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2016/03/28

ツェッペリン・ライヴ作品の謎

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レッド・ツェッペリンのライヴ・アルバム『永遠の詩』。2007年リリースのリマスター盤CDから大幅に曲目が追加されたばかりではなく、従来から収録されていた曲でもギターもヴォーカルもそれ以外もいろいろと音が差替えられている。特に一曲目の「ロックンロール」はもう全然違う。

 

 

頭のロバート・プラントの歌に入る前の「ウ〜〜イェ〜〜」からして違うし、その後の歌い方も違うし、ジミー・ペイジのギター・ソロの内容だって違えば、ジョン・ボーナムのバスドラが妙なタイミングで(と僕の耳には聞える)入ったりするのはオリジナルLPヴァージョンにはないし、なんかもう。

 

 

あまり聴き慣れていないリスナーの方々には違いが分りにくいかもしれないが、熱心なツェッペリン・ファンの僕はLPでもCDでも擦りきれるほど繰返し聴いてきたからね。以前触れたように高校生の頃にツェッペリンのコピー・バンドでヴォーカルをやっていたのでコピーしまくったのだ。

 

 

どうしてヴォーカル担当だったのかというと、歌が上手いとかではなく単に歌詞の英語の発音がマトモであるというだけの理由からだった。それでも必死でコピーして文化祭などで下手くそなコピーを披露していたのだ。ツェッペリンの公式ライヴ・アルバムは長年『永遠の詩』しかなかったんだし。

 

 

ツェッペリンのスタジオ・アルバムはどれもギターをオーヴァー・ダビングしまくっているから、そのままでは素人高校生にはまるでコピー不可能。だから2003年に三枚組CD『ハウ・ザ・ウェスト・ワズ・ウォン』と二枚組『DVD』が出るまでの唯一の公式ライヴ盤『永遠の詩』ばかりコピーしていた。

 

 

そういうわけで、いやそうでなくコピー演奏なんか試みない普通のリスナーにとっても、長年唯一の公式ライヴ盤だった『永遠の詩』は、そりゃもう繰返し聴き込んだものだったはずだ。だから2007年のリマスターCDで一曲目の「ロックンロール」から中身が違うと一瞬で分ってガッカリだった。

 

 

『永遠の詩』のリリースは1976年だけど、中身は73年のマジソン・スクエア・ガーデンでの三日間のライヴ収録音源から採用されている。LP(と2007年までのCDリイシュー)盤が何日の録音で、2007年のリマスター盤での「ロックンロール」が別日なのかどうか、それは僕は分っていない。

 

 

聴いた感じでは単純に音を差替えるというのでもなく、基本的にオリジナルLP通りだけどピンポイントで部分的にギターやヴォーカルやドラムスで違うものを混ぜ込むということをやっている。一説に拠ればギターもヴォーカルも元の1973年マジソン・スクエア・ガーデン三日間の音源ではないとか。

 

 

もしその説が本当ならば、全く違うライヴ音源から差込んだか、あるいは新たに録音し直したかのどっちかということになるけれど、後者はギターに関してはともかく、2007年のロバート・プラントの声は全然違うわけだし、ジョン・ボーナムに至っては死んでいるわけだし有り得ない話だよなあ。

 

 

だから真相が全然分らないんだけど、2007年リリース以後のリマスター盤『永遠の詩』は違和感が強いことだけは確かだ。特に一曲目の「ロックンロール」なんて曲は、世界中のどんなツェッペリン・コピー・バンドも間違いなくやるだろうもので、しかもそのお手本はこれしかなかったんだもんなあ。

 

 

「ロックンロール」はそういうわけで聴き込みまくったものだったから、露骨な違いが一瞬で分ったけれど、それ以外の従来からの収録曲だって少し違う部分があるよねえ。それらについては僕はそこまで熱心に聴き込んできているわけではないので、じっくり聴き比べればいろいろと違いが見つかるはず。

 

 

プロデュースもやっているジミー・ペイジはどうしてこういうことをしたんだろう?世界中にファンが多いバンドでみんな聴いているのに、音を差替えるとかちょっと理解しにくい。しかも「ロックンロール」は2007年以後ヴァージョンの方がいい出来なら納得だけど、そうでもないからなあ。

 

 

演奏内容はともかく音質だけを言うなら断然2007年盤の方がいい音だから、CDでも両方持っている僕は『永遠の詩』だけはいつもどっちを聴くか迷ってしまう。少し前までの僕と違って多少の音質の良し悪しはもう全く気にならなくなってきているから、古い方のCDを最近はよく聴くくらいだ。

 

 

ライヴ・アルバムも「記録」ではなく「美的作品」と考えるジミー・ペイジで、だから1976年の『永遠の詩』オリジナル・レコード発売時点から、既にいろいろと録音後にスタジオで音を加工してはいた。ギターの音を足したり差替えたりヴォーカルを処理したりなど。

 

 

ツェッペリンのライヴ音源ではこういうちょっとややこしいことが他にもある。バンド解散後の1982年に出たラスト・アルバム『コーダ』三曲目のオーティス・ラッシュ・ナンバー「アイ・キャント・クイット・ユー、ベイビー」。ツェッペリンではファースト・アルバムでやったのが最初だけど、『コーダ』では70年のライヴ録音だ。

 

 

『コーダ』のアルバム附属の記述では、1970年ロイヤル・アルバート・ホールでの「リハーサル」から収録したと書いてあって、それは日本語ライナーノーツとかにそうあるのではなく、オリジナルの英文クレジットにそうあったから、長年そうなんだろうと信じ込んでいた。かなりいい演奏で大好きだし。

 

 

ところが2003年に出た『DVD』一枚目に12曲収録されている1970年ロイヤル・アルバート・ホールでの「本番」演奏での「アイ・キャント・クイット・ユー、ベイビー」が、どう聴いても『コーダ』収録のものと全く同一なのだ。と言うと誤解を招くかも。『コーダ』の方は短かめに編集してある。

 

 

短めに編集してあるとはいえ、何度聴いてもソースは同じものだとしか思えない。2003年に『DVD』がリリースされた時に同様の疑問を口にするツェッペリン・ファンがネット上に複数いたけれど、結局真相は誰も分らなかった。『レコード・コレクターズ』誌などに登場する沼田育美さんもその一人。

 

 

ジミー・ペイジ本人に聞きでもしないと真相は分らないんだけど、とにかくあの「アイ・キャント・クイット・ユー、ベイビー」は、ファースト・アルバム収録のものとは比較にならないほどいい演奏だ。ペイジ本人もそう思っているんだろう、1990年のリマスター・ボックスにはそっちが収録されたほど。

 

 

その素晴しい「アイ・キャント・クイット・ユー、ベイビー」を含む1970年ロイヤル・アルバート・ホール公演12曲が入っている『DVD』一枚目は、現在では僕が最も愛するツェッペリンのライヴ音源だ。以前書いたように映像部分は必要ないと思うような僕は、音だけリッピングして愛聴している。

 

 

ついでに書いておくと、そのロイヤル・アルバート・ホール公演の一曲目がベン・E・キングの「ウィア・ゴナ・グルーヴ」でこれも大好きなんだけど、これだって『コーダ』の一曲目収録のものと同一音源に聞えるんだよね。『コーダ』の説明ではどこにもそういうことは書いていないけれど。

 

 

そのあたり『永遠の詩』といい『コーダ』といい『DVD』といい、ツェッペリンのライヴ音源にはまだまだ謎が多い。完成品の「音」だけ楽しめればそれでいいんだという僕は基本的にはそういうリスナーで、データの類はあまり重視しないんだけど、ここまで書いたことは全て「音」だけ聴いての判断だから。

 

 

ツェッペリンの公式ライヴ・アルバムは現在でも『永遠の詩』と『コーダ』の一部と『ハウ・ザ・ウェスト・ワズ・ウォン』と『DVD』しかないけれど、ブートではライヴ音源がムチャクチャたくさん出ているようだ。熱心なツェッペリン・マニアはブートが出れば全部根こそぎ買ってしまうという評判らしい。

 

 

Twitterの僕のタイムラインにもそういうツェッペリン・マニアの方が一人いる。熱心なツェッペリン・コレクターとは本当にそういうものなのかよく知らない。僕は一枚もツェッペリンのブートは持っていない。だけどマイルス・デイヴィスに関しては全く同じだから、他人のことは言えないね。

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