー・スタイルだ。

 

 

 

こういうのは、あのアルバムの中ではどっちかというと異色のナンバーで、他は完全にバンドでやるシカゴ・ブルーズ・スタイルだからなあ。僕も最初にあのアルバムを聴いた時は「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」は、ちょっとヘンな感じがして馴染めないというかあんまり好きじゃなかった。

 

 

もっとも僕はマディより先にロバート・ジョンスンのレコード二枚を聴いていて、デルタ・カントリー・スタイルのブルーズを知ってはいたんだけど、今考えたら、ロバート・ジョンスンの録音集にはデルタ・スタイルと同じくらいシティ・ブルーズ・スタイルに影響された曲があるからなあ。

 

 

最初ロバート・ジョンスンは「ラヴ・イン・ヴェイン・ブルーズ」みたいなシティ・スタイルのブルーズ・ナンバーの方が好きで、激しいデルタ・スタイルの曲はよく分らなかった。もっと正直に言えば、だいたいロバート・ジョンスンを本当にいいと思うようになったのは、CD二枚組で聴いてからだ。

 

 

1990年のロバート・ジョンスン完全集CD二枚組が爆発的に売れて、おそらくそれがきっかけで90年代はブルーズの古い録音が実にたくさんCDリイシューされた。大学生の頃から好きだった20年代のクラシック・ブルーズ等を除けば、僕が本格的に戦前ブルーズをディグするようになったのはその頃から。

 

 

ギター弾き語りのデルタ・ブルーズマンをいろいろと聴いたのも1990年代のことで、いざ聴いてみたら実にいいのでドップリはまっちゃったんだなあ。サン・ハウスやチャーリー・パットンなどの例の30年伝説のレコーディングもそれで聴いて、サン・ハウスの「マイ・ブラック・ママ」に大感動した。

 

 

トミー・マクレナンとかロバート・ペットウェイなども大好きになった。ちょっと毛色が違うけどスキップ・ジェイムズも好きだった。そんなこんなでたくさん聴いて、1990年代半ばにはデルタ・ブルーズが大好きになっていたから、マディの『ザ・コンプリート・プランテイション・レコーディングズ』も即飛びついて買った。

 

 

マディの『ザ・コンプリート・プランテイション・レコーディングズ』は、国会図書館用のフィールド・レコーディングだから商業目的ではない。その分マディもかえって伸び伸びと演奏し歌っているようにも思える。このCDにはブルーズ演奏に混じり、かなり多くのインタヴューが収録されていて、それもなかなか興味深い。

 

 

インタヴューではロバート・ジョンスンのことも語っている。それも1941年の録音で、ジョンスンが死んだのは38年のことだから、まだそんなに時間が経っていない。でもほんのちょっと出てくるだけで、ジョンスンの音楽やマディが具体的にどんな影響を受けたのかなどは喋っていないんだなあ。

 

 

やっぱりインタヴューよりギター弾き語りのブルーズ・ナンバーがなにより雄弁に物語っているよね。聴くとギター(アクースティック)はまだ控目というかどうってことない感じで、それよりヴォーカルがいいね。1941/42年の録音にして既に相当エモーショナルだ。この時既にマディは28歳。

 

 

一曲目の「カントリー・ブルーズ・ナンバー・ワン」は、ロバート・ジョンスンでお馴染みの「ウォーキン・ブルーズ」だ(エリック・クラプトンもカヴァーしているね)。ロバート・ジョンスンのオリジナルではなく、「キャットフィッシュ・ブルーズ」などと同じく、デルタ地域一帯の伝承曲なんだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=DCL_LpOlTYA

 

 

15曲目と16曲目の「アイ・ビー・バウンド・トゥ・ライト・トゥ・ユー」は、歌詞は全然違うけど、ギターのパターンと歌のメロディは、先に貼ったシカゴ時代録音の「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」とほぼ完全に同じ。つまりこの頃からやっていたレパートリーだったということだね。
https://www.youtube.com/watch?v=zA2qrAcOLHE

 

 

それ以外はこの『ザ・コンプリート・プランテイション・レコーディングズ』でしか聴けないというか知らない曲だけど、どれもギターのパターンは素朴なデルタ・カントリー・スタイルだ。シカゴ時代にエレクトリック・ギターでのスライド・プレイも有名になるマディだけど、この録音ではまだスライドはやっていない。

 

 

僕はジャズ好きなせいか、元々ブルーズでも洗練されたシティ・スタイルの方が好きで、1920年代のクラシック・ブルーズが大好きだったことは何度も書いているけど、戦後でも例えばT・ボーン・ウォーカーなどが大好きだったのに、90年代半ば以後はどっちかというとカントリー・ブルーズの方が好きになった。

 

 

ベシー・スミスなどの都会のブルーズ歌手たちがぶつけるエモーションも相当なものなんだけど、さっきも書いたサン・ハウスとか、戦後でテキサス・ブルーズマンだけどライトニン・ホプキンスとか、そういう人達の泥臭いブルージーな感じの方が、直接僕の心に訴えかけてくるようになったんだなあ。

 

 

ブルーズに限らず他のアメリカ音楽でも、南部や南部由来のものが好きになり(といっても以前書いたようにサザン・ソウルだけはなかなか聴かなかったけど)、イギリス人でもデレク&ザ・ドミノスの『レイラ』に米南部フィーリングを感じて大好きになったりした。もちろんあれは米LAスワンプ勢のリズムだ。

 

 

またこれも英国人のローリング・ストーンズ『メイン・ストリートのならず者』にもLAスワンプ勢が大勢参加していてアメリカ南部音楽の香りが充満していて、とんでもなく大好きなのだ。やはりアメリカ南部趣味の68年『ベガーズ・バンケット』以後から72年のここまでの諸作のなかでも、一番好きだなあ。

 

 

いわゆる「イナタい」感じの音楽がたまらなく大好きになって、そうするとそれまで聴いていたはずのマディのシカゴ時代バンド録音も違って聞えるようになって、理解が深まったような気がする。マディでは『ザ・コンプリート・プランテイション・レコーディング』が好きだと他人に言うと、相当変ってると言われるけどね。

 

 

完全なる個人的好みだけなら、『ザ・コンプリート・プランテイション・レコーディング』の次に好きなマディは、1968年のサイケデリック路線『エレクトリック・マッド』だったりするから、やっぱり僕はあまりいいマディ・ファンじゃないよなあ。

 

 

『エレクトリック・マッド』、ピート・コージーらが弾くファズの効いたエレキ・ギターが僕は大好きで、「シーズ・オールライト」の終盤部でエレベがテンプテイションズの「マイ・ガール」のリフを弾き始めると、すかさずギターがそのメロディを弾くあたり思わずニンマリなんだけど、普通のマディ・ファンやその他ブルーズ・ファンはあんなの嫌いだろうからねえ。

 

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